〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第12巻 解説編 2019年10月23日

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第12巻 解説編 2019年10月23日

紙上講座 池田主任副会長
ポイント
①対話が持つ力
②青年育成の要諦
③学園創立の意義
東京・小平市創価学園。2017年4月、創立者の池田先生が香峯子夫人と共に訪問した折、撮影した。第12巻の「栄光」の章では、学園創立の歴史がつづられている

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第12巻の「解説編」。池田博正主任副会長の紙上講座とともに、同巻につづられた珠玉の名言を紹介する。次回は、第13巻の「基礎資料編」を11月6日付に掲載予定。(第12巻の「基礎資料編」は10月2日付、「名場面編」は9日付、「御書編」は16日付に掲載)

 小説『新・人間革命』第12巻の「愛郷」の章では、打ち続く地震の中、互いに支え合いながら、苦難に立ち向かう長野・松代の同志の姿が描かれています。物的な被害と同時に、精神的な被害も拡大する中、同志は励ましのネットワークを広げていきました。
 先日の台風19号は、各地で甚大な被害をもたらしました。被災された方々に心からお見舞い申し上げるとともに、お一人お一人の一日も早い生活再建、被災地の復旧・復興を、真剣に祈ってまいりたいと思います。
 ◇ 
 第12巻は、2001年(平成13年)4月20日から、連載が始まりました。21世紀が開幕して最初の連載でした。連載とともに、私たちは21世紀の広布前進のリズムを刻んできました。
 「新緑」の章は、山本伸一の第3代会長就任7周年となる、1967年(昭和42年)5月3日の本部総会の場面から書き起こされています。
 席上、伸一は「これからの七年は、これまでの学会創立以来の歴史よりも、さらに重要であり、広宣流布達成の勝負を決し、基礎を築く七年間であると思います」(12ページ)と語りました。
 伸一が会長に就任した60年(同35年)以降の7年間で、学会は140万世帯から625万世帯となり、支部数も61から国内だけで3393までに飛躍しました。
 こうした広布伸展の中、伸一は方面にモットーを示していきます。四国の「楽土建設の革命児たれ」をはじめ、「人材の牙城・東北たれ」など、次々と発表(202ページ)。それらは今、各地の伝統精神となっています。
 モットーは、地域に誇りを持ち、今いる場所で使命を果たす大切さを訴えたものです。“広布達成の基礎を築く”前進の時に、伸一は「地域広布」の大切さを改めて示したのです。
 また、67年10月、彼はクーデンホーフ・カレルギー伯爵と会見し、「文明間対話」を開始しています。
 「天舞」の章に、「世界平和を希求し、その方途を懸命に探求する伯爵は、まさに、彼にとって“同志”にほかならなかった」(278ページ)と記されています。伸一にとって、目的を共有し、同じ心で進む人は、宗教の違い等に関係なく「同志」でした。だからこそ、伸一の対話には、相手への尊敬があり、魂の共鳴が広がり、堅固な心と心の絆が結ばれていくのです。
 同章には、「相互理解といっても、また、友情といっても、それは、直接会って、語り合うことから始まる」(274ページ)とあります。これこそ、対話が持つ力です。
 世界平和は、身近な一人と友情を育んでいくことから始まります。地域で対話の輪を広げる私たちの運動の意義は、ますます大きくなっています。

人生を重ね合わせる

 「広宣流布は青年部の手で、必ず成し遂げていかなくてはならない」(135ページ)――これが、青年部に対する伸一の一貫した思いです。
 「新緑」の章で、青年育成の要諦が4点挙げられています。
 1点目は「自分以上の人材にしようという強い一念をもち、伸び伸びと育てていくこと」(40ページ)。
 2点目は「広宣流布のリーダーとしての考え方や行動などの基本を教え、しっかりと、身につけさせること」(41ページ)。
 3点目は「実際に仕事を任せ、活躍の舞台を与えること」(同ページ)。
 4点目は「悩みを信心のバネにしていくように励ますこと」(42ページ)です。
 この4点は、青年育成の普遍の方程式です。
 第12巻では、海外で奮闘する青年をはじめ、東京文化祭に出演した男女青年部の苦闘が詳細に描かれています。
 それらは、決して過去の物語ではありません。仕事の行き詰まりや病気など、さまざまな悩みと格闘する姿を通して、同じ苦境にある今の青年への励ましなのです。
 伸一は青年たちに対して、「互いに人を頼るのではなく、皆が一人立たなければならない」(63ページ)と語り、「それぞれが広布の主役であることを自覚し、信心のヒーロー、ヒロインとして、果敢なる挑戦のドラマを」(64ページ)と望んでいます。
 このエールもまた、今の青年に送られたものにほかなりません。インドをはじめ、海外の青年部も今、伸一と自身の人生を重ね合わせ、『新・人間革命』の研さんに取り組んでいます。『新・人間革命』に記されたシーンを、“人ごと”ではなく、“わがこと”として捉え、行動していく。その求道心こそ、自身の成長の源泉です。

