バレンサ大学からの名誉博士号授与式での池田先生の謝辞(代読) 2017年8月27日

バレンサ大学からの名誉博士号授与式での池田先生の謝辞(代読) 2017年8月27日

人生の総仕上げの事業は教育
ソクラテスプラトンの如き対話の金波を広げよ
我らの運命を変える力は我らの哲学にあり ブラジルの大文豪
共に人類の未来を――南米最高の知性の殿堂であるブラジル文学アカデミーのアタイデ総裁(当時)と語り合う。池田先生はこの日、同アカデミーの在外会員に就任した(1993年2月12日、リオデジャネイロで)

 一、今、私の心は、太平洋の大海原を越え、そびえ立つアンデスの大山脈も越え、「リオデジャネイロ州の誇り」と讃えられる英知の府・バレンサ大学の栄えある授与式に臨ませていただいております。
 そして、敬愛してやまぬペレイラ学長から、最大の感謝を込めて「名誉博士号」を拝受しております。
 誠に誠に、ありがとうございました。(大拍手)
 嬉しいことに、この会場には、わがブラジルSGIの同志も駆け付けてくれております。
 私の誇りの宝友たちと、この栄光を分かち合えることは、何ものにも代え難い喜びなのであります。
 奇しくも、きょう8月24日は、1947年、19歳だった私が、恩師・戸田城聖先生と共に、平和建設の大航路に出立した原点の日であります。師は第2次世界大戦中、軍部政府の弾圧による2年間の投獄にも、断じて屈しませんでした。
 出獄後、「地球民族主義」の理念を青年に示し、最晩年の57年9月8日には、原水爆を「絶対悪」として厳しく断じ、その全面禁止を求める先見の「原水爆禁止宣言」を遺訓として発表しております。
 折しも、この7月、国連では核兵器禁止条約が採択され、被爆者の方々をはじめ幾多の先人の命を賭した叫びが、いよいよ世界の思潮となりゆく、一つの結実を見ました。なかでも、貴国・ブラジルは、長年、ラテンアメリカカリブ海の国々と共に、核兵器を禁止する条約の制定を先導されております。
 なかんずく、人権の確立を求め、国連改革を訴えてこられた国際法の権威・ペレイラ学長がリーダーシップを執られる先駆的な大学こそ、貴大学であられます。その最高峰の英知の宝冠を、師弟の出会いより満70年のこの日に賜り、恩師に捧げることができました。これほどの誉れはありません。
 重ねて、重ねて御礼申し上げます。(大拍手)
 一、本日は、わが愛するブラジルの青年たちと一緒に、貴大学が刻んでこられた偉大な歴史を仰ぎつつ、21世紀を担いゆく若き世界市民の指標を3点にわたって確認し合いたい。

人間的価値創造が可能性を開く

 第1は、「対話の金波を広げる哲人たれ」という点です。
 貴大学は、半世紀前の67年に開学した「バレンサ哲学科学文学大学」が前身であると伺いました。貴大学の創立の志が、その名に表れています。
 “我らの運命を変える力は、我らの哲学にあり”とは、大文豪アシスの信念でありました。
 確固たる哲学の柱を抱いた青年の「人間的価値の創造」こそ、無限の可能性を開き、世界をも変えていくのであります。そしてそれは、かの大哲学者ソクラテスと弟子プラトンの如く、全人格を傾けた対話を通して共に真理を探求しゆく中で、成し遂げられていくのではないでしょうか。
 貴大学は、まさにそうした対話にあふれた人間教育の宝城であります。
 大学首脳と学生の代表が「バレンサ大学とコーヒータイム」と呼ばれる交歓会を開いて、大学や学部・学科の在り方や課題、そして今後の発展について闊達に語り合うことも、素晴らしき校風であります。
 ブラジルの創価の青年たちも、いやまして朗らかに対話の金波を起こしながら、生命尊厳の哲学のスクラムを広げていってほしいのであります。

