三春町  桜梅桃李

 321 先日、福島県三春町へ行った。春になるとこの地では、梅・桃・桜と、三つの花が一度に咲く――それが町名の由来と聞いた。実際には、なかなかそうはいかないらしいが、何とも風雅な名前である

▼この三つに「」を加えた、「桜梅桃李」という言葉がある。それぞれの姿で咲くさまを、〝自分らしく生きる大切さ〟の例えとしたもの。一方でこの4種、どれもバラ科サクラ属の植物という。花は違えど、実は仲間同士。咲き合うさまは、共に励ましているようにもみえる

▼先月、あるブロックの座談会で一人の婦人が体験発表に立った「つたない話ですが……」。手書きの原稿を、震える声で読み始める。がんや経済苦を乗り越えてきた歩みをとつとつと語る。読み終えたとき、「私も同じ経験をした」と、何人もの参加者が涙をぬぐった

他者が自分らしく生きる姿に感動するのは、自らを重ねられる〝共通点〟を、そこに見つけようとするからだろう。自分では「こんなこと」と思ってしまう小さな一歩も、〝私も同じように頑張れそう〟という共感と勇気を周囲に広げるものだ

▼「一華を見て春を推せよ」(御書222㌻)――小さくとも堂々と咲こうとする一輪に、多くの花が続く人間も同じである。

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