先師を宣揚する戦い

 今年の「11・18」は、創価教育の父・牧口常三郎先生の殉教75年に当たります。
 2017年、ブラジル創価学園に「高校の部」が開設されるなど、創価教育の光は今、世界を照らしています。
 「栄光」の章では、創価学園(中学校・高校)創立の意義がつづられています。
 創価学園の建設は、伸一にとって、「先師・牧口常三郎の教育思想と正義を宣揚する、第三代会長としての戦い」(321ページ)であり、恩師・戸田城聖先生から託された構想でした。
 創価学園の「創立記念日」は、牧口先生の祥月命日である11月18日です。つまり、学園の創立は、「牧口先生の教育思想を宣揚し、継承していく」との誓いが込められているのです。
 学園の開校時、伸一は40歳でした。牧口先生と戸田先生は29歳の年齢差があり、戸田先生と伸一は28歳の差でした。伸一は、学園1期生と自らが、同じほどの年の差であることに、不思議な感慨を覚えます。
 翌68年7月17日、学園の第2回「栄光祭」の席上、伸一は万感の思いを語ります。「諸君は、今の私と、ほぼ同じ年代に、二十一世紀を迎えることになる」(384ページ)、「二〇〇一年を楽しみにして、諸君のために道を開き、陰ながら諸君を見守っていきます。それが、私の最大の喜びであるし、私の人生です」(385ページ)
 伸一の思いを受け、学園生は21世紀へ飛翔を開始していきます。
 「栄光」の章は、2001年9月の「創価学園二十一世紀大会」で締めくくられています。その場面が聖教に掲載されたのは、大会が行われた、わずか3カ月後でした。
 卒業生からは、医師や弁護士、公認会計士など、社会の各分野で活躍する人材が誕生しています。牧口先生、戸田先生の構想を継ぎ、伸一がまいた創価教育の種は、21世紀の今、大きく花開いています。

名言集

●人生の道
 人生の道は、人それぞれであり、さまざまな生き方がある。しかし、広宣流布の大使命に生き抜くならば、いかなる道を進もうが、最も自身を輝かせ、人生の勝者となることは絶対に間違いない。(「新緑」の章、38ページ)

●今日を勝て
 昨日、しくじったならば、今日、勝てばよい。今日、負けたなら、明日は必ず勝つ。そして、昨日も勝ち、今日も勝ったならば、勝ち続けていくことです。(「愛郷」の章、158ページ)

●文化は人間性の発露
 文化は、人間性の発露である。ゆえに、優れた文化を創造するには、まず、人間の精神、生命を耕し、豊かな人間性の土壌を培うことである。そして、それこそが宗教の使命といえる。(「天舞」の章、200ページ)

●世界の平和
 世界の平和とは、与えられるものではない。人間が、人間自身の力と英知で、創造していくものだ。(「天舞」の章、265ページ)

●青春時代
 青春時代を生きるうえで大事なことは、自分の弱さに負けたり、引きずられたりしないで、自分に挑戦していくことなんです。自分を制し、自分に打ち勝つことが、いっさいに勝利していく要諦であることを、忘れないでください。(「栄光」の章、338ページ) 

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。

 【題字のイラスト】間瀬健治

〈座談会 創立90周年を勝ち開く!〉78 各地で新任リーダーが誕生 皆が「いよいよ」の心で前進! 2019年10月21日

〈座談会 創立90周年を勝ち開く!〉78 各地で新任リーダーが誕生 皆が「いよいよ」の心で前進! 2019年10月21日

同苦と励ましが日蓮仏法の魂
〈出席者〉
原田会長
長谷川理事長
永石婦人部長
西方男子部長
大串女子部長
各地で新任のリーダーと共に新出発。皆で生き生きと仏法を語り抜き、一人ももれなく福運あふれる日々を! 崩れざる常楽我浄の大境涯を!(13日、宮崎総県の集い)

