セルジペ連邦大学「名誉博士号」授与式での池田先生の謝辞(代読) 2019年8月3日
セルジペ連邦大学「名誉博士号」授与式での池田先生の謝辞(代読) 2019年8月3日
教育こそ勝利を築く力
たゆまぬ「学びの心」が人生を豊かに
一、貴セルジペ州が生んだ、偉大なる詩人がおります。ブラジル文学アカデミーの名誉ある先哲で、本年、生誕180周年を迎えたトビアス・バヘットであります。
大いなる魂の飛翔を謳い上げた詩人の“心の翼”は何であったか。それは「感謝」であります。「感謝の心は永遠不滅の美徳である」と、彼は語りました。
本日、貴国の最高峰の科学と教育の殿堂・貴セルジペ連邦大学から賜りました栄えある名誉学位を、私は満腔の感謝を込めて拝受させていただきます。
そして、この誇り高き栄誉を、貴国の模範の良き市民として献身する北東地域をはじめ、ブラジルSGIの宝友、また、貴国からお迎えしている最優秀の留学生の英才をはじめ、世界の創価の青年たちと分かち合わせていただきたいと思っております。
誠に誠に、ありがとうございました(大拍手)。
一、ここで、貴大学の栄光の足跡に学びながら、尊敬する先生方とご一緒に、また、わが後継の若人たちと共々に新たな開拓に進みゆく真情を、3点、申し上げたいと思います。
第一に、「よどみなき成長」の人華の園を、ということであります。
「よどみなき成長」とは、貴大学の校章にラテン語で掲げられたスローガンに他なりません。そして、その先頭に立って、牽引されているのがアンジェロ・ロベルト・アントニオリ総長であります。
総長は薬学の世界的な大家であられ、先住民が継承してきた貴重な「薬草」の知恵なども、生き生きと現代に生かされていることを、私は感銘深く伺いました。
「薬草」といえば、大乗仏典の精髄である法華経には「薬草喩品」という章があります。多様な薬草や薬木は、平等に大地に降り注ぐ慈雨に浴して、それぞれに育っていきます。同じように、人間もまた、生命尊厳の慈悲の哲理に則って、人種や民族、国籍や階層など、あらゆる差異を超えて、一人一人が「人華」という、かけがえのない幸福の花、英知の花、人間性の花を多彩に咲き薫らせていくという共生の世界が示されているのであります。
この「薬草喩品」の「人華」のビジョンを通しつつ、私は、アフリカの人権の闘士・マンデラ大統領とも、人間教育の持つ平等と尊厳の力を語り合いました。
若き生命が「よどみなき成長」を遂げて、「人華」を爛漫と咲かせゆくために、何が大切か。
私は、総長の座右の銘に共鳴を禁じ得ません。それは、「傲慢さは不条理を増長させる。謙虚さは道理と人生の最高潮に導く」という言葉であります。
傲慢に心を閉ざしてしまえば、成長は止まります。
どこまでも謙虚な開かれた心で、たゆまず学び合う。そこにこそ、皆が自分らしく生命を開花させ、人々のため、社会のために“良薬”を実らせる花園が広がるのではないでしょうか。
一、第二に申し上げたいのは、「生活の大地」に不屈の勝利劇を、ということであります。
総長は常々、実験室や教室で行われる学問は、人々の生活を良くするためという目的に向けられるべきであると強調されています。
その通りに、貴大学は、貴国の北東地域にあって、「知識の発信の源泉」となり、州の発展と人々の生活向上に重要な役割を担ってこられました。
とともに、総長が何よりの喜びとされているのは、薫陶した教え子たち一人一人のサクセスストーリーを見守ることであります。そして、そのために、「謙虚さ」と併せて「執念」を教え、「常に戦い、絶対にあきらめないこと」を打ち込まれているのであります。
私が対談したブラジル文学アカデミーのアタイデ総裁も力説されていました。
「教育なしには、人間生活の目的であり、社会の最も堅固な基盤である人格を豊かにすることはできません。教育は、進歩のための第一前提であるのです」と。
まさしく、人間教育の真剣な打ち合いこそ、人格を鍛え、磨き、高め、生活と社会の大地に不屈の勝利劇を広げゆく原動力でありましょう。
わが「創価教育」も、創始者であり、平和の信念に殉じた牧口常三郎先生以来、一貫して、いかなる現実の困難にも屈せず、民衆の幸福の価値を創造し、希望と勝利の活路を切り開く人格を育んできました。
この夏も、通信教育部のスクーリングが、世界から労学一体の尊き向学の友を迎えて行われます。また深く地域から愛され、広く市民の方々から親しまれている伝統の夏季大学講座も有意義に開かれます。
猛暑の中、健康第一、無事故第一で、楽しく啓発に富む「学は光」の広場となることを、そして、一人一人の新たな勝利劇の出発となるよう、私は創立者として真剣に祈っております。
一、第三に、「持続可能な開発」へ若き世界市民の連帯を、と申し上げたい。
思えば、「誰も置き去りにしない」と国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、2012年、貴国のリオデジャネイロで開催された会議(リオ+20)で提唱されたものです。
その源流たる貴国にあって、北東地域の18大学の柱として、貴大学が「持続可能な開発」に素晴らしい貢献を果たすとともに、地球環境と生命を守る人材育成に尽力されていることは、よく伺っております。
わが創価大学も、国連アカデミック・インパクトの一員として積極果敢に挑戦しております。共生創造理工学科の最先端の取り組みも、海外研修の活発な展開も目を見張ります。
さらに、あの未曽有の東日本大震災から立ち上がられた東北の方々と連帯する「復興インターンシップ(就業体験)」も、かけがえのない学びとなっております。
また、ブラジルの「アマゾン創価研究所」でも、自然と人類の共生の心を育む「環境教育」に力を入れていることは、ご存じの通りであります。
ともあれ、貴国の麗しき詩心の女性コラ・コラリーナは叫びました。「私は人間の連帯を信じる。私は現在の過ちと苦悶は乗り越えられると信じる」と。
なかんずく何よりも強く、何よりも朗らかな、若き世界市民の連帯を、貴大学と力を合わせ、いやまして築き広げていこうではありませんか!
今日は、うれしいことに、わが創大の世界市民の連帯の中核と光る貴国の留学生も大勢、列席してくれております。その友と一緒に、大文化人リベイロ博士のブラジル讃歌を宣言し、私の御礼とさせていただきます。
「最高の人間性を掲げるゆえ最良の文明。地球の最も美しき、そして輝かしき地域にあって、全ての人種と異文化との共生に心を開くゆえ最も寛大な文明――ブラジルよ」と。
愛する心の母校・セルジペ連邦大学に栄光あれ!
愛するブラジルに永遠無窮の隆盛あれ!
ムイト・オブリガード!(ポルトガル語で「大変に、ありがとうございました!」)(大拍手)