読書〉 1分で話せ 2018年7月14日

読書〉 1分で話せ 2018年7月14日

伊藤羊一著
著者はヤフー株式会社「Yahoo! アカデミア」学長を務める
相手を動かす商いの姿勢とは

 その場で思いついたことをだらだら口にしても、聞いている人にうまく伝わらない。そんな現場に立ち会った経験は誰にでもあるだろう。本書は、企業内プレゼンテーションのプロが、どうしたら話がうまく伝わるかを、体験を踏まえてまとめたノウハウ本だ。
 著者の結論は、「1分でまとまらない話は、結局何時間かけて話しても伝わらない」。プレゼンとは、相手に理解してもらうだけでは不十分で、たとえ正しい主張でも相手の行動につながらなければ意味はない。結局、相手を「動かしてなんぼ」の世界だと訴える。
 人の話には、結論となる「主張」があり、それを裏付ける「根拠」を三つほどセットにすれば、格段に説得力が増すという。言葉を省き、スッキリ・カンタンを心掛け、難しい用語は中学生に分かるくらいの言葉に置き換えることが重要、と。また、人は論理だけでは動かず、イメージすることで感情が揺さぶられるから、図表を見せたり「想像してみてください」と呼び掛けたりするのが有効、とも。要は、聞き手の耳からスッと胸に入るような、構成と話し方が大切なのだ。
 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長も絶賛した著者だけあり、本書のアドバイスは徹して具体的。「信頼を得るためには、まずは自分たちのエゴを捨て、相手の課題に向き合い、ニーズに応える。ひたすらこれを続けていれば、必ず商売に結びつきます」との言葉も示唆に富む。(空)
 ●SBクリエイティブ・1512円