小説「新・人間革命」に学ぶ 第13巻 御書編 2019年11月20日

小説「新・人間革命」に学ぶ 第13巻 御書編 2019年11月20日

  • 連載〈世界広布の大道〉

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第13巻の「御書編」。小説で引用された御書、コラム「ここにフォーカス」を紹介する。

師弟を結ぶのは“戦う心”
御文

 御身は佐渡の国にをはせども心は此の国に来れり
 (御書1316ページ、千日尼御前御返事)

通解

 あなたの身は佐渡の国にいらっしゃっても、心はこの国(身延)に来ているのです。

小説の場面から

 <1968年(昭和43年)9月、山本伸一は北海道の稚内へ。最北端の地で奮闘する同志に励ましを送る>

 稚内地域は、日本の最北端にあり、幹部の指導の手も、あまり入らぬところから、普段は、取り残されたような寂しさを感じながら、活動しているメンバーも少なくなかった。
 実は、伸一の指導の眼目は、その心の雲を破ることにあったといってよい。
 (中略)
 伸一は、「御身は佐渡の国にをはせども心は此の国に来れり」の御文から、こう訴えた。
 「佐渡という山海を遠く隔てた地にあっても、強い求道心の千日尼の一念は、大聖人と共にあった。地理的な距離と、精神の距離とは、全く別です。
 どんなに遠く離れた地にあっても、自分がいる限り、ここを絶対に広宣流布してみせる、人びとを幸福にしてみせると決意し、堂々と戦いゆく人は、心は大聖人と共にあります。
 また、それが、学会精神であり、本部に直結した信心といえます。
 反対に、東京に住んでいようが、あるいは、学会本部にいようが、革命精神を失い、戦いを忘れるならば、精神は最も遠く離れています。
 私も真剣です。
 広布に燃える稚内の皆さんとは、同じ心で、最も強く結ばれています」
 (「北斗」の章、149~150ページ)

魔を人間革命への飛躍台に
御文

 我を損ずる国主等をば最初に之を導かん
 (御書509ページ、顕仏未来記)

通解

 自分を迫害する国主等を最初に化導してあげよう。

小説の場面から

 <山本伸一は、学会に対する迫害が続く奄美大島へ向かう派遣幹部に、“魔”の本質について語る>

 「人間は、魔の働きをすることもあれば、諸天善神の働きをすることもあります。
 また、一つの現象が魔となるのか、人間革命への飛躍台になるのかは、自分の一念の問題です。
 大弾圧が起こっても、御書の仰せ通りであると確信を深め、歓喜する人もいる。逆に、功徳を受け、生活が豊かになったことで、真剣に信心に励まなくなる人もいる。
 さらに、戸田先生の時代から、師匠の厳愛の指導に怨嫉し、反逆していく者もいました。結局、外の世界のすべての現象は、魔が生ずる契機にすぎず、魔は己心に宿っているんです」
 (中略)
 伸一は、彼方を仰ぐように、目を細めて言った。(中略)
 「大聖人は『我を損ずる国主等をば最初に之を導かん』と仰せです。自分を迫害した権力者たちを、最初に救おうという、この御境涯に連なれるかどうかです。(中略)
 奄美の同志も、その考えに立って、人びとを大きく包容し、皆の幸福を願いながら、仲良く進んでいってほしいんです。
 奄美のこれからの戦いとは、信頼を勝ち取ることです。そのための武器は誠実な対話です。さらに、社会にあって一人ひとりが、粘り強く社会貢献の実証を示していくことです」
 (「光城」の章、242~243ページ)

ここにフォーカス/五つの段階

 「光城」の章で、インドの独立運動の指導者マハトマ・ガンジーが語った、立派な運動が経る五つの段階が示されています。①無関心②嘲笑③非難④抑圧⑤尊敬です。
 ガンジーはさらに、抑圧から尊敬へと至る秘訣を、「誠実」と述べています。
 同章では、1967年(昭和42年)に奄美大島の村で起こった、学会への迫害の歴史が記されています。
 村の有力者らによって、学会員は村八分にされ、学会撲滅を叫ぶデモまで行われます。公明党が躍進したことで、支援団体である学会を敵視したのです。
 山本伸一は、弾圧の要因について、“学会の真実を知らないがゆえの誤解”と結論し、「憎み合うことは、決して信仰者の本義ではありません。皆と仲良くすることが大切です」と伝言を託します。68年11月の奄美訪問では、「奄美を日本の広宣流布の理想郷に」と呼び掛けました。
 伸一の励ましを胸に、奄美の同志は、対話を重ね、地域貢献に取り組んでいきました。21世紀の今、奄美では信頼の輪が大きく広がっています。すべての居住世帯が、本紙を購読した集落も誕生しました。
 いかなる抑圧があろうと、誠実を貫いていくならば、必ず勝利の道は開かれる――奄美の同志の足跡は、広布史に不滅の光彩を放っています。

 【挿絵】内田健一郎 【題字のイラスト】間瀬健治