危機に直面した時が建設の好機

 第2に、「危機にたじろがぬ社会建設の先導者たれ」と申し上げたい。
 教育が正しい人を創り、その人が正しい社会を創っていく――この電源地こそ、大学です。
 特にグローバル化の進む現代にあっては、世界の出来事が直接、困難となって個人に降りかかることも、多々あります。
 だからこそ、ペレイラ学長の洞察が、実に含蓄深く、胸に迫ってきます。
 すなわち、「危機に面した時に大切なことは、『新たなものを建設する時である』と決断することであり、それが人類の新たな歴史の局面を形成しゆく新たなパラダイムといえる」と。
 そして貴大学は、危機にたじろがず、むしろ新たな建設の好機として、「文化的な創造力」「学術面の向上心」を発揮し、社会の発展に貢献する人材を育成されているのであります。
 先哲の金言には、試練の時に「賢者はよろこび愚者は退く」とあります。ブラジルの若き賢者の喜びあふれる連帯が、新たな地球社会を建設しゆくことを、私は確信してやみません。
 第3に、「力を合わせて地域発展の道を開け」と訴えたい。
 わが憧れのバレンサ市の歌には、「バレンサの天空の光/それは、卓越した灯台なり。/ああ、わが故郷よ!/あなたの子どもであることこそ/無窮の栄誉なり」と歌われております。
 貴大学は、この麗しき故郷バレンサの地域社会の要請に応えつつ、伝統の教育学部から始まり、堅実に学部を増やし、総合大学に発展してこられました。
 とりわけブラジル有数の医学部、リオ州トップクラスの歯学部・獣医学部看護学部を備え、健康増進プログラムや低所得者のケアに力を注ぐ、地域に不可欠な医療センターとなって大いに信頼されていることも、よく存じ上げています。(大拍手)
 地域が抱える諸課題に応じ、その解決に尽くしゆく貴大学の挑戦と、民衆に貢献されゆく貴校の卒業生の活躍こそ、新たな時代を照らし晴らす卓越した英知の灯台なりと、皆で大拍手を送ろうではありませんか!(大拍手)

地域貢献のモデルをブラジルから!

 一、ブラジル文学アカデミーのアタイデ元総裁は、私との対談で、「人間が他の人と仲良く社会、地域の繁栄を考え、目指し、ともに暮らしていくために教育がある」と語られておりました。わがブラジルSGIもまた、地域貢献・社会貢献のモデルを全世界に、仲良く聡明に、一段と示し切っていただきたいのであります。
 思えば、貴大学の源流を成す尊き教育の先人ドン・アンドレ・アルコベルデ先生が、1925年にバレンサの地に赴任して最初に行ったこと――それは、地域の未来を育む小学校と高校を創ることであります。
 私もまた、若き日から人生の総仕上げの事業は教育と心に定めてまいりました。恩師の夢を実現する創価教育の学園を創立してからは、50年となります。
 ご存知のように、ここブラジルの天地にも創価学園が誕生し、頼もしき英才たちが陸続と学び育っております。
 今日よりは、栄光ある貴大学の陣列に連なり、さらに愛するブラジル社会の発展と世界の平和のために尽力していくことをお誓い申し上げます。
 その決意を、リオ出身で、ブラジル初の児童図書館を創立された詩心の女性リーダー、セシリア・メイレレスの信条に託させていただきます。
 すなわち――「人類の平和も、一人一人の幸福も、思いがけずに享受するものではない。それは、明晰に時間をかけて育んで果たすべき課題である。一人一人の確固たる平和とともに世界の平和をつかみとるのだ」
 次の50年へ、敬愛するバレンサ大学に栄光あれ! 勝利あれ!
 大好きなブラジルに幸福あれ! 平和あれ!
 ムイト・ムイト・オブリガード!(ポルトガル語で「大変に、大変に、ありがとうございました!」)(大拍手)