〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第10巻 解説編 2019年7月31日

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第10巻 解説編 2019年7月31日

紙上講座 池田主任副会長
〈ポイント〉
聖教新聞の日刊化
②学会精神について
③壮年部結成の意義
アメリカ・ロサンゼルスの街並みを、赤やピンクの花々で飾られた街灯、緑の木々が明るく彩る(1996年6月、池田先生撮影)

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第10巻の「解説編」。池田博正主任副会長の紙上講座とともに、同巻につづられた珠玉の名言を紹介する。次回は、第1巻から第5巻の「番外編㊤」を8月7日付に掲載予定。(第10巻の「基礎資料編」は7月10日付、「名場面編」は17日付、「御書編」は24日付に掲載)

 先日の聖教新聞(7月20日付)に、池田先生が撮影された「創価学会 世界聖教会館」の写真が大きく掲載されました。今秋、同会館は完成します。いよいよ“聖教新時代”の到来です。
 第10巻「言論城」の章に、「広宣流布とは、言論戦である。仏法の真実と学会の正義を訴え、論証し、同志を勇気づける言論なくしては、広布の前進はない」(48ページ)とあります。その言論の武器こそ、聖教新聞です。
 同章には、1965年(昭和40年)7月15日付から始まった聖教の日刊化の経緯が記されています。
 当時、聖教新聞は週3回刊の8ページ建てでした。日刊化は、65年10月からスタートの予定でしたが、伸一は「もう少し、早くできないだろうか」(52ページ)と提案します。「週三回の発行では、もう、学会の前進のスピードに、ついて行けない時代になった」(同ページ)からです。
 「幸風」の章では、メキシコ支部長が、日本から送られてくる聖教新聞を隅から隅まで熟読したことがつづられています。「新航路」の章では、聖教新聞を通して、世界広布に尽くしたいと考え、西ドイツ(当時)に渡った青年のエピソードが紹介されています。
 まさに、聖教新聞は世界広布を推進する活力源ともなっていたのです。
 日刊化へ向け、輸送体制の確立など、問題は山積していました。しかし、伸一のもと、聖教に携わる誰もが、「たとえ自分一人になっても、必ず、日刊化を軌道に乗せるぞ」(66ページ)と決意し、日刊化が実現しました。
 伸一は編集首脳との懇談で、“聖教らしさ”について、①どこまでも、広宣流布のための機関紙②真実の仏法を、よく理解できる新聞③読者に勇気と希望を与える“励ましの便り”――と述べています。機会あるごとに、彼は聖教の進むべき道を示していきました。
 聖教の日刊化と相前後して、世界各地では、各国語の機関紙誌が誕生しています。その機関紙誌を通して、それぞれの国で、学会への誤った認識が改まっていったのです。
 「聖教は、思想と哲学の電源地であり、世界最強の言論城にしていかなければならない」(58ページ)との期待を胸に、さらなる聖教の発展・拡大に努めていきたいと思います。

励ましの智慧

 65年8月の夏季講習会で、伸一は学会精神を同志の胸に深く打ち込むため、全力を注ごうと決意します。
 「『本門の時代』に入り、広宣流布の流れは、社会のあらゆる分野で、仏法の人間主義ともいうべき思想を実現していく、多様多岐にわたる『展開』の時を迎えた」(90ページ)からです。
 学会精神について、「言論城」の章に、「浅きを去って深きに就く、一人立つ『丈夫の心』」「殉難を恐れぬ、『死身弘法』の決意」(同ページ)など、10項目にわたって記されています。
 この精神を伝えるには、「振る舞いのなかにのみある」(91ページ)と、伸一は間断なく行動を続けます。
 「どうすれば、みんなが、喜び勇んで」(38ページ)立ち上がることができるのか――。伸一の、その一念から生まれる励ましの智慧は、さまざまな形となって表れました。
 例えば、「地区幹部の励ましにこそ、『本門の時代』の新しき飛躍の鍵がある」(35ページ)と考え、各地で行われた地区部長会で、可能な限り、参加者全員と握手をしています。
 ところが、彼の手は、次第に赤く腫れ、万年筆を握ることすらできなくなってしまいます。そこで、握手に代わる激励として、記念撮影を開催していきました。撮影を通して、「数十万の同志との魂の絆」(191ページ)が結ばれていったのです。
 本来なら、一人一人の同志と握手を交わし、励ましたいというのが、伸一の思いだったに違いありません。しかし、だからこそ、彼は記念撮影という短時間の出会いの場であっても、「同志の心の暖炉に、永遠なる『誓いの火』を、『歓喜の火』を、『勇気の火』を、断じて、ともさねばならない」(同ページ)と魂の触発に全力を傾けました。それはまさに、「『一瞬』に『永遠』を凝縮しての行動」(15ページ)でした。
 今、私たちは「SOKAチャンネルVOD」で、池田先生のスピーチ映像を視聴することができます。先生のスピーチは、「『一瞬』に『永遠』を凝縮」した励ましにほかなりません。
 こうした数々の師匠の激励を、自身の人間革命の力としていくのか。それとも、過去の指導と捉えるだけで終わるのか。問われているのは、師匠に対する私たちの姿勢です。

