「情熱の日」記念の集いへの池田先生のメッセージ 2019年10月4日

「情熱の日」記念の集いへの池田先生のメッセージ 2019年10月4日

インビクタス!(負けるな)使命に向かって
ラグビーワールドカップ南アフリカ大会で、マンデラ大統領㊧が優勝した同国のピナール主将をたたえる(1995年6月24日、ヨハネスブルクで、AFP=時事)

 若き価値創造のエネルギー沸き立つ「情熱の日」、誠におめでとう!
 挑戦と友情の金の汗が光る競技大会や運動会も、知恵と団結で創り上げた学園祭も、誠に見事でした。
 私は、皆さん一人ひとりに、青春勝利の金メダルをかける思いで、全てを見守っております。
 きょうは、たくましくスポーツの精神を呼吸しながら成長しゆく皆さんに、「平和の前進へ、勇気と信頼のスクラムを!」とエールを送ります。
 今、4年に一度のラグビーのワールドカップが、アジア初となる日本で開催され、東北の被災地をはじめ全国各地で熱戦が繰り広げられています。世界の青年の情熱みなぎる、この光景を、私がお見せしたかったと思う方がおります。
 それは、スポーツをこよなく愛し、さらに東北の復興も強く願われていた、南アフリカの偉大な「人権の闘士」ネルソン・マンデラ元大統領であります。
 マンデラ氏は、黒人も白人も差別なく、互いに手を取り合う平和な社会を目指し、27年半、1万日に及ぶ投獄にも耐え抜いて、戦い続けてきました。
 黒人初の大統領に就任した翌1995年には、人種や言語など、あらゆる差異を超えて、心と心を結ぶスポーツの力に期待を込め、南アフリカラグビーのワールドカップを開かれております。
 マンデラ大統領は、「インビクタス」というラテン語を大切にされていました。これは、「負けない」「へこたれない」「屈しない」という意義で、まさしく「負けじ魂」と言いかえられるでしょう。
 大統領から励ましを受けた南アフリカの代表選手たちは、この「負けじ魂」を受け継いで、思う存分、発揮するとともに、「ワンチーム、ワンカントリー(チームは一つ、祖国は一つ)」の合言葉で団結して、快進撃を続けます。そして、無敵と謳われる強豪にも逆転勝利し、初優勝を成し遂げました。
 大観衆の歓呼の中で、チームのジャージーを着た大統領が、優勝トロフィーを授与する姿は、「人種融和」の新時代を告げる歴史的なシーンとなったのです。肌の色に関係なく、一体となって喜び合う感激のスクラムが国中に広がりました。
 マンデラ大統領と私が日本で再会したのは、それから10日ほど後のことです。世界を魅了する“マンデラ・スマイル”は、一段と輝いて見えました。
 大統領は語られています。「信頼でき、頼りになる友人の支えは、人生最大の打撃を受けたときでも、希望を捨てず試練に耐える強さを与えてくれる」(『ネルソン・マンデラ 未来を変える言葉』セロ・ハタン、サーム・フェンター編、長田雅子訳、明石書店)と。
 ラグビーも、信頼し合う仲間とパスをつなぎ、スクラムを組み、支え合って、前へ前へ勇敢に進んでいきます。
 チームのために声を掛け合い、一人ひとりが強くなり、自らの持てる力を出し切って、わが使命を果たし抜いていくのです。
 ここに、万般にわたる勝利の方程式があります。
 マンデラ大統領は、「大切なことは何が起こったかということより、それをどのように受け止めるかということです」(『ネルソン・マンデラ 私自身との対話』長田雅子訳、明石書店)とも語られていました。
 青春には、楕円形のラグビーボールのように、つかみかけたチャンスが、思わぬ方向に転がってしまう試練もあるでしょう。
 しかし、たとえ何度失敗しようとも、“いざ征かん!”“我は征く!”と、不屈の「負けじ魂」で再び立ち上がり、朗らかに笑顔の一歩を踏み出していく人にこそ、栄光は輝くのです。
 アメリカの「人道の母」エレノア・ルーズベルトの、未来の世代へのメッセージにも、「行動することで、勇気は育まれます」「はじめは成功しなくても、もう一度、もう一度、トライ(挑戦)するのです」とある通りです。
 どうか、春夏秋冬の絵巻に彩られた、この学園を舞台に、勉学で、語学で、読書で、クラブ活動で、自分の壁にチャレンジしながら、「きょうも、悔いなくベストを尽くした! 明日も、断じて勝ってみせる!」と、忍耐強く「常勝の日々」を積み重ねてください。目の前に立ちはだかる悩みや苦労も、良き学友と互いに励まし合って、一つ一つ乗り越えていってください。
 我ら学園生の成長こそ、平和の前進です。
 我ら学園生の勇気と信頼のスクラムこそ、地球の未来を照らす希望の太陽なのであります。
 私も、毎日毎日、愛する学園生の歌声を生命に響かせながら、一人ひとりの健康と無事故、栄光勝利を祈っています。風邪などひかないように! 元気で!(大拍手)