〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第2巻 解説編 2018年11月28日

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第2巻 解説編 2018年11月28日

紙上講座 池田主任副会長
〈ポイント〉
①組織とリーダーの在り方
②自然災害への対応
③民衆の側に立つ宗教
沖縄・恩納村にある景勝地「万座毛」(1997年2月、池田先生撮影)。第2巻の「先駆」の章では、第3代会長に就任した山本伸一が沖縄を初訪問し、支部を結成する模様が記されている

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第2巻の「解説編」。池田博正主任副会長の紙上講座とともに、同巻につづられた珠玉の名言を紹介する。次回は、第3巻の「基礎資料編」を12月5日付に掲載予定。(第2巻の「基礎資料編」は11月7日付、「名場面編」は14日付、「御書編」は21日付に掲載)

 『新・人間革命』第2巻について、三つの視点で述べたいと思います。
 1点目は、「組織とリーダーの在り方」という点です。
 第2巻は、山本伸一が第3代会長に就任した1960年(昭和35年)5月3日から、同年12月までの国内における激励の様子を中心に描かれています。
 具体的には、北は北海道から南は沖縄まで、各地を回り、自らが率先して一人一人に励ましを送っています。その激闘によって、わずか8カ月で、会長就任直前の61支部から124支部へと、学会は発展しました。
 「先駆」の章では、男子・女子・学生部に限りない期待を寄せ、「錬磨」の章では、婦人部大会で「行き詰まりとの闘争」について語っています。そこには、今の私たちにとっても、大切な指針となる指導がつづられています。
 こうした激励の中、第2巻で特に言及されているのが、「組織とリーダーの在り方」です。
 「先駆」の章では、「組織は、信・行・学を間違いなく加速させていく道である。また、人びとが、安心して伸び伸びと大樹に成長していく、大地であらねばならない」(14ページ)と、学会の組織は一人一人の信心の成長のためにあると述べられています。
 また、「いかなる運動も、絶えず“なんのため”かという根本目的に立ち返ることがなければ、知らず知らずのうちに、手段や方法が独り歩きし、本来の目的から外れてしまうものだ」(22ページ)と、リーダーが“なんのため”を問うことを忘れた時、空転が生じることを指摘しています。
 「勇舞」の章では、「学会の役職は名誉職ではなく、責任職である」(182ページ)と述べられ、「仏法は勝負です。常に障魔との戦いです」(187ページ)とあります。この障魔を破るのが、リーダーの確信の祈りであり、一念であると強調されています。
 伸一が会長に就任した60年は、急速に組織が発展した年です。その中で、支部のリーダーたちは、伸一の振る舞いを通して、自らがどうあるべきかを学んでいきました。その核心が「同志を、会員を守り、励ます」(240ページ)という点です。この一点を、私たちも決して忘れてはなりません。
 発展している組織というのは、「日々革新」している組織です。リーダーの自己変革の意識が希薄になり、“戦う魂”を失った時、組織は官僚化していきます。広布のリーダーは「どこまでも思いやりにあふれ、(中略)奉仕の人でなければならない」(316ページ)との指導を心に刻んでいきたい。

「立正安国」の必要性

 2点目は、「自然災害への対応」ということです。
 今年は大阪北部地震(6月)、西日本豪雨(7月)、北海道胆振東部地震(9月)、台風の上陸など、多くの自然災害が発生しました。
 第2巻では、60年5月のチリ地震津波(38ページ)、59年9月の愛知・三重県を中心に甚大な被害を及ぼした伊勢湾台風(151ページ)について言及されています。
 チリで大規模な地震があったことをニュースで知った伸一は、深夜に何度か目を覚まし、ラジオのスイッチを入れます。それほど、現地の被害を憂慮し、津波の心配をしたのです。
 伸一は本部で、次々と被災地に見舞いと激励の電報を打ち、最も被害の大きい地域に幹部を派遣することを決めます。さらに、災害対策本部を設け、救援活動を行うよう指示します。
 一旦緩急の時に、どのように行動するのか――そこに、その人の責任感が表れます。
 こうした迅速な対応に比べ、当時の政府の対応は極めて遅いものでした。この時、伸一は日蓮仏法の本義である「立正安国」の必要性を痛感します。
 また、「錬磨」の章では、伊勢湾台風の折、伸一が次々と救援活動の手を打ち、さらに、自らも被災地へと向かい、同志を激励する様子が描かれています。
 「大変なことになりましたが、全国の同志が、再起を願い、お題目を送っています。今が正念場です。見事に信心で乗り越えてください」(156ページ)
 「家が壊され、家財が流されても、信心が壊れなければ、必ず蘇生することができます。信心をしっかり貫いていけば、必ず立ち直ることができるんです」(同)
 被災した方々への激励と、当時の救援活動は、現在の学会の自然災害への対応の原点とも言えるでしょう。

