〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第5巻 解説編 2019年2月27日

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第5巻 解説編 2019年2月27日

紙上講座 池田主任副会長
〈ポイント〉
①内発的な自覚を促す
②政治の本当の改革
人間主義運動の源泉
イタリアのミケランジェロ広場から望むフィレンツェの街並み(1994年5月、池田先生撮影)。第5巻の「歓喜」の章では、同国の初訪問の様子がつづられている

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第5巻の「解説編」。池田博正主任副会長の紙上講座とともに、同巻につづられた珠玉の名言を紹介する。次回は、第6巻の「基礎資料編」を3月6日付に掲載予定。(第5巻の「基礎資料編」は2月6日付、「名場面編」は13日付、「御書編」は20日付に掲載)

 世界広布は今、各国で目覚ましい発展を遂げています。先月、「欧州広布サミット」が開催されたヨーロッパも「ワン・ヨーロッパ! ウィズ・センセイ!(欧州は一つ! 池田先生と共に!)」を合言葉に、“世界広布の先駆”の使命に燃え、前進しています。
 第5巻「開道」「歓喜」の章は、第4巻に続き、1961年(昭和36年)10月の山本伸一のヨーロッパ初訪問の模様が描かれています。それは、まさに「平和への扉を開き、ヒューマニズムの種子を蒔く、開道の旅路」(7ページ)でした。
 ドイツのブランデンブルク門を視察した伸一は、“30年後にはベルリンの壁は取り払われているだろう”と語ります。同行の友から、その具体策について尋ねられると、伸一は「対話」と「文化交流」の大切さを強調し、「私はやります。長い、長い戦いになるが、二十年後、三十年後をめざして、忍耐強く、道を開いていきます」(11ページ)と決意を披歴します。その言葉のままに、先生は自らが「対話」と「文化交流」の先頭に立ち、欧州広布の道を切り開かれてきたのです。
 また、ドイツの会社の重役たちとの会食会で、伸一は文豪ゲーテの『ファウスト』を引用し、仏法の人間主義の思想を語ります。そして、互いに歌を披露し合い、心温まる交流のひとときを過ごします。
 この語らいを通し、伸一は「ドイツの人たちが真摯に仏法を求めていることを実感した。また、国境も民族も超えて、互いに共感し合えることを、強く確信」(24ページ)します。
 さらにイタリアでは、ローマの街並みを眺めつつ、「人類の胸中に『永遠の都』ともいうべき生命の黄金の城を築き、世界の平和を打ち立てんとするのが広宣流布である」「それは、断じて成し遂げなければならない創価学会のテーマである」(180ページ)と誓います。
 このほかにも、オランダ、フランス、イギリス、スペイン、スイス、オーストリアの各国で、伸一は、その国の歴史・文化などを通して、広布の未来を展望しています。それは、欧州の友の「原点」となっています。
 このヨーロッパ訪問で、伸一が力を注いだのが、中心となるリーダーを育てることでした。
 ヨーロッパの連絡責任者に任命された川崎鋭治の「何を、どのように進めていけばよいのでしょうか」(92ページ)との質問に、伸一はこう答えます。
 「先駆者というのは辛いものだよ。すべて自分で考え、次々と手を打っていかなくてはならない。誰も頼りにすることはできない。しかし、だからこそやりがいもあるし、功徳も大きい」(93ページ)と。伸一は川崎の自発性、主体性を育むために、あえて具体的なことに触れませんでした。
 「歓喜」の章に「広宣流布の活動の根本をなすものは、どこまでも個人の内発的な自覚である」(同)と記されています。活動を進めるに当たって、協議や意見の調整は大切です。その上で、広宣流布はどこまでいっても、自他共の幸福と平和の実現を「わが使命」と定める「一人」から始まることを、心に刻みたいと思います。

