小説「新・人間革命」に学ぶ 第14巻 解説編 池田主任副会長の紙上講座 2019年12月25日

小説「新・人間革命」に学ぶ 第14巻 解説編 池田主任副会長の紙上講座 2019年12月25日

  • 連載〈世界広布の大道〉
イラスト・間瀬健治
イラスト・間瀬健治

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第14巻の「解説編」。池田博正主任副会長の紙上講座とともに、同巻につづられた珠玉の名言を紹介する。

紙上講座 池田主任副会長
03:59
ポイント
①渓流から大河へ
②主体者の自覚
③師と同じ心で

 『新・人間革命』執筆開始より10周年となった2003年(平成15年)8月、池田先生は「起稿10周年」と題する随筆を発表しました。その中で、執筆に対する思いを記されています。

 「私の胸には、言論の闘争の決意がたぎっている。広宣流布の大道は、今つくるしかないからだ」

 「『真実』を明確に書き残すことが、未来の人びとの明鏡となる」

 それから15年が経過した昨年8月、先生は全30巻の執筆を終えられ、私たちに「世界広布の大道」を示してくださったのです。

 この随筆は、第14巻「大河」の章の連載中に書かれたものでした。同章は、1970年(昭和45年)5月3日、山本伸一の第3代会長就任10周年となる本部総会の場面から始まります。

 その1カ月前に行われた戸田先生の十三回忌法要で、伸一は、学会が750万世帯を達成したことを述べ、「広宣流布の流れは、遂に渓流より大河の流れとなりました」(287ページ)と、恩師に報告します。「広宣流布の波が広がり、人間主義に目覚めた民衆勢力が台頭し、時代の転換点を迎えた」(288ページ)のです。

 この転換期に起こったのが、「言論・出版問題」でした。学会批判書を書いた著者に対して、学会の幹部が事実に基づく執筆を要望したことを、言論弾圧として騒ぎ立てたのです。それを口実に、政党や宗教勢力が、学会攻撃の集中砲火を浴びせました。

 「言論・出版問題」は、「伸一の会長就任以来、初めての大試練」(293ページ)でした。しかし、伸一は「最も理想的な社会の模範となる創価学会をつくろう」(同ページ)という決意を一段と深くします。障魔の嵐を、「未来への新たな大発展の飛躍台」(同ページ)としていきました。

 試練に敢然と立ち向かう勇気を奮い起こす時、広布を阻む逆風を、追い風に転じることができます。「烈風に勇み立つ」精神で前進し続けてきたところに、「学会の強さがある」(253ページ)のです。

流れそれ自体

 「言論・出版問題」の渦中から、21世紀の広布の未来を見据え、伸一は布石を打っていきます。その一つが、時代に即応した組織改革です。

 70年5月3日の本部総会で、伸一は「広宣流布は、流れの到達点ではなく、流れそれ自体であり、生きた仏法の、社会への脈動」(298ページ)と語り、何か終着点があるかのような広宣流布観を一変させます。

 そして、「社会に信頼され、親しまれる学会」(同ページ)をモットーに前進することを呼び掛け、「地域社会と密接なつながりをもち、社会に大きく貢献していく意味」(305ページ)から、地域を基盤としたブロック組織へ移行することを発表します。それまで、学会の組織は、居住地と関係なく、入会した会員は紹介者と同じ組織に所属し、活動することを主軸としてきました。その分、団結は強いものがありました。

 それに比べて、ブロック組織は、「人間関係を深めることの難しさ」(306ページ)が最大の課題でした。しかし、伸一は、現代社会が抱える人間の孤立化という問題を乗り越えるために、「学会員が中心になって、地域社会に、人間と人間の、強い連帯のネットワークをつくり上げなければならない」(同ページ)と考えていました。ブロック組織への移行は、地域に開かれた学会の組織を築くためであり、社会の未来を開くためでもあったのです。

 この新しい段階に当たって、伸一が憂慮したのは、皆の一念の改革がなされていくか、ということでした。その「一念の改革」とは、「一人ひとりが『自分こそが学会の命運を担い、広宣流布を推進する主体者である』との、自覚に立つこと」(310ページ)であり、「会長の伸一と、同じ決意、同じ責任感に立つこと」(311ページ)です。

