〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第12巻 基礎資料編 2019年10月2日

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第12巻 基礎資料編 2019年10月2日

物語の時期 1967年(昭和42年)5月3日~1969年7月17日
「天舞」の章
     

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第12巻の「基礎資料編」。各章のあらすじ等を紹介する。次回の「名場面編」は9日付、「御書編」は16日付、「解説編」は23日付の予定。

「新緑」の章

 1967年(昭和42年)5月3日、山本伸一の会長就任7周年となる本部総会が、日大講堂で開催される。席上、彼は、当時の社会が抱える「人間疎外」の問題を鋭く分析し、日蓮仏法こそが、新たな精神文明を開きゆく力であると訴えた。
 総会を終えた伸一は、13日、アメリカ、ヨーロッパ歴訪の旅に出発する。
 最初の訪問地ハワイは、7年前、座談会に集ったのは三十数人にすぎなかった。しかし、今やメンバーは2000世帯を超え、太平洋の一大拠点に発展していた。
 15日、一行はロサンゼルスへ。アメリカ広布の大発展の布陣として、アメリカを総合本部とすることを発表。17日、ニューヨークを訪れ、ダンサーなど、芸術家を志す青年たちを激励する。
 20日には、フランス・パリ郊外のヌイイに誕生したパリ会館の入仏式に出席。皆が一人立ち、その一人一人の勝利が積み重なってこそ、大勝利があると指導する。
 さらに、イタリア、スイス、オランダと回り、各地で「新緑」のような、希望あふれる青年たちを全力で励まし続ける。

「愛郷」の章

 伸一は、アメリカ、ヨーロッパ訪問から帰ると、休む間もなく大阪や滋賀県彦根など、各地を回り、6月23日に、長野県の松代へ向かう。
 松代では、2年前の1965年(昭和40年)8月から群発地震が続いていた。伸一は、その年の11月、激励に向かう派遣幹部に“松代の同志には、強い「愛郷」の心で、住民の依怙依託となって地域を守り抜いてほしい”との思いを語る。同志は、わが地域を寂光土に変えようと誓い、決然と弘教に立つ。
 また、松代の幹部は、大きな地震の後には、自主的に会員の家へ、安否確認と、激励に回る。この励ましのネットワークは、やがて会員だけでなく、自然に地域の友へと広がっていった。そして、67年(同42年)6月、松代会館を訪れた伸一は、苦難に負けず、模範の国土、組織を築こうと訴える。
 7月には、九州、中部、東北を回り、8月には、兵庫、福井、富山を訪問。15日は、岐阜・高山市に。伸一は、江戸時代、悪政に抗して農民が決起した、この飛騨の地に、「幸福の花園」を、「人間共和の故郷」を築いてほしいと期待を述べる。

「天舞」の章

 9月1日、東京・信濃町創価文化会館が開館する。続いて関西にも文化会館が完成。それは、仏法を基調に、平和と文化を推進する創価学会を象徴するものとなる。
 伸一は、この年、全国を回りながら、四国には「楽土建設の革命児たれ」、九州には「つねに先駆の九州たれ」など、各方面にモットーを示していった。
 10月15日には、東京文化祭が国立競技場で開催される。舞い行く赤鷲など、千変万化する人文字や、歓喜のダンスが繰り広げられた。
 出演者の一人一人に、自己の壁に挑み、限界を打ち破る勝利のドラマがあった。天を舞うがごとき、青春乱舞の舞台であった。大成功の陰には、人文字の下絵や各演目の振り付け等に献身する人の支えがあった。文化祭終了後、伸一は真っ先に、会場の外で黙々と整理や清掃に取り組む青年たちに感謝の言葉をかける。
 30日、伸一は「ヨーロッパ統合の父」クーデンホーフ・カレルギー伯爵と会見。人類の恒久平和実現を願う2人は、深く共鳴し合う。後年、この対談は、対談集『文明・西と東』として結実する。

「栄光」の章

 1968年(昭和43年)「栄光の年」は、伸一の詩「栄光への門出に」とともにスタートした。
 4月8日、東京・小平市創価学園(中学校・高等学校)では、待望の第1回入学式が行われた。創立者の伸一は開校に先立って、「真理を求め、価値を創造する、英知と情熱の人たれ」など、五つの指針を贈った。創価教育を実践する学校の設立は、牧口常三郎初代会長から弟子の戸田城聖に、さらに、戸田から伸一に託された構想であった。
 伸一は、入学式当日、式典後に学園を訪れ、「英知 栄光 情熱」のモットーが刻まれた碑の除幕式に臨んだ。生徒と共に「栄光橋」を渡り、また、記念のカメラにも納まった。
 その後も、彼は学園に幾度も足を運ぶ。親元を離れて暮らす寮生の代表とも懇談し、皆をわが子のごとく激励する。伸一の慈愛に包まれ、生徒たちは大きく成長していく。
 やがて、大学、幼稚園、小学校と、創価一貫教育が完成。また、アメリ創価大学をはじめ、創価教育の園は、海外にも広がり、卒業生は、全世界を舞台に、社会貢献の実証を示していくのである。

創価学園開校の軌跡

 〈創価学園をたびたび訪れた山本伸一は、時に寮生・下宿生を、時に成績不振に悩む生徒を温かく励ました〉
 山本伸一は、生徒の幸福と栄光の未来を考え、一人ひとりを大切にする心こそが、創価教育の原点であり、精神であると考えていた。
 国家のための教育でもない。企業のための教育でもない。教団のための教育でもない。本人自身の、そして社会の、自他ともの幸福と、人類の平和のための教育こそ、創価教育の目的である。(「栄光」の章、395ページ)

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。

 【挿絵】内田健一郎 【題字のイラスト】間瀬健治