支援活動の意義

 「獅子」の章では、公明党の前身となる政治団体「公明政治連盟」の結成の淵源が記されています。
 伸一は「この政治団体は、学会のためのものではない」(308ページ)と明言した上で、「広く国民の幸福を願い、民衆に奉仕していく、慈悲の精神に貫かれた新たな政治団体」(309ページ)と強調しています。
 さらに議員たちに「地方議会にあっても、どうか、民衆に仕えるという気持ちで、地域住民の手足となってください」「誰からも賞讃されるような、模範を示していってほしい」「民衆を守る獅子となれ――それが私の願いであり、期待です」(314ページ)と万感の思いを語っています。
 ここで、学会の支援活動の意義について2点、確認したいと思います。
 一つ目は、政治を厳しく監視していくことにあります。戸田先生が「心して政治を監視せよ」と叫ばれたのも、劣悪な政治によって民衆が苦しむ事態を放置してはならないとの、仏法者としての強い信念があったからです。
 二つ目は、国民一人一人の良識と意識の向上です。政治の善しあしは、政治家だけによって決まるものではありません。政治家を選ぶ民衆が、政治を決定づけます。
 同章に、「政治の本当の改革は、民衆の良識と意識の向上を抜きにしてはあり得ない。学会は、その民衆を目覚めさせ、聡明にし、社会の行く手を見すえる眼を開かせてきた」(313ページ)とあります。
 一人一人に社会変革の主体者としての自覚を促してきたのが、学会の対話運動です。その誇りを胸に、“創価勝利”を開く対話拡大に挑んでいきましょう。

人権闘争の誓い

 第5巻の最後は、62年(同37年)1月25日、伸一に「大阪事件」の無罪判決が出された場面です。
 57年(同32年)7月3日、伸一は事実無根の選挙違反の容疑で不当逮捕されました。公判は84回に及び、60年(同35年)5月3日の第3代会長就任後も続きました。
 その間、伸一は23回、法廷に立っています。しかし、法廷闘争の心労など、微塵も見せず、世界広布の道を開き、今日の学会の基盤を築きました。
 池田先生は「大阪事件」の裁判について、本年1月の各部代表者会議のメッセージで、弁護士から“有罪を覚悟してほしい”と言われる中、青年部出身の有志が非道な取り調べの不当性を立証するために奮闘したことを紹介されました(本紙1月24日付)。その歴史は、小説『人間革命』第11巻「裁判」の章で詳しく触れられています。
 同章には、「大阪事件」を通して、伸一の胸中に深く刻まれた人権闘争の誓いこそが、「やがて、広く世界をつつみゆく、SGI(創価学会インタナショナル)の新しきヒューマニズム運動の、大潮流をもたらす源泉にほかならなかった」(403ページ)とつづられています。
 世界へ広がる創価の平和・文化・教育運動の源泉には、「大阪事件」を通した伸一の人権闘争への誓いがあったのです。この「誓願」の継承こそ、私たち弟子の使命と責任です。

名言集

●心のオアシス
 一人ひとりの同志が、それぞれの地域にあって、周囲に「共生」と「慈悲」のネットワークを広げていくならば、「人間砂漠」のような現代社会も、心のオアシスへと変えていくことができる。(「開道」の章、75ページ)

●人間の最大の偉業
 人間の最大の偉業とは何か。それは、同じ志をもった人間を残すことです。(「歓喜」の章、138ページ)

●大勝に信仰の大歓喜
 弟子がすべてに勝つ以外にない。自分に勝ち、宿命に勝ち、逆境に勝ち、人間王者になることだ。大勝が仏法を、広宣流布を永遠ならしめる。また、大勝のなかにこそ、信仰の大歓喜がある。(「歓喜」の章、179ページ)

●新しき時代の幕
 新しき時代の幕は、青年が自らの力で、自らの戦いで、開くものだ。他の力によって用意された檜舞台など、本物の師子が躍り出る舞台ではない。(「勝利」の章、250ページ)

●学会の使命
 本来、権力というものは民衆を守るべきものであって、善良な民衆を苦しめるためのものでは断じてない。社会の主役、国家の主役は民衆です。その民衆を虐げ、苦しめ、人権を踏みにじる魔性の権力とは、断固戦わなければならない。それが学会の使命である。(「獅子」の章、352ページ)

 ※『新・人間革命』『人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。