〈9・8「日中国交正常化提言」50周年記念特集〉㊤ 甲南大学 胡金定教授 2018年9月7日

〈9・8「日中国交正常化提言」50周年記念特集〉㊤ 甲南大学 胡金定教授 2018年9月7日

「以民促官(民間が政治を動かす)」の提言以来
周総理が願った民間交流を創価学会が一貫してリード

 池田先生の「日中国交正常化提言」を知ったのは1970年代、私が高校生の時でした。
 当時の娯楽といえば戦争映画。私や友人たちは映画を通して、日本軍の残虐さを感じていました。
 しかし高校の社会科の授業で、教師が池田先生の提言を紹介し、「日本には、世界の平和を愛する人物がいる。正しい人生を生きる大きな勇気を持った偉大な人物である」と絶賛したのです。
 私はとても驚き、池田先生や日本に対する興味を持ち始めました。
 日本の政権は52年に、台湾との間で「日華平和条約」を結んで以降、中国を完全に無視していました。提言の発表当時、中国と日本の政治の交流は進んでいなかったのです。
 日本の野党の一部や民間団体が中国との交流を続けていましたが、マスコミがこうした動きを取り上げることは極めてまれでした。
 しかし、池田先生の提言をマスコミ各社が大々的に取り上げたことにより、国交正常化への世論が急激に喚起されました。
 提言発表後、「日中国交回復促進議員連盟」「日中国交正常化国民協議会」など、中日の国交回復を目指す組織が次々と結成。さらに、都道府県や各市町村の議会が相次いで中日の国交回復を決議し、政府に対して提出しました。
 こうした動きが活発化した背景に、池田先生の提言があることは間違いありません。提言が、国交正常化への膠着状態を打ち破る役割を果たしました。「以民促官」(民を以て官を促す)とは周恩来総理の言葉ですが、まさに、民間が政治を動かしたのです。
 提言では、中日首脳会談の早期実現を訴えていますが、これは現代においても非常に重要です。
 2012年に日本が尖閣諸島(釣魚島)を国有化して以来、中日関係は急速に冷え込みました。池田先生は、こうした事態を打開するために、「SGIの日」記念提言等を通して、両国の首脳会談の定期開催などを呼び掛けています。
 首脳同士の交流は非常に重要です。中国のことわざに「親戚越走越近、朋友越走越親」(親戚も友人も往来すればするほど親しくなる)とありますが、裏を返せば、交流がなければ親しくならないということです。同じように、首脳同士も、往来がなければ親しくなれません。
 本年5月、李克強首相が、中国の首相としては7年ぶりに訪日しました。日本は李首相を公賓として迎え、安倍首相は東京での会談だけでなく、北海道まで同行しました。
 中国の王毅外相は、李首相の前に訪日し、両国の関係改善と発展に強い意欲を示しました。
 こうした動きを歓迎するのは、両国だけではありません。今や世界第2位と第3位の経済大国である中国と日本の関係改善を、アジア、そして世界の国々が期待しているのです。
 また、首脳同士の会談はもちろん大事ですが、民間交流の固い基盤が前提としてあることを忘れてはなりません。
 周総理は、若き日に日本に留学するなど、日本に対して格別な思いがあり、まず日本との国交を回復したいとの希望を強く持っていました。
 1949年に中華人民共和国が建国された時、周総理は民間外交を前面に打ち出しました。
 50年代に入り、周総理は、民間の往来を盛んにして政治を動かすことを考えました。官の全面的な援助のもと、中国人民対外友好協会や中日友好協会などが設立され、両国の橋渡しを始めました。
 72年の中日の国交樹立までに、周総理は積極的に日本の民間人と会見し、国交回復の機運を高めようと努めています。
 中日の民間交流は、現代でも確実に機能しています。今、双方の国を訪ねる人は、合わせて年間延べ1000万人に上り、両国関係の基礎となっています。
 私が注目したいのは、創価学会が民間交流を一貫してリードしてきた点です。
 本年も、学会青年部と30年以上交流を深める中国最大の青年団体「中華全国青年連合会(全青連)」から、汪鴻雁全青連副主席を団長とする代表団を迎えました。
 全青連は、多くの国家的なリーダーを輩出しています。中国の未来を担う人材に、日本を訪問し、交流してもらうことは非常に意義あることです。
 池田先生の提言発表から50周年、中日平和友好条約締結40周年の本年、創価学会の訪中団が派遣されると伺いました。平和の精神に貫かれた提言は両国に大きな影響を与えており、中日関係を語る上で無視できません。50周年のこの時に、創価学会が訪中団を派遣することは、とても大きな意味があります。
 74年12月、池田先生と会見した周総理は、中日平和友好条約の早期締結を希望しました。その後、紆余曲折を経て、78年に条約は締結。その背景には、池田先生が創立した公明党が大きな役割を果たしています。
 学会に対する中国の信頼の証左として、池田先生の平和思想は今、中国の大学で大きな広がりを見せ、“池田思想”を研究して修士号や博士号を取得できる大学もあります。
 私はこうした事実を、講演会などで語ってきました。ぜひ多くの人に、世界の平和や中日友好に尽くす池田先生、学会の真実を知ってもらいたいと願っています。(談)