ペルナンブコ農工連邦大学「名誉博士号」授与式から 池田先生の謝辞(代読) 2019年8月29日

ペルナンブコ農工連邦大学「名誉博士号」授与式から 池田先生の謝辞(代読) 2019年8月29日

人類の未来を希望で照らしゆけ! 南十字星のごとく
一人の心に光を灯すことから壮大なる価値創造が始まる
同じ星で生きる“地球人”の自覚で連帯を
ブラジル文学アカデミーアタイデ総裁が、リオデジャネイロの空港に到着した池田先生を歓迎。当時94歳の総裁は、「私は94年間も池田会長を待っていたのです」と(1993年2月)

 一、今、私の心に、懐かしく蘇る声の響きがあります。貴国の偉大な人権の闘士であられた、ブラジル文学アカデミーアタイデ総裁が、ご自身の生まれ故郷に誇りを込めて語ってくださった一言であります。
 すなわち、「私はペルナンブコ州カルアル市で生まれました。大西洋に突き出した、ブラジルの角にあたる部分です」と。
 まさしく、貴・ペルナンブコ州をはじめ、ブラジル北東部は、きら星のごとく幾多の逸材を生み出してきた黄金の人材の角であります。このブラジル北東部を力強くリードされる諸大学が一堂に会され、「人類益のための高等教育」を志向する国際会議の開催、誠におめでとうございます。この誉れのネットワークに、わが創価大学が連なることができ、これほどの光栄はございません。
 一、私にとりまして、きょう8月24日は、第2次世界大戦の終戦より2年後の1947年、不世出の大教育者であった戸田城聖先生の弟子として、平和建設へのロマンの旅路に第一歩を踏み出した日であります。
 恩師は、創価教育の創始者である牧口常三郎先生と共に、日本の軍部政府の横暴に抵抗し、2年間の投獄を勝ち越えました。師弟の出発より72年となる本日、貴・ペルナンブコ農工連邦大学より拝受しました最高の知性の宝冠を、私は、貴国をこよなく敬愛してやまなかった恩師に、謹んで捧げさせていただきたいのであります。
 とともに、8月24日は、恩師の事業が最も苦境にあった1950年に、民衆の言論紙・聖教新聞の創刊を、師弟して構想した原点の日でもあります。今、皆様方にも愛読いただいているブラジル・セイキョウは宝の姉妹紙です。
 その意味からも、平和と人道の言論闘争の同志たる、信頼してやまぬブラジルSGIの友たちと、本日の喜びを、私は共々に分かち合わせていただきたいと願っております。
 なお、まもなく東京に完成いたします世界聖教会館の建物の要所要所にも、深き連帯の心から、ブラジル産の御影石が使われておりますことを、申し添えさせていただきます。
 幾重にも意義深き式典を挙行してくださった先生方のご厚情に、重ねて心より御礼を申し上げます。誠に誠に、ありがとうございました(大拍手)。

自由の電源地 ペルナンブコ

 一、ここで私たちは、創立の原点から100年以上の歴史を刻む貴・ペルナンブコ農工連邦大学の誇り高い歩みに学びつつ、北東部地域の諸大学と創価教育が共有する「人類益のための価値創造の光」を、3点にわたって確認したいと思います。
 第一に、「慈愛と情熱の貢献の光」です。
 わが憧れの港湾都市、ここレシフェ出身である、ブラジルの教育の父パウロフレイレ先生は宣言されました。「教育は人間を変える。そして人間こそが世界を変えるのだ」と。
 人類益のための壮大な価値創造も、一人の人間の心に光を灯すことから出発します。
 貴大学の淵源は、1912年に開学した高等農業・獣医学校にあります。人間愛に満ちた先人たちが築いた小さな農学校から、地域の宝というべき、その歩みは始まりました。
 相次ぐ干ばつなど、多くの試練と戦うペルナンブコは、歴史上、自由と民権の電源地としても有名です。この民衆のためという伝統を体現する貢献のリーダーを、貴大学は一貫して育んでこられました。
 この、貴大学に漲る“人間主義の教育で地域社会に寄与する”との伝統の精神を担い立ち、次の50年、100年へ、卓越した指揮を執られているのが、セナ総長であられます(大拍手)。
 総長ご自身が、技術的支援を受けられない小規模な畜産農家を何としても助けたい、との信念から乳製品研究の道を開かれた、誉れの卒業生なのであります。
 総長は学生に対し、慈母のごとく一人一人を慈しみ、励まされ、「卒業証書」を渡される際には「倫理、尊敬、思いやり、他者への責任と貢献を忘れない専門家たれ」と言葉を加えられると伺っております。
 私が大切にしている、フレイレ先生の信条があります。「教育者は、自身が教育した一人一人の中で永遠に残るのだ」。ここにこそ人間教育者の無上の歓喜があり、不滅の栄光があります。目先の毀誉褒貶など、問題ではありません。
 青年を愛し、民衆に尽くし、地域を守り抜く、慈愛と情熱の貢献の光を、私たちはさらに赫々と輝かせていきたいと思うのであります。

