〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第12巻 解説編 2019年10月23日

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第12巻 解説編 2019年10月23日

紙上講座 池田主任副会長
ポイント
①対話が持つ力
②青年育成の要諦
③学園創立の意義
東京・小平市創価学園。2017年4月、創立者の池田先生が香峯子夫人と共に訪問した折、撮影した。第12巻の「栄光」の章では、学園創立の歴史がつづられている

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第12巻の「解説編」。池田博正主任副会長の紙上講座とともに、同巻につづられた珠玉の名言を紹介する。次回は、第13巻の「基礎資料編」を11月6日付に掲載予定。(第12巻の「基礎資料編」は10月2日付、「名場面編」は9日付、「御書編」は16日付に掲載)

 小説『新・人間革命』第12巻の「愛郷」の章では、打ち続く地震の中、互いに支え合いながら、苦難に立ち向かう長野・松代の同志の姿が描かれています。物的な被害と同時に、精神的な被害も拡大する中、同志は励ましのネットワークを広げていきました。
 先日の台風19号は、各地で甚大な被害をもたらしました。被災された方々に心からお見舞い申し上げるとともに、お一人お一人の一日も早い生活再建、被災地の復旧・復興を、真剣に祈ってまいりたいと思います。
 ◇ 
 第12巻は、2001年(平成13年)4月20日から、連載が始まりました。21世紀が開幕して最初の連載でした。連載とともに、私たちは21世紀の広布前進のリズムを刻んできました。
 「新緑」の章は、山本伸一の第3代会長就任7周年となる、1967年(昭和42年)5月3日の本部総会の場面から書き起こされています。
 席上、伸一は「これからの七年は、これまでの学会創立以来の歴史よりも、さらに重要であり、広宣流布達成の勝負を決し、基礎を築く七年間であると思います」(12ページ)と語りました。
 伸一が会長に就任した60年(同35年)以降の7年間で、学会は140万世帯から625万世帯となり、支部数も61から国内だけで3393までに飛躍しました。
 こうした広布伸展の中、伸一は方面にモットーを示していきます。四国の「楽土建設の革命児たれ」をはじめ、「人材の牙城・東北たれ」など、次々と発表(202ページ)。それらは今、各地の伝統精神となっています。
 モットーは、地域に誇りを持ち、今いる場所で使命を果たす大切さを訴えたものです。“広布達成の基礎を築く”前進の時に、伸一は「地域広布」の大切さを改めて示したのです。
 また、67年10月、彼はクーデンホーフ・カレルギー伯爵と会見し、「文明間対話」を開始しています。
 「天舞」の章に、「世界平和を希求し、その方途を懸命に探求する伯爵は、まさに、彼にとって“同志”にほかならなかった」(278ページ)と記されています。伸一にとって、目的を共有し、同じ心で進む人は、宗教の違い等に関係なく「同志」でした。だからこそ、伸一の対話には、相手への尊敬があり、魂の共鳴が広がり、堅固な心と心の絆が結ばれていくのです。
 同章には、「相互理解といっても、また、友情といっても、それは、直接会って、語り合うことから始まる」(274ページ)とあります。これこそ、対話が持つ力です。
 世界平和は、身近な一人と友情を育んでいくことから始まります。地域で対話の輪を広げる私たちの運動の意義は、ますます大きくなっています。

