〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第10巻 基礎資料編 2019年7月10日

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第10巻 基礎資料編 2019年7月10日

物語の時期 1965年(昭和40年)1月1日~1966年3月5日
「幸風」の章 メキシコ市
       

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第10巻の「基礎資料編」。各章のあらすじ等を紹介する。次回の「名場面編」は17日付、「御書編」は24日付、「解説編」は31日付の予定。

「言論城」の章

 「勝利の年」と名づけられた1965年(昭和40年)の新春は、会長・山本伸一の小説『人間革命』の「聖教新聞」連載で始まった。恩師・戸田城聖の正義と精神と広布の偉業を、永遠に伝え抜くために、伸一の新たな言論闘争が開始されたのである。
 1月16日、伸一は新九州本部の落成式に臨み、さらに大阪、鳥取、岐阜、愛知など、指導行を続ける。そして、5月3日、会長就任5周年となる本部総会を、540万世帯の同志とともに迎えた。
 この頃、聖教新聞社では、会員の強い要望であった日刊化への本格的な準備が進められていた。6月8日、伸一は、聖教新聞社を訪れ、職員と懇談。職員の求めに応じて、共に各紙面を検討し、アドバイスを重ね、聖教を世界最強の「言論城」にと訴える。
 7月15日、遂に、聖教新聞が日刊化。伸一は、配達に関わるメンバーの無事故を、日々真剣に祈り、配達員への機関紙を「無冠」と命名する。
 相前後して、アメリカ、フランス、ブラジル、西ドイツ(当時)、香港、ペルーなど、海外でも機関紙誌が次々と発刊されていく。

「幸風」の章

 8月14日、伸一はアメリカのロサンゼルスへ。出発直前に、ロスで人種差別への抗議から、暴動が発生する。同行することになっていた幹部は、危険が予想されることから、渡航延期を提案。しかし、伸一は「今こそ、仏法という生命の平等の哲学を、アメリカの天地に流布せねばならない」との強い決意で、渡米するのであった。
 15日、ロス郊外のエチワンダで、アメリカ初の野外文化祭が開催される。伸一は全精魂を込めて同志を激励。終了後も、人種差別に苦しんできたアフリカ系アメリカ人の青年と固く握手を交わし、アメリカ広布への思いを語る。
 さらに一行は、17日、戸田城聖が夢に見、訪問を念願した国・メキシコを訪れる。
 市内を視察した伸一は、師に代わってメキシコの街を歩いていることに深い感慨を覚え、必ず、ここにも幸福の花園をつくると心に誓う。
 アメリカ、メキシコに世界広布への新しき「幸風」を起こして帰国した彼は大阪へ。組織の第一線で奮闘する全国の班長・班担当員との、記念撮影がスタートしたのである。

「新航路」の章

 10月19日、伸一は文化交流の新たな道を開こうと、欧州へ飛び立つ。
 フランスのパリでは、ヨーロッパ本部長の川崎鋭治の自宅に設けられたヨーロッパ事務所の開所式に出席。席上、ヨーロッパを総合本部として、2本部にすることを発表した。また、ナイジェリアから参加していた婦人が、アフリカ支部長に就任する。
 21日の指導会では、ベルギーに地区が結成され、イギリスのロンドン地区の新人事が発表される。
 次いで、西ドイツでは、日本から世界広布への決意に燃えて移住し、炭鉱で働く青年たちと再会。伸一は、広宣流布の「新航路」を開く使命を担った大切な同志を心からたたえ、大きな期待を寄せる。
 24日に到着したイタリアのミラノでは、民音の専任理事である秋月英介らが、ミラノのスカラ座を訪問。日本公演の招聘の交渉にあたる。
 さらに、南フランス、スペインを経て、ポルトガルリスボンへ向かう。一行は、“大航海時代”の突破口を開いた、エンリケ航海王子をたたえる記念碑の前に立ち、世界平和への大航海へ船出する決意を新たにするのであった。

「桂冠」の章

 10月31日、伸一は、ヨーロッパ訪問から帰ると、直ちに創価大学の設立審議会を発足させた。牧口・戸田の両師が描いた構想の実現に向かって、第一歩を踏み出したのである。
 また、記念撮影を中心に、各地のメンバーの激励に東奔西走。病に悩む友や、母を亡くし、父が未入会の姉妹など、悲しみに沈んでいる同志に、渾身の励ましを送る。
 さらに、彼は、組織が官僚主義に陥ってしまうことを憂慮し、組織の中核を担う本部職員の育成に精魂を注ぐ。年末も、学会本部、聖教新聞社を隅々まで回り、陰で黙々と働く職員をたたえる。
 1966年(昭和41年)、伸一は、1月14日には早くも、ハワイへ出発する。ハワイ会館の開館式に出席するなど、ハワイ広布の発展へ師子奮迅の戦いを進めていった。
 2月27日、本部幹部会の席上、壮年部の新設が発表される。3月5日には壮年部結成式が学会本部で開催された。伸一は「創価の城を支えゆく、黄金柱に」と指導。
 誇り高き「桂冠」の王者が、妙法の名将が、いよいよ、出陣したのである。

小説「人間革命」の連載開始

 1965年(昭和40年)の聖教新聞元日号から、待望の小説『人間革命』の連載がスタートした。第1回は、戸田先生の出獄の場面が描かれていた。その真情について、池田先生は次のようにつづっている。
 「『人間革命』は、創価の大河の流れが、まさに、たった一人から始まっていることを痛感させた。そこに、筆者の山本伸一の意図もあった。彼は、師の戸田の決意と精神を、全同志が分かちもってほしかった。そのための執筆でもあった」(「言論城」の章、9ページ)

「壮年部」結成

 1966年(昭和41年)、創価の黄金柱たる「壮年部」の新設が発表され、3月5日に学会本部で結成式が行われた。席上、「大白蓮華」4月号の巻頭言が読み上げられた。
 そこには、“妙法の名将”の資格として、「第一に御本尊への絶対の確信。第二に難事をも成し遂げゆく力。第三に社会のすべてに通暁した世雄。第四に後輩を育成していく熱意。第五に人間性豊かな包容力ある指導者。第六に旺盛な責任感と計画性」(「桂冠」の章、390ページ)が論じられていた。

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。

【挿絵】内田健一郎 【題字のイラスト】間瀬健治