〈9・8「日中国交正常化提言」50周年記念特集〉㊤ 東京大学公共政策大学院 高原明生院長 2018年9月7日

〈9・8「日中国交正常化提言」50周年記念特集〉㊤ 東京大学公共政策大学院 高原明生院長 2018年9月7日

「実事求是(事実に基づいて真理を求める)」精神で
国民同士の結びつきを広げ両国関係のさらなる発展を
 

 私は、日中関係を考える上で、二つの観点が大事だと思っています。
 まず、関係を一つの側面だけに注目せず、総合的な観点をもって判断することです。例えば安全保障だけ、あるいは経済だけではなく、あらゆることを総合して判断しないと、現実を見誤る恐れがあります。
 そして、自国の実情をよく把握することです。
 日中双方の中国研究者、あるいは日本研究者は、相手国を深く研究しますが、自国のことがよく分からない場合が多々あります。
 私自身も、中国の外交については比較的詳しいですが、日本の政策に精通していない面もあります。
 当然、両国の相互理解は大事ですが、相手国だけでなく自国の実像を正確に理解し、伝えていかなくてはなりません。日中の研究者は、互いに協力し合うことが大事でしょう。
 感情に流されるのではなく、「実事求是」(事実に基づいて物事の真理を求める)の精神に立ち、研究を進めることが必要です。
 問題を平和的に、ルールにのっとって解決することは、2度の大戦を経験した人類の大事な教訓です。
 東アジアにおいても、どのような秩序を築くのかというビジョン、目標を、各国が共有することが必要です。日中両国は、東シナ海を「平和、協力、友好の海」にすること、東アジアの地域協力を進め、一体化のプロセスを推進することを、何度も確認し合っています。
 また、秩序を支える規範についても、20年前に当時の江沢民国家主席が来日した際には、「人権の普遍性を確認し、各国は相互交流を通じて共通認識を増進し、相違点を減らす」ことで合意。そして10年前には胡錦濤主席(当時)が来日し、「基本的かつ普遍的価値の一層の理解と追求のために緊密に協力する」との合意がなされました。
 こうした両国の合意は、これからの日中関係を築く上で、とても重要な規範を提供しています。
 池田名誉会長の日中国交正常化提言は、歴史的であるだけでなく、現代においても意義を有しています。
 提言の核となっているのは、アジアの繁栄と世界平和の実現という共通目標です。そのために日中友好が非常に重要であるという点は、今日においても全く変わっていません。当時と異なる点は、中国が大国として成長を遂げた点でしょう。アジアや世界の平和に、中国が積極的な役割を果たしていくことを求めているという意味においても、大事な提言です。
 創価学会をはじめ、多くの友好団体が日中の民間交流を進めてきました。一方で、中国における民間団体は半官半民でもあり、日本と異なるところもあります。
 ですので、中国の国民といかに交流を深めていくかについては当然、さまざまな課題があります。しかし、だからこそ、両国関係を発展させるために、国民同士の結びつきを拡大させる努力を重ねることは、とても重要なのです。(談)