〈親子で学ぶ仏教 ココロの宝箱〉 白いカメの恩返し 2018年10月28日

〈親子で学ぶ仏教 ココロの宝箱〉 白いカメの恩返し 2018年10月28日

 
 

 むかし。中国に、モウホウという、心やさしい少年がいました。
 ある日、モウホウが川のほとりを歩いていると、りょうしが、あみにかかった一匹の小さな白いカメを、売っていました。
 あしをバタバタさせるカメを見て、モウホウは、かわいそうに思いましたが、お金がありません。そこで、自分の着物をりょうしにわたし、カメを家につれて帰りました。せっせとエサを食べさせると、白いカメは、少しずつ大きくなりました。
 「もっと、大きくなるんだよ!」
 ある日、モウホウは、カメを大きな川へ連れていくと、そっと逃がしてあげました。
 それから、ながい年月がたちました。
 モウホウは、将軍になりました。ある時、お城をまもっていると、たくさんの敵にかこまれ、やむをえず、モウホウたちは、逃げ出しました。
 ところが、その途中、大きな川にぶつかりました。もう、ぜったいぜつめいです。
 重いヨロイをつけた兵士たちは、つぎつぎと川の中へ、しずんでいきます。
 モウホウも、思いきって川へとびこみました。
 ところが、体がしずみません。白い大きな岩のようなものに、乗っかったのです。
 さらに、岩はうごきだし、みるみる、モウホウを向こう岸まで、つれていってくれたのです。
 なんと、岩と見えたのは、たくましいコウラを持った、白い大きなカメでした!
 カメは、「私は、りょうしからモウホウさまに助けられた、小さなみすぼらしい白いカメです」と、話しはじめました。
 「大きな川の中で、私もつよく、大きくなれました。でも、いつもモウホウさまのご恩は、わすれませんでした。きょうやっと、ご恩返しができ、こんなうれしいことはありません!」
 そう言うと、白い大きなカメは、波しぶきをあげて、川の中へもどっていきました。
 恩にむくいることの大切さを、白いカメから学んだモウホウは、さらにりっぱな将軍になったのです。       ◇ ◆ ◇
 ぶん・あらやゆきお
 え ・奥村かよこ

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 この説話に登場する毛宝は、中国・南北朝時代(3世紀~6世紀)の武将とされます。白亀と毛宝の話は、中国の故事説話集「蒙求」などに出てきます。
 日蓮大聖人は、「報恩抄」でこの故事を引き、「毛宝に助けられた白亀も、戦に敗れた毛宝を背に乗せて助け、その恩に報じた。畜生すらかくのごとくである。況や人間においてをやである」(御書293ページ、趣旨)と仰せになり、報恩こそ人間としての根本規範であると、教えられています。
 恩を知り、恩に報いることは、人間として最も尊い生き方です。
 私たちはこの説話を通して、日々、周囲に感謝しながら、恩に報いる生き方の大切さを学んでいきたいものです。