「誰も置き去りにしない」社会へ 創価大学主催 横浜での「価値創造×SDGs」シンポジウムから 2019年9月4日

「誰も置き去りにしない」社会へ 創価大学主催 横浜での「価値創造×SDGs」シンポジウムから 2019年9月4日

 
TICAD7の連携事業として行われたシンポジウム。国際機関の代表や研究者、学生ら多くの参加者が詰め掛けた(横浜市内で)

 創価大学主催のシンポジウム「アフリカとSDGs(持続可能な開発目標)――価値創造で共にひらくアフリカの未来」が1日、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の連携事業として横浜市内で開催された。ここでは、講演した3人の話(要旨)を紹介する。

ザンビア共和国 ムテイテイ駐日大使

●女性と若者の力活用を
 SDGsが成功裏に達成されることは、アフリカのみならず、全ての人々にとって大切なことです。そのためには、国内や地域のニーズを明確に精査し、パートナーシップを構築していかねばなりません。アフリカ諸国はSDGs達成への強い決意のもと、革新的な方法でこれに対応しようと努力しています。
 その意味で、本シンポジウムがTICAD7の直後に開催され、SDGsの推進における青年の役割を中心とした意識啓発に重きを置いていることを高く評価しております。TICADは日本とアフリカ諸国が協力し、SDGsとアフリカ連合アジェンダ2063に沿って経済開発をもたらす取り組みであるからです。
 SDGs達成に向けた戦略において重要な要因の一つは、人的資本を含むあらゆる資源の活用です。つまり、取り残されがちな女性や女児も開発アジェンダに関与させていくことです。また、若者の力を活用することも欠かせません。アフリカの人口は増えており、若い世代が多くを占めています。
 その意味でも、創価大学の取り組みは極めて重要です。先日、創価大学の学生がザンビア大学への交換留学から帰国されたと伺いました。留学生はアイデアを共有し、お互いを啓発することができます。こうした交流は大変重要なのです。
 アフリカには若い人口が多いからこそ、彼らに学びの機会を提供し、訓練し、必要な技術を与え、社会の発展に貢献できるような環境整備をすることで、良い変化がもたらされると考えます。そのためにパートナーシップが必要であり、世界各国が協力していくことが重要なのです。
 ザンビアは、青少年をはじめとする人材育成・エンパワーメント(内発的な力の開花)を積極的に推進しています。若者が国家の開発に関与していくことで、SDGs達成に貢献してもらいたいと考えています。
 政府としてもSDGsの取り組みを推進していくことによって、変化する若者のニーズに応えていきたい。社会経済の環境の中における脆弱性の予防と削減を、地域社会ならびに職場においても達成していきたいと思います。
 本シンポジウムをはじめ、こうした機会を通じて若者の意識向上に貢献されている創価大学のご尽力に、心から感謝申し上げます。

ジンバブエ共和国 アブーバスツ駐日大使

●気候変動への対策が急務
 SDGsは主に経済、社会、環境に関わるものであり、開発目標は社会的にも環境的にも持続可能なものでなくてはなりません。
 17ある目標を詳しく見ていくと、ほぼ全てが目標13「気候変動に具体的な対策を」に関係していることが分かります。その意味で本日は、気候変動がわが国に与えている影響の一端をお話しさせていただきます。
 本年、アフリカにサイクロン「イダイ」、さらに「ケニス」が襲来し、わが国では死者約300人、住む家を失った人は約1万6000人、被害人口は約25万人に上りました。人口約1600万人で、経済規模も決して大きくはないわが国において、この数字は非常に大きなものです。
 その結果、わが国は必要物資を輸入に頼らざるを得なくなり、SDGsの推進に必要とされていた資金を犠牲にして対応しなければならなくなったのです。
 さらに、日照りや干ばつによる食糧不足が発生しています。水は干上がり、野生生物や家畜が被害を受けています。草原は乾燥し、火災も増加しています。すると貧困、栄養不足が多発することになります。そして農村から都市へ、国内から国外へという人の移動が発生し、インフラに対する大きな制約となっていきます。
 また、こうした人々の移動は、これまでの生活が修復不可能なところまで破壊されることにつながります。さらに、貧困が発生して出生率が高くなれば、経済的なパフォーマンスが低下していきます。
 言うまでもなく、ジンバブエの経済の土台は農業です。雨水およびかんがい農水、そして牧畜、畜産などもその中に含まれます。こういった農産業全体が異常気象に脅かされています。このように、気候変動はわが国のみならず、アフリカ大陸全体に深刻な影響を与えているのです。
 そういった状況の中で現在、エネルギーにあふれ、多彩な技術を持つ若者が気候変動に対抗していこうとしています。すなわち、環境再生運動や環境に優しいさまざまなイニシアチブや活動に従事していく――これらが若い人たちの課題になっています。
 若い人々は未来の世代であり、国の未来、地球の未来であります。若い人が中心になってイニシアチブを発揮することで、気候変動の影響を抑えていってもらいたいと思います。

創価大学 馬場学長

●大学が目標推進拠点に
 本学は2021年に創立50周年を迎えます。その記念事業の一環として「価値創造×SDGs」をテーマに、SDGsの推進を促していきます。本日は、その立ち上げイベントとなります。
 本学は創造的世界市民の育成を掲げ、教育・研究などの取り組みを通して、SDGs達成と「誰も置き去りにしない」地球社会の実現に貢献することを目指しています。
 開学以来、61カ国・地域218大学とネットワークを構築し、大学のグローバル化世界市民育成に積極的に取り組んでまいりましたが、とりわけアフリカの諸大学とは、30年以上にわたって学術・教育交流を展開し、友好関係を深めてまいりました。現在は9カ国13大学と交流協定を結び、これまで400人に及ぶ学生交流を行ってきました。
 創立者・池田先生は本年の「SGIの日」記念提言で、SDGs達成には世界の大学が協力して推進することが重要であるとされ、国連と世界の大学を結ぶ「国連アカデミック・インパクト」の取り組みを強調されました。そして、世界の大学をSDGsの推進拠点にする流れを強めることを提唱されています。
 本学は近年、国連のSDGsの取り組みに注力し、本年4月には「SDGs推進センター」を設置。本学の強みを生かした取り組みを行っています。同月にイギリスの教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」が発表した、SDGsの取り組みを通じて大学の社会貢献度を評価する「THE大学インパクトランキング2019」では、総合101位~200位にランクインし、日本の大学で4位となりました。このうち目標16「平和と公正をすべての人に」では、世界で61位、日本国内では3位と高い評価をいただきました。
 本学はこれからも、アフリカとの交流をさらに活性化し、SDGsの取り組みに注力してまいります。