人材輩出の力

 「桂冠」の章に、66年(同41年)3月5日の壮年部結成式の場面が描かれています。
 「本門の時代」に入り、「信心即生活の実証を、一人ひとりが現実に示していく時」(384ページ)を迎え、壮年があらゆる分野で力を発揮していくことが、社会に大きく信頼を広げていくために大切であるとして、壮年部が結成されました。
 伸一は結成式で、「永続的な発展のためには、分別のある“保守”の力と、若々しい、勢いのある“革新”の力がかみ合っていくことが肝要」(同ページ)と強調し、「広布推進の強力なエンジンとしての青年の力とともに、豊かな経験や判断力など、総合的な円熟した壮年の力が求められている」(385ページ)と訴えます。
 さらに、「壮年部が立派であるならば、婦人部も、男女青年部も、立派に成長します。壮年のよき励ましは、各部から、大人材を輩出させていく力となります」(同ページ)と、万感の期待を寄せています。
 「壮年部結成記念日」は3月5日ですが、「壮年部の日」は池田先生の入信記念日である8月24日に定められています。
 同章で言及されている通り、牧口先生が、信心を始められたのは57歳。戸田先生が出獄し、広布に一人立たれたのは45歳。いずれも、壮年時代です。
 つまり、8・24「壮年部の日」には、「創価の城を支えゆく、黄金柱」(389ページ)として、三代会長の戦いを模範としていくとの意義が込められているのではないでしょうか。
 伸一は、「壮年部が大きく成長し、堅固な広宣流布の構えができるならば、わが創価学会は永久に盤石です」(390ページ)と語り、結成式の指導を結んでいます。「学会の永遠性の確立」という意味においても、壮年部の使命は限りなく深く、大きいのです。

名言集

●雅量のあるリーダー
 後輩に対しても、自分以上の力をつけさせていける、雅量のあるリーダーでなければならない。それには、まず率先垂範だ。その姿、行動が、真実の触発をもたらしていくことは間違いない。(「言論城」の章、54ページ)

●求道心を強く
 求道心こそ、信心の養分を吸い上げ、自身の成長をもたらす根である。その根が強ければ、必ずや、幸福の花々を咲かせゆく。(「言論城」の章、94ページ)

広宣流布への一念
 “広宣流布”に一念を定めた人は強い。人生の勝利も、成功も、知恵も、活力も、その一念のなかに収まっているからだ。(「幸風」の章、156ページ)

●決意が勝利を生む
 一念は大宇宙を動かす。「因果俱時」であるがゆえに、今の一念に、いっさいの結果は収まっている。口先だけの「決意」などありえない。「決意」には、真剣な祈りがある。ほとばしる気迫がある。懸命な行動がある。そして、必ずや輝ける勝利がある。(「新航路」の章、254ページ)

人間主義の原点
 “一人の友”を、どこまでも大切にし、同苦し、守らんとすることこそ、御本仏・日蓮大聖人の御精神であり、創価の心である。また、そこに、人間主義の原点がある。(「桂冠」の章、324ページ)

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。