師子王のごとく

 最後の3点目が、「民衆の側に立つ宗教」です。
 第2巻が掲載されたのは、94年6月から12月末です。この年、学会は「創価ルネサンス・栄光の年」と掲げています。91年11月、学会は宗門から「魂の独立」を果たし、世界宗教へ雄飛しました。テーマに「創価ルネサンス」と掲げた年は、92年から94年まで続きました。
 そのような中での執筆ということもあり、第2巻は宗門に対する記述が幾つも見られます。
 「錬磨」の章では、夏季講習会で「日興遺誡置文」を繙かれ、「僧侶がこの御遺誡に目覚める日を祈り、願いながら、講義を続けた」(145ページ)とつづられています。
 また「民衆の旗」の章では、このように述べられています。「学会員を軽んじるような僧侶、悪侶が出たならば、(中略)学会は断固、戦っていかねばなりません」(320ページ)。僧侶を腐敗・堕落させたくはない――それが、伸一の深い思いでした。だが、その思いに反し、宗門は“衣の権威”を振りかざし、学会員を隷属させようとしてきた。
 学会員を軽んじ、手段化しようとする“悪”とは、徹底して戦っていかねばなりません。でなければ、広布の組織が破壊されてしまうからです。
 「民衆の旗」の章にこうあります。
 「学会は永遠に民衆の側に立つ。ゆえに、これからも行く手には弾圧があろう。謀略の罠も待ち受けていよう。しかし、民衆の栄光のために師子王のごとく戦い、勝つことが、学会には宿命づけられているのだ」(281ページ)
 今月の本部幹部会のスピーチ映像で、池田先生は新しい七つの鐘の構想に言及し、未来永劫の“創価勝利”の展望を語ってくださいました。
 広布の未来を託される師の思いを胸に、私たちは「学会は永遠に民衆の側に立つ」との精神で前進してまいりましょう。

名言集

●“後継”と“後続”
 “後継”と“後続”とは異なる。後方の安全地帯に身を置き、開拓の労苦も知らず、ただ後に続く“後続の人”に、“後継”の責任を果たすことなどできようはずがない。“後継の人”とは、勝利の旗を打ち立てる“先駆の人”でなければならない。(「先駆」の章、25ページ)

●価値創造の「庭」
 家庭とは、家族が共同でつくりあげていく価値創造の「庭」であり、明日への英気を培う、安らぎと蘇生の「園」である。また、人間を育みゆく豊かな土壌といえよう。(「錬磨」の章、91ページ)

●信心の「根」
 個人指導は、最も地道で目立たない活動ですが、信心の「根」を育てる作業といえます。根が深く地中に伸びてこそ、天に向かって幹は伸び、葉も茂る。同様に、一人ひとりの悩みに同苦し、疑問には的確に答え、希望と確信をもって、喜んで信心に励めるようにしていくことが、いっさいの源泉になります。(「勇舞」の章、175~176ページ)

●助走の勢い
 助走の勢いが跳躍の力を決定づけるように、広宣流布の活動の勝敗も、いかに周到に準備を進めたかによって、決まってしまうといってよい。ジャンプへと踏み切る“決戦の瞬間”には、既に勝負は、ほぼ決まっているものだ。(「民衆の旗」の章、323ページ)

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。