〈世界広布の大道――小説「新・人間革命に学ぶ」 御書編 第11巻 2019年9月18日

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命に学ぶ」 御書編 第11巻 2019年9月18日

 

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第11巻の「御書編」。小説で引用された御書、コラム「ここにフォーカス」と併せて、識者の声を紹介する。次回の「解説編」は25日付の予定。(「基礎資料編」は4日付、「名場面編」は11日付に掲載)

題目こそ幸福の直道

【御文】
 「朝朝・仏と共に起き夕夕仏と共に臥し……」(御書737ページ、御義口伝)

【通解】
 (傅大士の釈には)「毎朝、仏と共に起き、毎晩、仏と共に眠る……」

●小説の場面から

 〈1966年(昭和41年)3月、山本伸一はペルーを初訪問し、現地の同志を激励。人生を勝利する第一の要諦に「題目」を挙げ、次のように指導する〉
 「御本尊は、大慈悲の仏様です。自分自身が願っていること、悩んでいること、希望することを、ありのまま祈っていくことです。苦しい時、悲しい時、辛い時には、子どもが母の腕に身を投げ出し、すがりつくように、『御本尊様!』と言って、無心にぶつかっていけばいいんです。
 御本尊は、なんでも聞いてくださる。思いのたけを打ち明けるように、対話するように、唱題を重ねていくんです。やがて、地獄の苦しみであっても、噓のように、露のごとく消え去ります。
 もし、自らの過ちに気づいたならば、心からお詫びし、あらためることです。二度と過ちは繰り返さぬ決意をし、新しい出発をするんです。
 また、勝負の時には、断じて勝つと心を定めて、獅子の吼えるがごとく、阿修羅の猛るがごとく、大宇宙を揺り動かさんばかりに祈り抜くんです。そして、喜びの夕べには『本当にありがとうございました!』と、深い感謝の題目を捧げることです。(中略)
 題目は、苦悩を歓喜に変えます。さらに、歓喜を大歓喜に変えます。ゆえに、嬉しい時も、悲しい時も、善きにつけ、悪しきにつけ、何があっても、ただひたすら、題目を唱え抜いていくことです。これが幸福の直道です」(「開墾」の章、138~139ページ)

翻訳は新たな歴史開く推進力

【御文】
 本朝の聖語も広宣の日は亦仮字を訳して梵震に通ず可し(御書1613ページ、五人所破抄)

【通解】
 大聖人の御書も、広宣流布の時には、また日本語を外国語に翻訳して、広く世界に伝えるべきである。

●小説の場面から

 〈1966年(昭和41年)夏、伸一は国内外を東奔西走する中で、未来への布石として御書の英訳を推進する〉
 伸一は、世界広布のために、御書を各国語に翻訳するにあたって、英語訳の大切さを痛感していた。
 それは英語を話す人が多いだけでなく、御書の英訳から、ほかの外国語に重訳されていく可能性が高いからであった。(中略)
 翻訳作業は、御書講義などでよく研鑽される御抄を中心に進められていったが、担当したスタッフにとっては、苦悩の連続であった。
 大聖人の教えを正確に翻訳し、伝えていくには、何よりも、御書の原文を、正しく解釈することが重要になる。(中略)教学部の関係者に聞いたり、山本会長の講義や仏教辞典などにあたりながら、まず解釈に幾晩も費やさなければならなかった。
 仏法用語など、英語にはない概念の言葉や、文化の違いをどう説明するかも、難しい問題であった。
 スタッフは、時に黙々と辞書と格闘し、時に互いに意見をぶつけ合い、激しく議論することもあった。(中略)
 翻訳は、華やかなスポットライトを浴びることもない、地味で目立たぬ労作業である。しかし、それは、世界の広宣流布を推進するうえで、いかに大きな貢献であったか。
 偉業というものは、賞讃も喝采もないなかで、黙々と静かに、成し遂げられていくものといえる。(「常勝」の章、215~216ページ)

