〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第9巻 基礎資料編 2019年6月5日

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第9巻 基礎資料編 2019年6月5日

物語の時期 1964年(昭和39年)4月1日~12月末
鳳雛」の章
        

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第9巻の「基礎資料編」。各章のあらすじ等を紹介する。次回の「名場面編」は11日(火)付、「御書編」は19日付、「解説編」は26日付の予定。

「新時代」の章

 1964年(昭和39年)4月、山本伸一は、恩師・戸田城聖の七回忌を一切に大勝利して迎え、学会が建立寄進した大客殿では、その法要が2日間にわたって営まれた。席上、伸一は、戸田の出獄後の歩みをつづる小説『人間革命』の執筆構想を発表。また、いよいよ仏法を本格的に社会に展開していく「本門の時代」に入ったことを宣言した。
 5月3日の本部総会では、次の7年間の目標として、正本堂の建立、600万世帯の達成などを発表する。「新時代」の船出の帆は上がったのである。
 12日、伸一は、アジア、オセアニアへと出発。オーストラリアでは、新たにメルボルン支部を結成し、広布に走る同志を全力で励ます。この頃、英語圏を中心に、各国で、学会への誤解と偏見に基づく報道がなされ、その影響が広がっていた。彼は、現地のテレビ局のインタビューに応じ、自ら学会の真実を訴える。
 インドからの帰国後、同国のネルー首相死去の悲報に接した伸一は、人類の融合と平和の哲学を、一日も早く、世界に流布しなければならないと誓うのであった。

鳳雛」の章

 6月1日、青年部に新たに、高等部と中等部を設置することが発表される。伸一は7日、東京第二本部の男子高等部の結成式に出席する。65年(昭和40年)1月15日には、中等部が結成され、さらに、9月23日、少年部が誕生する。彼は、学会の未来を担う、大事なリーダーとして、まず、高等部員の育成に全力を傾けた。
 10月1日夕刻、学会本部で、首都圏の高等部の部長276人が参加し、部旗の授与式が行われた。伸一は、次代の指導者たる「鳳雛」たち一人一人に、部旗を手渡し、励ましの言葉をかけ続けた。
 11月号の「大白蓮華」の巻頭言に、高等部への指針「鳳雛よ未来に羽ばたけ」を書き贈る。文面には「勉学第一」で、新しき世紀への飛翔を願う伸一の熱い思いがあふれていた。
 66年(同41年)1月8日から、毎月、高等部の代表に御書講義を開始。一期生の講義修了時には、受講メンバーで「鳳雛会」(男子)、「鳳雛グループ」(女子)を結成し、その後も期を重ねることになる。伸一の、全精魂を注いでの激励によって、21世紀を潤す創価後継の大河が開かれていった。

「光彩」の章

 「本門の時代」の先駆けとなったのは、青年部であった。64年(昭和39年)6月、女子部は部員100万を達成。学生部も6月末の学生部総会をめざし、部員数5万人に。総会に出席した伸一は、待望の「創価大学」の設立構想を発表。7月には、男子部が年間目標である部員150万をいち早く達成する。
 伸一は10月、東南アジア、中東、欧州を歴訪。各地で出会った宝の同志を全力で激励する。
 10月10日、一行はフランスのパリを経て、チェコスロバキアプラハへ。同国は当時、社会主義国であり、伸一が共産圏の国に足を踏み入れるのは初めてだった。翌日、バーツラフ広場などを視察し、ハンガリーブダペストへ向かう。彼は、市民とソ連軍が衝突した「ハンガリー事件」に、心を痛めていた戸田城聖をしのびつつ、人間性を抑圧する社会体制の矛盾について思索を巡らせる。
 その後、パリに戻り、ノルウェーオスロへ。孤軍奮闘する地区部長夫妻を励ます。帰路、彼は、人間の「光彩」に満ちた時代を開くために、人々の生命を磨き輝かせる対話を続ける決意を新たにする。

「衆望」の章

 64年の秋、日本国中が東京オリンピックに沸き返った。幾つもの人間ドラマを織り成した大会の閉会式では、国や民族の区別なく、腕や肩を組み、入り交じって行進する選手たちの姿が。伸一も、その模様を、テレビで見ながら、国家やイデオロギーの違いを超えて、地球民族主義の思想を、全世界に伝えていかねばならないと心に誓う。
 この頃、日本は高度成長のただ中にあった。だが、繁栄の陰で、住宅問題や社会福祉など、生活に直接かかわる環境整備は後回しにされてきた。庶民の声を汲み上げ、民衆を守る政治を実現しようと、11月、「衆望」を担って公明党が結党される。
 12月2日、伸一は、沖縄本部で小説『人間革命』の筆を起こした。最も戦争の辛酸をなめ、人びとが苦悩してきた沖縄から、幸福と平和の波を広げようと思っていたのだ。伸一のペンが走った。
 「戦争ほど、残酷なものはない。戦争ほど、悲惨なものはない。だが、その戦争はまだ、つづいていた……」
 偉大なる師の思想と真実を書き残す使命感と喜びが、彼の胸にたぎっていた。

高・中等部、少年部発足

 〈青年部のリーダーとの語らいで、山本伸一は、広布後継の育成に懸ける思いを語る〉
 「私は、二十一世紀のことを真剣に考えている」「誰が二十一世紀に、本当の学会の精神を伝えていくのか。それは、今の高等部、中等部のメンバーに頼むしかないじゃないか」「大切なのは触発だ。その触発をもたらすには、日々、命を削る思いで、成長を祈ることだ」(「鳳雛」の章、136ページ)

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。

 【挿絵】内田健一郎 【題字のイラスト】間瀬健治