〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第5巻 基礎資料編 2019年2月6日

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第5巻 基礎資料編 2019年2月6日

物語の時期 1961年10月8日~1962年1月25日

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第5巻の「基礎資料編」。各章のあらすじ等を紹介する。次回の「名場面編」は13日付、「御書編」は20日付、「解説編」は27日付の予定。

「開道」の章

 1961年10月8日、ベルリンの壁の前に立った山本伸一は、その夜、東西ドイツの統一と世界の平和への強い誓いを込めて勤行した。終了後、東西冷戦の氷の壁を溶かすために、各国の指導者と会って「対話」の道を開く、民衆と民衆の心をつなぐ文化交流に力を注いで「平和」の道を開く――との決意を披歴する。
 翌日は、ケルン市内の工場などを見学した後、重役らとの会食会に。「仏法のヒューマニズム」に共感する出席者の姿を通して、国境や民族を超えて互いに理解し合えることを、強く確信したのであった。
 10日、伸一はオランダへ。翌日、フランスのパリを訪れ、凱旋門などを視察。ルーブル美術館で、芸術は人間性の発露・表現であり、武力や暴力など、外圧的な力で人間を封じ込める“野蛮”の対極にあると語る。
 13日に、イギリスに渡った伸一は、ヨーロッパの組織について検討し、西ドイツ(当時)、フランス、イギリスの各国と、欧州全体の連絡責任者を立てることを決定。ロンドンで、老人との対話から、高齢化社会にあって「思いやりのネットワーク」の大切さを痛感する。

歓喜」の章

 10月15日の夜、スペインのマドリードに到着した伸一は、平和を、ヒューマニズムを守り抜く地涌の友の誕生を願い、“出よ! 妙法のピカソよ、妙法のカザルスよ”と祈る。
 翌日は、スイスへ。ジュネーブの空港では、出迎えてくれた婦人部員やその家族を激励する。
 さらに、オーストリアのウィーンを訪問。著名な音楽家たちが眠る中央墓地を訪れ、楽聖ベートーベンの墓碑の前に立つ。「苦悩を突き抜けて歓喜へ」との自身の言葉通り、苦悩に次ぐ苦悩の激浪を身に受けながら、交響曲第九番を完成させた生涯に思いを馳せる。伸一は、若き日、苦境に立つ恩師・戸田城聖を守ろうと孤軍奮闘する中で、その音楽を聴き、魂を燃え上がらせてきた。彼は万人の幸福と世界の平和を実現するため、ベートーベンのごとく、あえて困難な道を征こうと決意する。
 その後、イタリアのローマとバチカン市国へ。伸一は、古代ローマの遺跡に立ち寄り、人間共和の「永遠の都」の建設を誓う。ヨーロッパ滞在最終日の21日には、カタコンベ(初期キリスト教時代の地下墓所)を訪れ、不屈の信仰の大切さを語る。

「勝利」の章

 10月23日にヨーロッパから帰国した伸一は、30日と11月1日、大詰めを迎えた「大阪事件」の裁判の公判で、大阪地裁の法廷に立つ。
 5日は、国立競技場に10万人が集った第10回男子部総会へ。“10万結集”は、54年に戸田が「国士訓」を発表し、「青年よ、一人立て! 二人は必ず立たん、三人はまた続くであろう。かくして、国に十万の国士あらば、苦悩の民衆を救いうること、火を見るよりも明らかである」と呼び掛けて以来、青年部の室長だった伸一の、師への誓いでもあった。
 会場には、翌年の学会のテーマである「勝利」の文字が掲げられていた。それは、この日を迎えた青年たちの心情でもあり、戸田の遺命を実現し、青年部の室長として最後の仕事を成就した、伸一の勝利を示すかのようでもあった。
 12日には、横浜・三ツ沢の競技場に8万5000人が集い、第9回女子部総会が開催された。伸一は、「女子部は全員が教学部員に」と期待を寄せる。20日、東北本部の落成式に出席。そこで発表された“東北健児の歌”を、「新世紀の歌」として全国で歌っていくことを提案する。

「獅子」の章

 62年「勝利の年」の元日、伸一は、東京・信濃町の学会本部で行われた初勤行で、新年の大勝利を誓い、深い祈りを捧げる。13日には、雪の北海道へ。前年に他界した女子部のリーダーの北海道女子部葬に参列。翌日は、北海道総支部幹部会と全道の地区部長会に出席し、「北海の獅子よ立て」との念願を語る。
 17日、国会議事堂で、学会員の参議院議員が記者会見を開き、「公明政治連盟」の発足を発表する。
 25日は、大阪事件の裁判の判決公判が開かれることになっていた。前日に大阪入りした伸一は、関西の女子部幹部会に続いて、関西男子部の幹部会へ。どこまでも不幸な人の味方となり、民衆の幸福のために堂々と前進するよう訴える。
 公判では、伸一に「無罪」が言い渡される。関西本部に戻った伸一は、広間に掲げられていた戸田の遺影を見つめ、“先生、伸一は無罪を勝ち取りました……”と報告。
 さらに彼は、同志に向かい、「この事件は迫害の終わりではない。むしろ、始まりです」と語り、「私たちは師子だ。嵐のなかを、太陽に向かって進もう!」と呼び掛ける。

「大阪事件」無罪判決までの経緯

 〈大阪事件の無罪判決を勝ち取った後、山本伸一は関西本部で、事件の本質について語る〉
 「学会は民衆を組織し、立正安国の精神のうえから、民衆のための政治を実現しようと、政界にも同志を送り出してきました。その学会が飛躍的な発展を遂げているのを見て、権力は、このままでは、学会が自分たちの存在を脅かす一大民衆勢力になるであろうと、恐れをいだいた。そして、今のうちに学会を叩きつぶそうとしたのが、今回の事件です」(「獅子」の章、352ページ)

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。

【挿絵】内田健一郎 【題字のイラスト】間瀬健治