困難を打ち破る不屈の負けじ魂

 一、二点目に「困難を打ち破る英知の光」であります。
 貴大学の紋章には、「学問の種を蒔く」という意義のもと、大地を踏みしめつつも、毅然と頭を上げ、天座に輝く南十字星を見つめながら「種を蒔く人」の姿が描かれています。
 これこそ、ここ北東部が育んだ文豪アマード先生が「開放的で、人生の過酷さに不屈の負けじ魂を持ち、機敏さと想像力と強固な意志そのもの」(ジョルジ・アマード著『老練な船乗りたち』高橋都彦訳、水声社)と自負された北東部の民衆の象徴でありましょう。
 私がブラジルSGIの宝友と命に刻んできた大先哲の金言には、「いまだこりず候法華経は種の如く仏はうへての如く衆生は田の如くなり」(御書1056ページ)とあります。
 何があっても「いまだこりず候」と、一人一人の心の大地に「勇気の種」を蒔き続けていく以外にありません。ほかの何ものでもない、この不屈の負けじ魂から、困難を打ち破る英知の光を強め広げていけるのではないでしょうか。

“我々”こそが未来開く主体者

 一、そして三点目に、「共に栄えゆく調和と連帯の光」であります。
 貴大学は「農業」という基盤、そして「地域」という大地に足場を置きつつ、森林や生物の保全、環境科学にと、地球的課題を見据えた研究・教育体制を築き、幅広い人材を育成されています。
 思えば、誰も置き去りにしない「持続可能な開発目標(SDGs)」が提唱されたのは、2012年に貴国のリオデジャネイロで開催された会議(リオ+20)でありました。そして、2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で、実に約170回にもわたり、繰り返される言葉があります。
 それは「我々」です。ほかの誰でもない、持続可能な未来を作り出す主体者は今ここにいる「私」と、あなたという“私”であることを呼び掛けているのです。
 「我々は皆、同じ青き星で生きている地球人である」と、一人一人が強い自覚と責任感をもって連帯し、英知を結集していくことが、どれほど重要であるか。その見事なモデルを、今回の会議は人類に示されていると、私は声を大にして讃えたいのであります(大拍手)。
 一、アタイデ総裁が、私との対談集で、まさに遺言として語られた言葉があります。
 「今後も乗り越えられないと思える困難が起こってくるでしょう。しかし、正義の精神と、至高なる存在への愛があれば、克服できないものはありません」と。
 貴国の国旗にも輝く南十字星は、全88の星座の中で最も小さいにもかかわらず、人類の限りない希望の指標と仰がれてきました。
 きょうよりは、先生方とさらに固く手を携え、南十字星さながら共に栄えゆく調和と連帯の光で、人類の未来を照らし晴らしていくことをお誓い申し上げ、御礼とさせていただきます。
 最後に、尊敬する諸先生方のご健勝と、偉大な使命光る各大学の益々の大発展を、心よりお祈り申し上げます。
 ムイト・オブリガード!(ポルトガル語で「大変に、ありがとうございました!」)(大拍手)