〈世界広布の大道――小説『新・人間革命』に学ぶ〉 第6巻 基礎資料編 2019年3月6日

〈世界広布の大道――小説『新・人間革命』に学ぶ〉 第6巻 基礎資料編 2019年3月6日

物語の時期 1962年(昭和37年)1月27日~8月31日
「波浪」の章
      

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第6巻の「基礎資料編」。各章のあらすじ等を紹介する。次回の「名場面編」は13日付、「御書編」は20日付、「解説編」は27日付の予定。

「宝土」の章

 1962年(昭和37年)1月29日、山本伸一は、仏法のヒューマニズムをもって、世界を永遠の平和の「宝土」に変えようとの誓いを胸に、初の中東訪問へ。出発の前々日、彼は、学会員でアラブ研究の第一人者である河原崎寅造と懇談し、ともに未来のために平和・文化の橋を架けようと励ます。
 一行は30日、最初の訪問国であるイランに到着。首都テヘラン市内を視察する。夜、イスラム教の開祖であるマホメットの生涯や、他宗教との対話の重要性について話し合う。
 伸一は「対話の目的は、どうすれば、みんなが幸福になり、平和な世界を築いていけるかということだ」と述べる。そして、世界宗教創始者は皆、迫害のなかで、民衆の幸福のために戦ってきており、現在に生きる人びとが、その創始者の心に立ち返り、対話を重ねていくことが世界平和のために必要だと訴える。
 イラクを訪れた一行は、クテシフォンの遺跡で、現地の青年や子どもたちと語り合う。また、バビロンの遺跡では、古代の王朝の繁栄に思いをはせ、広布とは、新しい未来の文明をつくる壮大なロマンだと語る。

「遠路」の章

 伸一の一行は、2月2日、トルコへ。彼は、日本との友好の歴史を振り返りながら、“国家次元”の交流も大事だが、“民衆次元”の交流こそ根本であると述べる。翌日、ドルマバフチェ宮殿などを見学する。
 4日には、ギリシャに。アクロポリスなどを視察し、ソクラテスが投獄されたとされる牢を見学。伸一は、「民主制」について思索を巡らせ、民衆を聡明にすることが、民主主義の画竜点睛であり、それを行っているのが学会であると語る。
 次の訪問国エジプトでは、ギザのピラミッドなどを巡り、ホテルに戻ると、電報が届いていた。大阪事件の第一審判決に対し、検察の「控訴なし」とあった。ついに彼の無罪が確定したのである。
 2月11日、伸一は、恩師・戸田城聖の誕生日をパキスタンで迎えた。かつて同地に至ったアレキサンダー大王の遠征に言及し、偉大な指導者の心を知り、同じ“志”を生涯持ち続けることの大切さを強調。恩師から託された、広布の「遠路」を進む決意を新たにする。
 帰途、訪問したタイと、経由地の香港で、支部の結成を発表する。

「加速」の章

 福岡・博多港の埋め立て地に掘っ立て小屋が立ち並ぶ“ドカン”地域は、治安も悪く、不幸に苦しむ人びとが多かった。学会の布教の勢いは、300万世帯達成に向けて「加速」。ここでも、次々と学会員が誕生し、庶民の蘇生の劇が生まれた。
 彼らの生きる力となったのが、山本伸一の指導であり、同志の励ましであった。学会は、全国各地で民衆を蘇らせ、現代社会を、根底から変えようとしていた。
 2月の本部幹部会では、この月、学会始まって以来、空前の弘教を成し遂げたことが発表される。伸一は、新会員の育成のため、徹底して教学運動に力を入れていく。彼は、中国、四国と同志の激励に奔走し、4月2日、戸田城聖の五回忌法要を迎える。席上、「大悪をこれば大善きたる」(御書1300ページ)の御文を拝して、広布への覚悟を披歴する。
 5月3日、広宣流布の新しい扉を開き続けてきた伸一の、会長就任2周年の歩みを刻む第24回総会が開催された。彼は、“創価学会は日本の柱となって、個人の幸福のため、社会の繁栄のために、鉄の団結をもって、堂々と前進を”と訴える。  

「波浪」の章

 6月2日、伸一は香川県での四国本部幹部会に出席。前日、伸一の出席を妨害する脅迫電話が学会本部に入る。彼は、自分が盾となって、仏子を守る決意で幹部会に参加する。3日は岡山県で行われた地区部長会で、「一昨日御書」を講義。世間の讒言に対して、師子となって、学会の正義と真実を語り抜こうと指導した。
 7月、第6回参議院議員選挙の投票が行われ、公明政治連盟は大躍進し、参議院で第3の勢力となる。この頃、各地で公政連の支援団体である学会への悪質な嫌がらせが頻発。
 なかでも秋田県尾去沢鉱山長崎県佐世保の中里炭鉱の労働組合では、学会員の「組合除名」となって現れた。組合員である学会員が、組合推薦の候補よりも、公政連推薦の候補を応援したことが原因であった。
 同志は組合の不当な除名、そして解雇に追い込まれながらも、「信教の自由」を訴えて戦い抜く。尾去沢鉱山では、組合と和解。中里炭鉱では、炭鉱閉山後も法廷闘争が続くが、最高裁で全面勝訴を勝ち取る。この事件は、いよいよ学会が、時代の建設という、「波浪」が猛る大海に乗り出したことを意味していた。

「若鷲」の章

 伸一は、学生部に対する本格的な薫陶を開始した。『大白蓮華』4月号の巻頭言に「学生部に与う」を執筆。学生部の使命は広宣流布の「先駆」にあることを明確にする。また、新たな未来への陣列を築くため、学生部代表への御書講義を決める。
 7月の、第5回学生部総会で伸一は、日蓮仏法とその他の思想・哲学を徹底して比較研究し、「“人類を救い得る世界最高の哲学は、確かにこれしかない”と確信したならば、その信念にしたがって、仏法の大哲理を胸に、民衆の味方となり、不幸な人びとを救うために、生涯、生き抜いていただきたい」と訴えた。
 8月31日、学生部の代表に対する第1回「御義口伝」講義が開始された。伸一は、講義を通して、恩師・戸田城聖に代わって、次代の指導者たる学生部に、大聖人の仏法の大哲理を示そうと全力を注いだ。
 講義は、伸一の魂と、受講生の心がとけ合う“生命の溶鉱炉”ともいうべきものとなった。彼は、この受講生たちが、世界広宣流布の新しい夜明けを開いてくれることを確信していた。事実、「若鷲」たちは、使命の空へ大きく羽ばたいていく。

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。

 【挿絵】内田健一郎 【題字のイラスト】間瀬健治