 この「主体者の自覚」にこそ、「すべての活動の成否も、勝敗の決め手もある」(同ページ)からです。

太陽に照らされた緑の庭園。その向こうに、青い海が広がる。池田先生が和歌山・白浜町の関西研修道場でシャッターを切った(1984年6月)。この訪問の折、先生は和歌山駅で少年少女合唱団のメンバーを激励。「はればれと 天の歌声 父祈る」と詠んだ
太陽に照らされた緑の庭園。その向こうに、青い海が広がる。池田先生が和歌山・白浜町の関西研修道場でシャッターを切った(1984年6月)。この訪問の折、先生は和歌山駅で少年少女合唱団のメンバーを激励。「はればれと 天の歌声 父祈る」と詠んだ
ありのままを語る

 烈風が吹き荒れる中、伸一が打ったもう一つの布石が人材育成――特に未来部への激励です。

 悪を許さぬ、純粋な正義の心が失われてしまえば、「『大河の時代』は、濁流の時代」(293ページ)と化してしまいます。ゆえに、彼は、若い世代の中核となる人材育成に精魂を注ぎます。

 箱根の研修所で行われた、未来部の代表メンバーの研修会で、伸一はこの研修所が、学会の歴史の中で、どんな意味を持っているかを語ります。

 参加者の中には、小学生もいました。しかし、「広布後継の指導者になる使命をもった人」(322ページ)として、学会の真実の歴史を、ありのままに語っていきます。

 さらに、皆の質問に答え、人間としていかに生きるかを訴えます。「こちらが真剣に語ったことは、しっかり受け止められるはずである」(332ページ)と信じて、メンバーの胸中に成長の種子を蒔いていきました。

 その後も、伸一の未来部への励ましは続きます。ある時には、「君が山本伸一なんだ。君が会長なんだ。私の分身なんだ。自分がいる限り大丈夫だと言えるようになっていきなさい」(352ページ)と万感の期待を語っています。

 メンバーは今、社会のさまざまな分野で活躍しています。その「弟子の勝利」(353ページ)は、伸一の「厳たる勝利の証」(同ページ)でもありました。

 池田先生は自らの手で未来部員を本物の人材へと育て、現在の世界広布新時代を開かれました。師匠の闘争を受け継ぎ、次の50年、100年の広布の未来を開く人材を育てていくのは、私たちです。

 「烈風」の章に、1969年(昭和44年)12月、伸一が高熱を押して出席した、和歌山の幹部会のことがつづられています。その50周年の佳節を記念する和歌山の大会が先日、50年前と同じ会場で開催されました。

 この大会で、未来部のメンバーが合唱を披露しました。大切なのは、当日へ向け、練習会を重ねる中で、家族や同志が未来部のメンバーに、和歌山広布史などを通して、信心の大切さ、師匠を持つ人生の素晴らしさを語っていったということです。

 明「前進・人材の年」は、「会長就任60周年」「学会創立90周年」と幾重にも意義を刻む年です。先日、先生は「(学会創立)100周年へ向かう10年は、人類にとって重大な分岐点となる10年である」と述べられました。師匠と同じ心で、次代の学会を担う人材をはぐくみ、万代にわたる広布の流れを開いていこうではありませんか。

音楽隊・鼓笛隊合同演奏会で、池田先生が鼓笛隊のメンバーを励ます。「使命」の章では鼓笛隊の歴史が記されている(2002年11月17日、創価大学池田記念講堂で)
音楽隊・鼓笛隊合同演奏会で、池田先生が鼓笛隊のメンバーを励ます。「使命」の章では鼓笛隊の歴史が記されている(2002年11月17日、創価大学池田記念講堂で)
名言集
●宗教の生命

 布教は、宗教の生命であります。布教なき宗教は、もはや“死せる宗教”であります。(「智勇」の章、8ページ)

●生の歓喜と躍動

 平和とは、単に戦争がない状態をいうのではなく、人と人とが信頼に結ばれ、生の歓喜と躍動、希望に満ちあふれていなければならない。(「使命」の章、127ページ)

●人間のため

 「広宣流布」とは、文芸も、教育も、政治も、すべてを人間のためのものとして蘇らせる、生命復興の戦いなのである。(「使命」の章、175ページ)

●強い決意と真剣さ

 大ざっぱであったり、漏れがあるというのは、全責任を担って立つ真剣さの欠如といってよい。絶対に失敗は許されないとの強い決意をもち、真剣であれば、自ずから緻密になるものだ。(「烈風」の章、192ページ)

●前進の積み重ね

 歴史的な壮挙を成し遂げるといっても、その一歩一歩は、決して華やかなものではない。むしろ地道な、誰にも気づかれない作業である場合がほとんどです。だが、その前進の積み重ねが、時代を転換していく力なんです。(「大河」の章、342ページ)