〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第8巻 御書編 2019年5月22日

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第8巻 御書編 2019年5月22日

 

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第8巻の「御書編」。小説で引用された御書、コラム「ここにフォーカス」と併せて、識者の「私の読後感」を紹介する。次回の「解説編」は29日付の予定。(「基礎資料編」は8日付、「名場面編」は15日付に掲載)

何ごとも勝てば嬉しい

【御文】
 仏法と申すは勝負をさきとし
 (御書1165ページ、四条金吾殿御返事)

【通解】
 仏法というのは勝負を第一とし

●小説の場面から

 〈1963年(昭和38年)6月3日、山本伸一は東京第一本部の新出発の幹部会に出席し、あいさつに立った〉
 「何ごとも勝てば嬉しい。活動の勝利は、わが生命に躍動と歓喜をもたらし、希望と活力の源泉となる。しかし、負ければ歓喜もなくなり、元気も出ません」(中略)
 「折伏にせよ、あるいは会合の結集にせよ、勝とうと思えば、目標を立て、決意を定め、真剣に唱題に励むことから始めなければならない。さらに、知恵を絞って、勇気をもって挑戦し、粘り強く行動していく以外にありません。
 そして、一つ一つの課題に勝利していくならば、それは、大きな功徳、福運となっていきます。
 また、何よりも、それが人生に勝つための方程式を習得していくことになる。さらに、活動を通してつかんだ信仰への大確信は、人生のいかなる困難をも切り開いていく力となります。
 御書には『仏法と申すは勝負をさきとし』と仰せです。それは、広宣流布とは、第六天の魔王という生命破壊の魔性との戦いであり、さらには人間が生きるということ自体が、人生そのものが戦いであるからです。
 人間の幸福といっても、自分の臆病や怠惰などの弱さと戦い、勝つことから始まります。人間革命とは、自己自身に勝利していくことであり、そのための、いわば道場が、学会活動の場であるともいえます」
 (「布陣」の章、47~48ページ)

一の暴論には十の正論を

【御文】
 声仏事を為す
 (御書708ページ、御義口伝)

【通解】
 声が仏の働きをする。

●小説の場面から

 〈7月28日、山本伸一は、言論部の第一回全国大会で、邪悪な言論が横行していることを指摘する〉
 伸一は訴えた。
 「悪質な意図をもって、民衆を扇動するような、一部の評論家やジャーナリスト、あるいは指導者によって、日本が左右されてしまえば、いったいどうなるか。そうした邪悪な言論と戦い、その噓を暴き、人間の“幸福”と真実の“平和”のための新しい世論をつくりあげていくことこそ、言論部の使命であります。
 私は、一握りの評論家やジャーナリスト、あるいは一部の“偉い人”だけが、言論の自由謳歌するような時代は、もはや去ったと叫びたい。また、本来、言論の自由とは、そういう特権階級のためのものではないはずであります。私どもは、善良なる世論を結集し、燃え上がる民衆の言論戦をもって、新しき時代の幕を開いていこうではありませんか!」
 民衆が、堂々と真実を語り、正義を叫ぶことこそ、「言論の自由」の画竜点睛である。「一」の暴言、中傷を聞いたならば、「十」の正論を語り抜く。その言論の戦いのなかにこそ、「声仏事を為す」という精神も、生き生きと脈打つのである。
 伸一は、最後に、どこまでも民衆の味方として、人びとの心を揺り動かす情熱と理念、緻密な論理とを備えた大言論戦の勇者たれと呼びかけ、講演としたのである。(「清流」の章、205~206ページ)

ここにフォーカス/こまやかな配慮

 日蓮大聖人は、こまやかな配慮にあふれる方でした。御書には、日ごろ接する機会のない門下に対する思いやりの言葉が、随所に記されています。
 その例として、「布陣」の章では、富木常忍が大聖人に「帷(夏用の着物)」を供養したことが挙げられています。
 「帷」は、90歳になる常忍の母が、わが子のために精魂込めて縫い上げたものといわれています。母の心がこもった、その帷を、常忍は大聖人に供養しました。
 大聖人は、「我と老眼をしぼり身命を尽くせり」(御書968ページ)――自ら老いた眼を細め、身命を尽くして作られたことでしょう、と常忍の母の労苦に思いをはせられます。
 さらに、“この着物を身に着けて、日天の前で、その由来を詳細に報告しましょう”と言われ、諸天善神の加護は間違いないと激励されます。
 母は子を思い、子は母を、師匠を思う。そして、師匠は弟子を思い、その母にも心を配る――。何と美しい心の交流でしょうか。これこそ、仏法の世界です。
 「布陣」の章に、「山本伸一も、この大聖人の御心を、わが心としていかなければならないと、常に、自分に言い聞かせてきた」とあります。
 どうすれば、同志が喜ぶのか、元気になるのか。その人だけではなく、家族、周囲にまで思いを巡らせ、真剣に祈り、励ましを送る。その真心の連帯を広げていくことが、広宣流布の運動の根本です。

私の読後感 識者が語る/元駐日韓国大使 権哲賢氏

●恩師の偉大さの証し

 韓国と日本の間には、過去に不幸な歴史がありました。いまだに韓日の友好を築くには、幾つもの困難があります。
 しかし、だからこそ、「真の韓日友好」を願われる池田先生の心と言葉が、多くの人々に伝わり、韓日関係の改善の力となることを心から望んでいます。
 私は、日本に留学し、また、駐日韓国大使を務めました。池田先生がいかに深い歴史認識に基づいて、韓国について語られているかが、よく分かります。
 先生は、韓日間の民衆と文化の交流に多大な貢献をなされた方です。韓国に対する深い理解があり、誠実で勇気ある行動を貫いてこられたことに、いつも感謝しています。
 現代社会のさまざまな問題を克服するためには、「人間の変革」を避けては通れません。その人間に対する不信や失望が今、世界に渦巻いています。
 しかし、先生は決して、人間に対する信頼を手放すことはありません。これが、先生の真骨頂でありましょう。一人の人間革命から人類の宿命の転換が始まる、との小説のテーマは、先生の信念そのものと感じます。
 半世紀を超す小説の執筆は、一言で言えば「感動」そのものです。それは、師匠のもとで、若き時代から徹底して薫陶を受けたからこそ、可能だったのではないでしょうか。つまり、その執筆は、池田先生と同時に、戸田先生の偉大さの証しでもあると思えてなりません。
 『新・人間革命』第8巻「激流」の章には、韓国SGIの歴史がつづられています。
 創価学会は、日本で発展した宗教団体として、韓国国内では、多くの人が批判的に見ていました。そのような状況の中で、韓国SGIの方々は誠実に、社会に貢献してきました。
 韓国SGIが今日、ここまで発展していることは、まさに「不可能を可能にした」といえましょう。その発展の原動力こそ、池田先生の存在にほかなりません。
 小説で触れられている慶熙大学の名誉哲学博士号をはじめ、先生には韓国国内から数多くの顕彰が贈られています。しかし、それでもなお、先生がなされた韓日友好の業績をたたえるには足りないと感じています。
 韓国に一貫して寄せられる先生の真心は、韓日友好の大きな柱として、不滅の光を放ち続けるに違いありません。今後も先生に、希望の指針を示していただきたいと念願しています。

 クォン・チョリョン 韓国生まれ。筑波大学で都市社会学の博士号を取得。2004年、韓日議員連盟の副会長兼幹事長に就任。08年から3年間、駐日大使を務めた。

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。