フィリピン国立カガヤン大学「名誉人文学博士号」授与式から 池田先生の謝辞(代読) 2018年6月22日

フィリピン国立カガヤン大学「名誉人文学博士号」授与式から 池田先生の謝辞(代読) 2018年6月22日

未来照らす世界市民の連帯を
国立カガヤン大学からの「名誉人文学博士号」授与式。テハダ学長は“平和と人権を尊ぶ文化の建設こそ、私たちの共通の目的です。共に世界を変えていきましょう”と(創大本部棟で)

 一、敬愛してやまない、貴フィリピン共和国からの高潔な大教育者の先生方を、私は万感の思いでお迎えしております。
 あの第2次世界大戦中、日本の軍国主義が計り知れない災禍をもたらしてしまった貴国と、平和の象徴たる教育交流を結ぶことは、先師・牧口常三郎先生と恩師・戸田城聖先生から託された悲願だからであります。
 来月6日は、両先生が、軍部政府から弾圧され、投獄されてより満75年となります。
 本日、光栄にも、フィリピンを代表する名門・国立カガヤン大学より名誉人文学博士号を賜りました。
 この最高の栄誉を、良き世界市民として、貴国と地球社会の平和・文化・教育に貢献しゆくフィリピンの宝友たちと分かち合うとともに、正義に殉難した2人の師匠に、私は捧げさせていただきます。
 誠に誠に、ありがとうございます(大拍手)。

三つの「光線」

 一、貴大学の校章には、「知識」と「知恵」を象徴する書籍と松明が描かれ、そこから放たれる光線が、麗しき貴カガヤン州を、そして世界を照らしていくという意義が込められていると伺いました。
 きょうは、フィリピンからの最優秀の留学生の皆さんも、わが創大生、わが短大生と共に参加してくれております。
 皆さんと一緒に、貴大学の精神に学びながら、三つの「光線」を確認し合いたいと思います。
 第一に、「平和を広げる人間性の光線」であります。
 貴大学は「最高の価値を目指す教育」とのモットーを掲げ、一人一人の人生に大いなる価値を創造しながら、地域に社会に世界に、貢献を果たしてこられました。
 テハダ学長の卓越した指揮のもと、とりわけ農業や環境分野での革新的な研究プロジェクト、また、生涯教育の充実なども高く評価されております。
 さらに医療技術をはじめ、工学、会計学、教育学などの国家試験で全国最高峰の合格者を勝ち取り、目覚ましい躍進を遂げておられます。
 貴大学の輝かしい実績は、まさしく人間性の光線に包まれています。
 私が感銘を禁じ得ないのは、テハダ学長の学生への励ましであります。
 すなわち――人生における本当に意味のある成功とは、何か。それは、単なる地位や名声ではない。自身を育んでくれた人々や社会に、どう恩返しできるかにかかっている、と。
 わが創価の人間教育とも、深く強く共鳴します。
 牧口先生は、青年たちに「報恩」の大切さとともに、「貢献的人生たれ」と教えられていました。
 何よりも、テハダ学長ご自身が、郷土と民衆への報恩の貢献の模範を示されております。
 苦学に徹して力をつけ、「全ての人々の食卓に十分な食べ物を!」との断固たる信念から農業科学の道へ進まれた学長は、科学技術省の高官として、地域産業の発展にも尽力されました。   
 学生たちに、学長は力強く呼び掛けておられます。
 ――弱い立場の人々の重荷を担い、貧困と不正義によって奪われた人々の声を取り戻そう! そして、分断された世界に進歩と団結の絆ができるよう、一人また一人と、手を取り合っていこうではないか、と。 
 国連が推進するSDGs(持続可能な開発目標)の「誰も置き去りにしない」との理念にも一致する、誠に崇高な精神であります。
 カガヤン州の知恵の格言に、「善き種を蒔く人は、感謝の実りを得る」とあります。
 その通りの平和貢献の道を歩み抜かれている学長と貴大学の学友たちに、私たちは心からの敬意と連帯の大拍手を送りたいと思うが、どうでしょうか(大拍手)。

自らが学び動け

 一、第二は、「世界市民と輝くセルフ・リーダーシップの光線」であります。
 「セルフ・リーダーシップ」とは、私たちの大切な友人であり、貴大学のアドバイザーであられるドゥムラオ博士(ヌエバ・ビスカヤ大学元学長)が、創価学園生に贈ってくださったメッセージです。
 それは――誰が見ていようがいまいが、正しいことを為す。常に最良な自分であり、常にプラスの方向に進むよう、自らを導ける人に、との激励です。
 この折、ドゥムラオ博士が、いずこの分野であれ、その道の達人になるには、約1万時間という努力の持続が必要であるという指標を語られたことも、学園生たちの心に深く刻まれています。
 世の混迷や停滞の多くは、リーダーたちが自らを謙虚に律することを忘れ、学ぶ努力を怠るところから生ずるといっても、過言ではないでしょう。
 この点、テハダ学長も常々、「根気」「忍耐」「謙虚さ」そして「勤勉さ」を学生に訴えられており、私も全く同感です。
 自ら生き生きと学び、粘り強く努力し続ける「セルフ・リーダーシップ」の若き世界市民こそが、未来を照らす希望の光線を発することができると、銘記したいのであります。

清流のごとく!

 一、第三に申し上げたいのは、「困難を勝ち越えゆく不撓不屈の光線」です。
 貴大学のメインキャンパスの校門には、ラテン語箴言が誇り高く刻まれています。
 「困難を乗り越えて、大いなる星の高みへ」と。
 貴カガヤン州は、一昨年の秋、スーパー台風で大きな被害を受けられました。
 しかし、学長を中心に、貴大学の皆さんが団結し、卒業生や地域の方々も一体となって、復興を成し遂げてこられたことを、私は胸を熱くして伺いました。
 ――人生には、数え切れないほどの試練がある。勝つこともあれば、負けることもある。しかし最後の戦いに勝てばよい。
 この学長のエールは、学生たちの心に、どれほど温かく染み入っていることでしょう。
 今、私の青春の故郷である関西では、先日の震度6地震からの復旧・復興に、わが友人たちが奮闘しております。この宝友と心一つに私は「困難を乗り越えて、大いなる星の高みへ」との貴大学の不撓不屈の負けじ魂を命に刻みたいのであります。
 この6月は、貴国フィリピンが生んだ、先駆の世界市民ホセ・リサール博士の誕生月でもあります(博士は1861年6月19日生まれ)。奇しくも、牧口先生の誕生の10年前の6月となります。
 リサール博士は叫びました。「山頂の高みから、迸る清流が湧き出るように、教育はたゆみなく、惜しみなく、その天地に恒久的な平和をもたらす」と。
 さあ、ともどもに、いやまして世界市民教育の清流を迸らせながら、平和と人道の緑野を潤し、開きゆこうではありませんか!
 最後に――麗しき憧れのカガヤン州、そしてフィリピン共和国に永遠の安穏あれ! 繁栄あれ! 栄光あれ! と申し上げ、私の御礼とさせていただきます。
 マラミン・サラマッポ!(フィリピノ語で「誠にありがとうございました!」)(大拍手)