人生を重ね合わせる

 「広宣流布は青年部の手で、必ず成し遂げていかなくてはならない」(135ページ)――これが、青年部に対する伸一の一貫した思いです。
 「新緑」の章で、青年育成の要諦が4点挙げられています。
 1点目は「自分以上の人材にしようという強い一念をもち、伸び伸びと育てていくこと」(40ページ)。
 2点目は「広宣流布のリーダーとしての考え方や行動などの基本を教え、しっかりと、身につけさせること」(41ページ)。
 3点目は「実際に仕事を任せ、活躍の舞台を与えること」(同ページ)。
 4点目は「悩みを信心のバネにしていくように励ますこと」(42ページ)です。
 この4点は、青年育成の普遍の方程式です。
 第12巻では、海外で奮闘する青年をはじめ、東京文化祭に出演した男女青年部の苦闘が詳細に描かれています。
 それらは、決して過去の物語ではありません。仕事の行き詰まりや病気など、さまざまな悩みと格闘する姿を通して、同じ苦境にある今の青年への励ましなのです。
 伸一は青年たちに対して、「互いに人を頼るのではなく、皆が一人立たなければならない」(63ページ)と語り、「それぞれが広布の主役であることを自覚し、信心のヒーロー、ヒロインとして、果敢なる挑戦のドラマを」(64ページ)と望んでいます。
 このエールもまた、今の青年に送られたものにほかなりません。インドをはじめ、海外の青年部も今、伸一と自身の人生を重ね合わせ、『新・人間革命』の研さんに取り組んでいます。『新・人間革命』に記されたシーンを、“人ごと”ではなく、“わがこと”として捉え、行動していく。その求道心こそ、自身の成長の源泉です。

先師を宣揚する戦い

 今年の「11・18」は、創価教育の父・牧口常三郎先生の殉教75年に当たります。
 2017年、ブラジル創価学園に「高校の部」が開設されるなど、創価教育の光は今、世界を照らしています。
 「栄光」の章では、創価学園(中学校・高校)創立の意義がつづられています。
 創価学園の建設は、伸一にとって、「先師・牧口常三郎の教育思想と正義を宣揚する、第三代会長としての戦い」(321ページ)であり、恩師・戸田城聖先生から託された構想でした。
 創価学園の「創立記念日」は、牧口先生の祥月命日である11月18日です。つまり、学園の創立は、「牧口先生の教育思想を宣揚し、継承していく」との誓いが込められているのです。
 学園の開校時、伸一は40歳でした。牧口先生と戸田先生は29歳の年齢差があり、戸田先生と伸一は28歳の差でした。伸一は、学園1期生と自らが、同じほどの年の差であることに、不思議な感慨を覚えます。
 翌68年7月17日、学園の第2回「栄光祭」の席上、伸一は万感の思いを語ります。「諸君は、今の私と、ほぼ同じ年代に、二十一世紀を迎えることになる」(384ページ)、「二〇〇一年を楽しみにして、諸君のために道を開き、陰ながら諸君を見守っていきます。それが、私の最大の喜びであるし、私の人生です」(385ページ)
 伸一の思いを受け、学園生は21世紀へ飛翔を開始していきます。
 「栄光」の章は、2001年9月の「創価学園二十一世紀大会」で締めくくられています。その場面が聖教に掲載されたのは、大会が行われた、わずか3カ月後でした。
 卒業生からは、医師や弁護士、公認会計士など、社会の各分野で活躍する人材が誕生しています。牧口先生、戸田先生の構想を継ぎ、伸一がまいた創価教育の種は、21世紀の今、大きく花開いています。

名言集

●人生の道
 人生の道は、人それぞれであり、さまざまな生き方がある。しかし、広宣流布の大使命に生き抜くならば、いかなる道を進もうが、最も自身を輝かせ、人生の勝者となることは絶対に間違いない。(「新緑」の章、38ページ)

●今日を勝て
 昨日、しくじったならば、今日、勝てばよい。今日、負けたなら、明日は必ず勝つ。そして、昨日も勝ち、今日も勝ったならば、勝ち続けていくことです。(「愛郷」の章、158ページ)

●文化は人間性の発露
 文化は、人間性の発露である。ゆえに、優れた文化を創造するには、まず、人間の精神、生命を耕し、豊かな人間性の土壌を培うことである。そして、それこそが宗教の使命といえる。(「天舞」の章、200ページ)

●世界の平和
 世界の平和とは、与えられるものではない。人間が、人間自身の力と英知で、創造していくものだ。(「天舞」の章、265ページ)

●青春時代
 青春時代を生きるうえで大事なことは、自分の弱さに負けたり、引きずられたりしないで、自分に挑戦していくことなんです。自分を制し、自分に打ち勝つことが、いっさいに勝利していく要諦であることを、忘れないでください。(「栄光」の章、338ページ) 

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。

 【題字のイラスト】間瀬健治