〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第5巻 御書編 2019年2月20日

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第5巻 御書編 2019年2月20日

 

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第5巻の「御書編」。小説で引用された御書、コラム「ここにフォーカス」と併せて、識者の声を紹介する。次回の「解説編」は27日付の予定。(「基礎資料編」は6日付、「名場面編」は13日付に掲載)

妙法の国 とわにくずれじ

【御文】
 日蓮が慈悲曠大ならば南無妙法蓮華経は万年の外・未来までもながるべし
 (御書329ページ、報恩抄)

【通解】
 日蓮の慈悲が広大ならば、南無妙法蓮華経は万年のほか、未来までも流布するであろう。

●小説の場面から

 〈1961年(昭和36年)10月、イタリアを訪問した山本伸一は、夜、古代ローマ時代の遺跡であるフォロ・ロマーノで思索を重ねる〉
 伸一は思った。
 ――繁栄を誇ったローマ帝国が滅びゆくことを、当時の人びとは、想像することができたであろうか。人の世は栄枯盛衰を避けることはできない。永遠に続くと思われたローマも、帝政の始まりから約五百年にして、西ローマ帝国の滅亡を迎えた……。
 しかし、大聖人は「日蓮が慈悲曠大ならば南無妙法蓮華経は万年の外・未来までもながるべし」と仰せである。
 妙法は永遠である。なれば、その妙法を根本に築かれた人類の平和と繁栄もまた、永遠であるはずだ。
 それは、武力や権力の支配に対して、人間性が勝利する“精神の大世界”といってよい。この永遠なる“精神の大世界”、すなわち“妙法の国”を、一人ひとりの胸中に築き上げ、人間共和の「永遠の都」を建設することがわが創価学会の使命だ。
 新しき人類史の扉を開くために、断じて成し遂げなければならない。
 ローマの月を仰いで、こう誓う伸一の胸に、一首の和歌が浮かんだ。
  
 ローマの
   廃墟に立ちて
     吾思う
   妙法の国
     とわにくずれじ
 (「歓喜」の章、158~160ページ) 

何ものも恐れぬ「師子の道」

【御文】
 師子王は百獣にをぢず・師子の子・又かくのごとし
 (御書1190ページ、聖人御難事)

【通解】
 師子王は百獣を恐れない。師子の子もまた同じである。

●小説の場面から

 〈62年(昭和37年)、「大阪事件」の無罪判決を勝ち取った山本伸一は、関西本部で幹部たちに、学会精神を語る〉
 「私は何ものも恐れません。大聖人は大迫害のなか、『世間の失一分もなし』(御書九五八ページ)と断言なされたが、私も悪いことなど、何もしていないからです。
 だから、権力は、謀略をめぐらし、無実の罪を着せようとする。
 私は、権力の魔性とは徹底抗戦します。『いまだこりず候』(御書一〇五六ページ)です。民衆の、人間の勝利のための人権闘争です」
 それは、権力の鉄鎖を断ち切った王者の師子吼を思わせた。彼の目には、不屈の決意がみなぎっていた。
 創価学会の歩みは、常に権力の魔性との闘争であり、それが初代会長の牧口常三郎以来、学会を貫く大精神である。(中略)
 それゆえに、学会には、常に弾圧の嵐が吹き荒れた。しかし、そこにこそ、人間のための真実の宗教の、創価学会の進むべき誉れの大道がある。御聖訓には「師子王は百獣にをぢず・師子の子・又かくのごとし」と。
 広宣流布とは、「獅子の道」である。何ものをも恐れぬ、「勇気の人」「正義の人」「信念の人」でなければ、広布の峰を登攀することはできない。そして、「獅子の道」はまた、師の心をわが心とする、弟子のみが走破し得る「師子の道」でもある。
 (「獅子」の章、354~355ページ)

ここにフォーカス/「絶対的幸福」とは

 近年、東京・荒川区新潟市など、いくつかの自治体が「幸福度」に関する調査と、その向上の取り組みを進めています。国連でも、「世界幸福度調査」を発表しています。
 国連の調査は、国民1人あたりのGDP(国内総生産)や人生選択の自由度など、6項目を数値化して幸福度を算出していますが、幸福の捉え方は一様ではありません。
 小説『新・人間革命』第5巻「勝利」の章には、第9回女子部総会で、女子部のリーダーが、幸福について語る場面が描かれています。
 彼女が語った「幸福観」は、戸田先生が示した「絶対的幸福」「相対的幸福」を踏まえたものでした。
 「相対的幸福」とは、経済的な豊かさや社会的な地位など、自分の外の世界から得られる幸福です。一方、「絶対的幸福」とは、困難や試練にも負けることなく、生きていること自体が楽しいという境涯の確立を言います。
 同章には、こうあります。
 「女性の幸せとは、人間の幸せとは、学歴や財産、あるいは結婚といったことで決まるものではない。すべては、人間として、自分に勝つ強さをもつことから始まる」
 仏法で説く「幸福」は、自分の外にあるのではなく、自身の胸中にあります。その“幸福の宮殿”の扉を開く実践が、唱題であり、日々の学会活動なのです。

半世紀超す執筆に思う 識者が語る/アメリカの未来学者 ヘイゼル・ヘンダーソン

●会長のビジョンは最高の贈り物

 「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命の転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命の転換をも可能にする」――池田SGI会長が、このようなテーマを掲げた小説を、長年にわたり執筆し、完結を迎えたことに、心から称賛の意を表したいと思います。
 私は、「人間の変革」に対するSGI会長の信念に、多大な啓発を受けてきました。何よりも会長はこの執筆活動を、人間を抑圧するさまざまな力と戦い、多忙を極める中で続けてこられました。会長が示す未来への人間主義の哲学とビジョンは、人類への最高の贈り物です。
 会長が記しているように、小我を超克し、「共感」と「協調」の方向へと歩みを進めてこそ、私たち人類はすべての生命と共に、この地球上で生を営み続けることができます。
 小説『新・人間革命』では、SGIという組織が、一人一人の「人間の変革」を根本にして、人類の平和の連帯を築いてきた歴史が描かれています。
 いかなる団体も、人間自身のエゴと向き合い、それを乗り越えていくことができなければ、発展はあり得ません。
 これまで私は、さまざまな国のSGIメンバーとお会いしてきました。皆さんは常に、自らのエゴや他者の偏見を打ち破り、異なる人種や文化の人々との「共通点」を見いだし、差異を尊重しようとしてきました。そして、心と心を結び合うことに成功しています。
 私自身の社会活動の原点は、子どもを育てる一人の母親として、環境問題の解決へ立ち上がったことでした。小説の中で池田会長が、リーダーとして果たすべき女性の役割について記されていることに、深い共感を覚えます。
 持続可能な未来を実現するには、女性も男性も対等のパートナーとなり、それぞれに特有の可能性と能力を、最大限に発揮していくことが求められます。
 SGIの運動を率いる女性の方々とお会いして実感することは、どなたも、人間の最良の部分が引き出され、リーダーとして実に優れているということです。また、若い世代の女性が、平和のために行動していることに大きな希望を持ちます。
 SGIの女性の皆さんは、私にとっても大事な啓発の源です。平和と共生の未来を築くために、皆さんがグローバルな運動をリードしてくださることを、心から期待しています。

 Hazel Henderson イギリス生まれ。後にアメリカへ移住し、市民運動家として多くの草の根の活動をリードする。池田先生と対談集『地球対談 輝く女性の世紀へ』を発刊している。

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。