ここにフォーカス/戦争は人間の最大の愚行

 「常勝」の章に、ベトナム戦争に心を痛め、平和のために奮闘する山本伸一の姿が描かれています。
 伸一は1966年(昭和41年)11月の青年部総会で和平提言を発表。翌年8月の学生部総会でも、ベトナム戦争の早急な解決を訴えています。
 さらに、ニクソン米大統領宛てに書簡を送ります。その中で、彼は「あなたも現在、『平和の大統領』として後世に長く語り伝えられていくか、それとも全人類の平和への期待を裏切った人として歴史の断罪を受けるか、その分かれ目に立たされているような気がいたします」と、大統領に忠告し、さまざまな国際機構の設置を提案しています。
 書簡は人を介して大統領補佐官キッシンジャー氏に託され、大統領に届けられました。それから間もなく、ベトナム和平協定が結ばれています。
 同章には、「戦争は、人間の魔性の心がもたらした、最大の蛮行であり、最大の愚行以外の何ものでもない」と。この「魔性」の生命を打ち砕き、人間の心の中に崩れざる“平和の砦”を築くのが、私たちの「人間革命」の運動です。

半世紀超す執筆に想う 識者が語る/国立イタプア大学元副総長 ジルダ・アグェロ氏

●万人が豊かな人生を歩む指針

 2005年4月、パラグアイの国立イタプア大学の副総長として、尊敬する池田博士に名誉博士号を授与するために訪日しました。間もなく15年になりますが、あの時の思い出は、昨日のことのようによみがえってきます。
 池田博士は授与式に先立ち、ゴンサレス総長と私を、美しい胡蝶蘭を飾って迎えてくださり、懇談してくださいました。
 当時、私は、パラグアイの国立大学史上、女性で初めて副総長という重責に就き、多忙な日々を送っていました。池田博士はそのことをご存じで、私を“パラグアイローザ・パークス”とたたえてくださったのです。人知れず、もがき、苦闘していた私にとって、この上ない、励ましの言葉でした。涙が込み上げてきて仕方がありませんでした。
 私はこれまで数多くの池田博士の著作に触れてきました。
 幅広い分野への深い見識を持ち、小説『人間革命』『新・人間革命』や対談集、平和のための提言などを編まれています。
 そこで一貫しているのは、万人が幸福になるための指針が示されていることです。
 私が、池田博士から学んだことは、私たちは幸せになるために、この世に生まれてきたこと。そして、人生とは“戦い”であるがゆえに、幸せを勝ち取るためには、常に戦わなければならない、という点です。
 池田博士は、ご自身の人生の全てを捧げて、人々の幸福のために、世界の平和のために行動し、その模範を示されています。
 私も2年前まで3期15年、副総長として、大学の発展のために、学生のために、懸命に走り抜いてきました。苦しい時も、つらい時も、池田博士との出会いが私の前進の原動力でした。
 世界中どこを探しても、これほど、偉大な足跡を残された人物を見たことがありません。
 ここイタプア県には、チャベスやフラム移住地があり、多くの日系人の方々が生活しています。その中に、パラグアイSGIの友人がおり、長年、交流を続けています。
 イタプア県の日系移住者からパラグアイSGIの歴史が始まったこと、そして、その草創期には、大変な苦労があったことも、よく理解しています。
 私にとって、SGIは自分自身を高めてくれる大切な存在です。今後も、池田博士の著作を学びながら、豊かな人生を歩んでいきたいと思います。

 Yilda Agüero 教育学博士。専門は教育哲学や教育管理学。国立イタプア大学副総長を3期15年務め、女性の地位向上に貢献した。SGIの諸行事にも来賓として出席している。

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。

【挿絵】内田健一郎 【題字のイラスト】間瀬健治

 【おわびと訂正】8月21日付3面の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」第6巻から第10巻の「番外編㊤」の年表で、1963年7月11日の池田先生の事績において、小説の参考頁の章名を「布陣」としましたが、「宝剣」の間違いでした。心からおわび申し上げ、訂正いたします。