小説「新・人間革命」に学ぶ 御書編 第14巻 2019年12月18日

小説「新・人間革命」に学ぶ 御書編 第14巻 2019年12月18日

  • 連載〈世界広布の大道〉
イラスト・間瀬健治
イラスト・間瀬健治

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第14巻の「御書編」。小説で引用された御書、コラム「ここにフォーカス」を紹介する。挿絵は内田健一郎

難は生命を鍛える研磨剤
御文

 我並びに我が弟子・諸難ありとも疑う心なくば自然に仏界にいたるべし、天の加護なき事を疑はざれ現世の安穏ならざる事をなげかざれ、我が弟子に朝夕教えしかども・疑いを・をこして皆すてけんつたなき者のならひは約束せし事を・まことの時はわするるなるべし(御書234ページ、開目抄)

通解

 私と私の弟子は、多くの難があろうとも、疑う心を起こさなければ、自然に仏界に至るであろう。諸天の加護がないからと、疑ってはならない。現世が安穏でないことを嘆いてはならない。私の弟子に朝に夕に教えてきたが、難にあって疑いを起こし、みな退転してしまったようである。愚かな者の習いは、約束したことをまことの時には忘れるのである。

小説の場面から

 <1969年(昭和44年)12月、山本伸一は大阪から三重の松阪会館へ。「開目抄」の一節を拝して指導した>

 「『いざという時』にどうするか。実は、その時にこそ、日ごろの信心が表れるんです。(中略)日々、忍耐強く、黙々と、水の流れるように信心に励むことです。自分の生命を、磨き、鍛え抜いて、信心への絶対の確信を培っておくことです。それができてこそ、大事な時に、大きな力が出せるんです」
 一人ひとりの決意を促すように、伸一は語っていった。
 「では、『いざという時』とは、どういう時をいうのか――。個人にとっては、自分や家族が大病にかかったとか、不慮の事故、事業の倒産に遭遇するなどといった、一大事の時がそうでしょう。これは、自分の過去遠遠劫からの宿業が出たことであり、まさに宿命転換のチャンスなんです。
 また、信心を反対されたりすることも、『いざという時』です。さらに、学会が法難を受けるなど、大変な事態に陥った時です。
 幸福を築くには、何があっても崩れることのない、金剛不壊のわが生命をつくり、輝かせていく以外にない。そして、難こそが、生命を磨き鍛える最高の研磨剤なんです。
 したがって、大難の時こそ、自身の宿命転換、境涯革命の絶好の時といえる。ゆえに、勇んで難に挑む、勇気がなければならない。臆病であっては絶対になりません」(「烈風」の章、228~229ページ)

聖教の発展を心に期して
御文

 仏は文字に依って衆生を度し給うなり(御書153ページ、蓮盛抄)

通解

 仏は文字によって衆生を救われるのである。

小説の場面から

 伸一は、会長に就任してからの、この十年余りの間、いつも、聖教新聞のことが頭から離れなかった。
 彼の一日は、妻の峯子とともに、配達員等の無事故を懸命に祈り、インクの匂いも新しい、届いたばかりの新聞に、くまなく目を通すことから始まるのである。
 伸一は、朝、聖教新聞を目にすると、すぐに翌日の紙面のことを考えた。
 “明日の一面のトップはなんだろうか”“社説は何を論ずるのだろうか”“どんな記事があるのだろうか”……。
 戸田城聖が魂を注いでつくり上げた新聞を大発展させていくことが、自分の責任であり、義務であると、彼は決めていたのである。
 だから、率直に、聖教新聞についてアドバイスをすることもあった。また、編集部から寄稿の要請があれば、どんなに多忙ななかでも、懸命に原稿を書いた。(中略)
 日蓮大聖人は、「仏は文字に依って衆生を度し給うなり」と仰せだが、仏法の哲理を、人びとに正しく伝え抜いていくうえでも、聖教新聞の担う役割は極めて大きい。
 さらに、現代は情報が氾濫しており、ともすれば、その情報の洪水に押し流されて、自らがものを考え、自身の価値観を確立できないでいることが少なくない。
 それだけに、情報を見極める哲学の“眼”をもつことが極めて重要になる。そのための新聞が、聖教新聞であるといってよい。(「大河」の章、365~366ページ)

ここにフォーカス/学会の強さの源泉

 1969年(昭和44年)から70年にかけて、学会は激しい非難にさらされました。学会批判書の著者に、事実に基づいた執筆を要望したことなどが、言論弾圧とされたのです。
 評論家の田原総一朗氏は、著書『創価学会』(毎日新聞出版)の中で、「『言論・出版問題』と呼ばれるようになるこの事件で、創価学会も大きなダメージを受け、間違いなく衰退すると誰もが確信した」「私もその一人である」と記しています。
 氏がそう予測したほど、学会攻撃は、すさまじいものがありました。しかし、その烈風を勝ち越え、学会はさらに発展を遂げていきます。その要因を探ろうと、「言論・出版問題」の後、氏は多くの婦人部員を取材します。すると皆、こう語ったと述べています。「私たち一人ひとりが池田先生とつながっている」。この「師弟の絆」こそ、学会の強さの源泉にほかなりません。
 「言論・出版問題」の渦中、伸一は若き人材を薫陶していきます。彼は記者会見で宣言します。「学会がどうなるか、二十一世紀を見てください。社会に大きく貢献する人材が必ず陸続と育つでしょう。その時が、私の勝負です!」
 21世紀の今、伸一が手塩にかけて育成した若人は、各界の第一人者として活躍しています。その社会貢献の人材は、二陣、三陣と続き、世界を潤す大河となっています。