フィリピンリサール協会「国際賞」授与式から 池田先生の謝辞(代読) 2018年10月22日

フィリピンリサール協会「国際賞」授与式から 池田先生の謝辞(代読) 2018年10月22日

希望と幸福の未来を青年と共に!
君よ人間革命の道を
トインビー博士「現代の脅威を取り除く力は一人一人の心の変革に」
リサール協会会長(当時)のキアンバオ氏(左端)一行を池田先生が歓迎(1998年11月、愛知で)。リサール博士を巡る2人の語らいは、『世界の文学を語る』に収められている

 一、はじめに、先月の超大型台風で犠牲になられた方々へ深い哀悼の意を表します。全ての被災者の方々にお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復旧と復興を心からお祈り申し上げます。
 今、私の心は大海原を越えて、懐かしいフィリピン国際会議場へ飛び、敬愛してやまない皆さま方とご一緒にあります。
 本日は、光栄にも、貴リサール協会から第1号となる「正義・平和・人道のためのリサール協会国際賞」を賜りました。
 ホセ・リサール博士のお名前を冠した顕彰は、いかなる栄誉にもまして、厳粛な未来への責任をもって拝受せねばならないと私は思っております。
 リサール博士こそ、人類史に輝き渡る平和と人道の先駆の世界市民であり、命を賭して正義の信念を貫き通した大英雄だからであります。
 この魂の宝冠を、私は、社会の模範の市民として活躍するフィリピンをはじめ、愛する世界192カ国・地域のSGIの宝友と一緒に、謹んでお受けさせていただきます。そして、リサール博士の哲学と行動を、後継の青年たちと改めて仰ぎ学びながら、三つの大いなる希望を心に刻みたいのであります。
 一、第一に、「いかなる試練も幸福へ転じゆくレジリエンス(困難を乗り越える力)の希望」であります。
 何ものにも負けない、明るく、強く、朗らかな太陽の人間性の輝きを放っていた大指導者こそ、リサール博士であります。
 友人に送った書簡に記していたように、博士の人生には、常に「過酷な不運」が立ち現れました。しかし、その一つ一つを賢く逞しく乗り越えながら、愛する家族、愛するフィリピン同胞をはじめ、世界の民衆、さらには、未来の世界市民たちの幸福の道を開いていったのであります。
 35歳という若さで殉難したリサール博士は、処刑の前夜、最愛の妹に「別れのあいさつ」と題する詩を手渡しました。そこには――「さようなら、愛する祖国、なつかしい太陽の地よ」。そして「君のために、この命を捧げよう、君のしあわせのために、この身を捧げよう」(安井祐一著『ホセ・リサールの生涯』芸林書房)と、万感胸に迫る一節が綴られておりました。
 この博士の烈々たる一念を、時を超えて継承しておられるのが、まさに貴リサール協会の先生方に他なりません。
 私たち創価学会創始者である牧口常三郎先生は、リサール博士より10年後に誕生し、博士と相通ずる「民衆の幸福」への大願に徹し抜きました。日本の軍国主義と対峙して獄死を遂げた牧口先生が示されたのも、「賢者はよろこび愚者は退く」(御書1091ページ)という不撓不屈の希望の力だったのであります。
 今、打ち続く自然災害をはじめ、人類全体が幾多の困難に直面する時代だからこそ、リサール博士が体現されていた「いかなる試練も幸福へ転じゆくレジリエンスの希望」を、いやまして広げていこうではありませんか。
 一、第二に確認し合いたいのは、「一人の生命から無窮の力を解き放つ人間革命の希望」であります。
 わが創価大学の本部棟のロビーでは、レオナルド・ダ・ビンチなどと共に、貴協会が贈ってくださったリサール博士の凜然たる胸像が学生たちを、毎日、温かく見守り、励ましてくれております。
 東洋の若きダ・ビンチとも仰がれるリサール博士は、一人の人間が、どれほど大きな可能性を発揮できるかを証明した挑戦と向学の青春だったといってよいでありましょう。
 私は、このほどライフワークである小説『人間革命』『新・人間革命』の執筆を完結させました。
 主題は「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命の転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命の転換をも可能にする」であります。
 それは、一人一人の前進や向上こそが、社会、国土の発展と繁栄につながると展望し、自ら範を示されたリサール博士の信条とも響き合っております。
 フィリピンの民衆の力に深い敬意と信頼を寄せていた大歴史学者トインビー博士は、私との対談で「人類の生存に対する現代の脅威は、人間一人一人の心の中の革命的な変革によってのみ、取り除くことができる」(『21世紀への対話』、『池田大作全集』第3巻所収)と語られていました。
 その先覚の変革者こそ、リサール博士です。
 高名な法律家であられるイバニェズ会長は、本年6月の会長就任の挨拶で、「偉大な社会の変革というものは、言葉と行動の両方によって成し遂げられるものである」と訴えられました。
 リサール博士という希有のモデルに学びながら、まさに「言葉と行動」の両輪で「人間革命」即「社会の変革」を推し進めたいと思うのであります。
 一、第三に申し上げたいのは、「あらゆる差異を超えて人類を結び合う大連帯の希望」であります。
 私は、無二の親友であるキアンバオ博士をはじめ、貴協会の先生方と、リサール博士を巡って語らいを重ね、世界の青年たちと分かち合ってきました。
 なぜ貴国が、リサール博士を「フィリピン第一の民族英雄」と讃えるのか。キアンバオ博士は、それは、フィリピンの民衆が「平和」を愛するからであると明快に結論されました。
 まさしくリサール博士こそ、平和を愛する民衆が生んだ平和の大英雄であります。
 キアンバオ博士が鋭く指摘されたように、リサール博士の思想の根底には、民衆への深い愛情と「人類は一体である」との崇高な人間主義が漲っております。
 ここに、21世紀の青年に厳然と託し伝えていくべき世界市民の真髄があるといってよいでありましょう。
 私たちもまた、尊敬する貴協会の諸先生方と共に手を携え、あらゆる差異を超えて人類を結び合う新たな「リサール精神の大連帯」を創り開きゆくことを、ここに固くお誓い申し上げます。
 一、結びに、世界市民の希望の都たるフィリピン共和国の永遠無窮の栄光と、貴協会の益々の発展、そして本日、ご臨席を賜りました皆さま方の更なるご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げ、私の御礼とさせていただきます。
 マラミン・サラマッポ!(フィリピノ語で「誠にありがとうございました!」)(大拍手)