フフイ大学「名誉教授」称号授与式での池田先生の謝辞(代読) 2019年9月19日

フフイ大学「名誉教授」称号授与式での池田先生の謝辞(代読) 2019年9月19日

アンデス山脈の懐に抱かれた美しきフフイ州
生命の大地から価値の創造を
励ましの言葉と献身が「心への点火」の連鎖に
アルゼンチンの人権の闘士で、ノーベル平和賞受賞者であるペレス=エスキベル博士夫妻と語り合う池田先生。民衆の連帯の重要性や対話の力などについて意見を交わした(1995年12月、東京・創価国際友好会館で)

 一、「冬は必ず春となる」
 貴国・アルゼンチンの友人たちと、常に語らい、励ましとしてきた金言であります。
 今、希望あふれる春を迎えた憧れの貴国へ、私の心も舞い飛んでおります。
 本日、光栄にも、新時代の「人材育成の大城」と輝く貴・国立フフイ大学より、栄えある名誉教授の称号を賜りました。
 この栄誉を、私は何よりも、アルゼンチンSGIをはじめラテンアメリカ各国の同志と共に、拝受させていただきたいと願っております。
 わが宝友たちこそ、いかなる試練の冬にあっても、良き国民、良き市民として社会に貢献し、幸福と繁栄の春を勝ち開いてきた、世界に模範の誉れのスクラムであるからであります。
 誠に誠に、ありがとうございます(大拍手)。
 本日は、光輝みつる貴大学の精神に学び、人類の凱歌の春を呼ぶ「三つの力」を確認し合いたいと思います。

若人の英知の連帯

  一、第一に、「英知と友愛の握手の力」であります。
 貴大学の美しい校章の中央には、「友愛」の象徴として、固く結ばれた二つの手が描かれています。
 さらに、「自由」と「平和」のシンボルである、フリジア帽とオリーブの木が、黄金の太陽に包まれています。まさしく、貴大学が広げてこられた、輝きわたる若人の英知の連帯そのものではないでしょうか。
 あの第2次世界大戦中に、平和と人道の信念を貫き通した大教育者・牧口常三郎先生と戸田城聖先生の弟子として、私も「人間主義」の対話を重ね、国を超え、民族を超え、文明を超えて、信頼の握手を交わしてきた一人です。
 また、教育と文化のたゆまぬ交流を通し、民衆と民衆、なかんずく青年と青年の心通う握手の道を開いてきました。
 昨年6月には、貴国の偉大な人権の獅子であられるペレス=エスキベル博士とご一緒に共同声明を発表し、「連帯の力で乗り越えられない壁など決してない。さまざまな文化的アイデンティティーや精神的アイデンティティー、そして属性の違いを超えて、青年による行動の連帯を幾重にも広げていこうではないか」と呼び掛けたのであります。
 貴国では、国家の「教育の父」たるサルミエントを偲んで、ゆかりの9月21日を「アルゼンチン学生の日」と制定されていると伺いました。
 毎年、この時期には、貴大学がそびえ立つフフイ市は、「アルゼンチンの青年の春の都」と謳われ、「学生の祭典」がにぎやかに開催されるとともに、ラテンアメリカの諸課題へ若き英知を結集する青年会議が行われます。
 光栄にも、この気高き若人の祭典の折に、私は貴大学の一員とさせていただきました。
 貴大学の英才たちをはじめ、貴国そしてラテンアメリカの青年リーダーたちと、がっちり命と命で握手して、一人一人の栄光を切に祈り、未来を託す思いであります。

天然資源の宝庫

  一、第二に申し上げたいのは、「生命の大地から汲み出す価値創造の力」です。
 アンデス山脈の懐に抱かれたフフイ州は、風光明媚な天然資源の大宝庫でもあります。なかでも、水面が白い大平原に見える景勝のオラロス塩湖は、電気自動車(EV)などの電源に使用される貴重なリチウムの生産源としても世界的に注目されております。
 この天地にあって、貴大学は「地質鉱山学研究所」を淵源とし、鉱工業をはじめ、地域産業の躍進の大きな原動力となってこられました。
 とともに、ここフフイでは、約200年前、大指導者のベルグラーノが誇り高き民衆と共に、「独立」と「教育」の不滅の歴史を刻んでおります。
 「他者の幸福に力を注ぐことほど尊いことはない」と叫び、公共教育の充実のために、私財をなげうって、人生を捧げられました。
 そして、このベルグラーノの“人間開発と平和な社会を実現する唯一の方法は、教育である”との確信を、そのまま受け継がれ、民衆に開かれた大学教育の大発展へ名指揮を執ってこられたのが、テキ総長その人なのであります。
 地球上の大地に埋蔵された鉱物資源には限りがありますが、人間の生命の大地に内在する価値創造の力には限界がありません。
 この力を汲み出して、人類の新たな地平を開く「人間教育」と「人間革命」へ、私たちは敬愛するテキ総長をはじめ貴大学の先生方、学生方と手を取り合って、前進していきたいと思いますが、いかがでしょうか!(大拍手)

社会の繁栄のため

  一、第三に、「民衆を照らす行動の力」であります。
 貴大学は、フフイ州が生んだ大詩人、マルチン・ラウル・ガランの呼び掛けを、モットーとして高らかに掲げておられます。
 すなわち、「この炎で汝の松明に火を灯せ」と。
 まことに素晴らしいモットーであります。
 私には、サルミエントの信条が思い起こされるのであります。
 「私は、一人の人間の言動が、他者に精神の力を注ぎ入れることができると信じている」と。
 「人間」の心に炎を灯すのは、その人を思いやる「人間」の真心であり、励ましの言葉であり、献身の行動でありましょう。
 この心から心への点火が限りなく連鎖していくのが、教育のロマンではないでしょうか。
 仏典には、「人のために火をともせば・我がまへあきらかなるがごとし」との譬喩があります。
 私も、本日より、貴大学のモットーを深く体し、後継の青年たちと共々に、悩める友のため、民衆の幸福のため、社会の繁栄のため、世界の平和のため、わが命を燃え上がらせて、人類の現在、そして未来を、いよいよ赫々と照らしゆく決心であります。
 結びに、貴大学の無窮の大発展と、本日ご列席の方々のますますのご健勝をお祈り申し上げ、私の謝辞とさせていただきます。
 ムーチャス・グラシアス!(スペイン語で「大変にありがとうございました!」)(大拍手)