 長谷川 全国各地で新しいリーダーが誕生し、清新な息吹で出発しています。

 永石 先生は、新任のリーダーに指導されています。「新しい人も、交代する人も、全部、新しい使命であり、任務であると思って、張り切って戦っていきなさい。一切が、仏になるための仏道修行である。新しく戦っていく人も、若々しく、断じて勝利して、仏になっていくんだ」

 西方 私自身も今、男子部から一切の勝利を開くため、任命をいただいてから「初めの3カ月が勝負」との気概で戦っています。

 原田 先生はまた、次のようにも語られています。「すべての人が元気になり、幸福になり、勝利していく。そのための人事である。学会は、たゆまずに人材を育成していくのである」と。その意味でも、役職を交代する人も、新しい決意で今まで以上に戦っていくことが大切です。

 長谷川 新任の方には当然として、交代する人にもこれまでの健闘をたたえ、励ましを送っていきたいと思います。

 原田 先生は「役職というのは、自分の境涯を開く直道です」ともつづられています。学会のリーダーとして、同志と共に広宣流布に前進することで自身の境涯が大きく開かれることは間違いありません。新任の皆さんだけでなく、全員が「いよいよ」の心で決意も新たに前進してまいりたい。

「必ず蘇生できる」

 長谷川 台風19号があまりにも大きな被害をもたらしています。引き続き、学会本部としても各地と連携を取り、支援と激励に当たってまいります。

 原田 人生の途上では、予期せぬ大きな試練に直面することがあります。そのような苦闘の渦中にいる同志のことを、真剣に祈り、温かな励ましを送っていくのが学会の伝統です。

 永石 このことを私たちは、何度も先生から教えていただいています。

 原田 60年前の1959年9月、愛知、三重県を中心に伊勢湾台風が大規模な被害をもたらしました。池田先生は当時、学会の総務という立場で現地に足を運ばれ、被災した同志に全魂の励ましを送られました。

 西方 その時のことは『新・人間革命』2巻「錬磨」の章に描かれています。先生は「大変なことになりましたが、全国の同志が、再起を願い、お題目を送っています。今が正念場です。見事に信心で乗り越えてください」と友の心に勇気を灯していかれました。

 長谷川 そして「家が壊され、家財が流されても、信心が壊れなければ、必ず蘇生することができます。信心をしっかり貫いていけば、必ず立ち直ることができるんです」と。この大激励を胸に、被災した方々は試練を勝ち越えていったのです。

 原田 先日、私も神奈川、栃木、また、福島には永石婦人部長たちと共に訪問し、被災された方々のお宅に伺いました。私たちも改めて、日蓮仏法の魂である「同苦の祈り」と「真心の励まし」の大切さを深く心に刻み、進んでいきたい。各地のリーダーの方々も、くれぐれもよろしくお願いいたします。今回の台風の被災地の復旧・復興、被災された方々の健康と安穏を皆で祈念してまいりたい。

病に打ち勝つ信心

 永石 各地を訪問させていただく中、ご家族や、中には自身が闘病中の方にも出会います。皆さん、信仰を根本に病魔に立ち向かわれています。

 大串 そうした方々のためにも、「大白蓮華」の連載「世界を照らす太陽の仏法」では、9月号から「健康の世紀へ 福徳長寿の智慧」と題し、先生が講義してくださっています。

 永石 御聖訓には「このやまひは仏の御はからひか」「病によりて道心はをこり候なり」(御書1480ページ)とあります。病も、仏法の眼、信心の眼から見れば深い意味があり、強盛な信心に立つことが大事であると教えられています。

 長谷川 病気自体は生老病死の一つであり、誰もが通ることです。しかし、「病気」と「病魔」は違います。病気のために、絶望したり、生命力を奪われたりすることで、病は「魔」となっていく。反対に「断じて病に打ち勝つ」との決定した一念で祈り戦う時、希望と勝利の軌道が晴れ晴れと開かれていくのです。

 原田 先生は「病を抱えながらも、わが生命を使命のために完全燃焼させながら生きる同志の姿は、自らを最高に輝かせるとともに、多くの人に勇気と希望を送ってくれます。つまり、病気によって自他共の幸福の大道を広々と開いているのです」(10月号)と指導されています。これこそ妙法の偉大な力用です。

 長谷川 家族の誰かが病に直面しても、今こそ一家の宿命転換の時と確信し、皆で題目を唱え抜く。そして、そのご家族に、周囲の同志がしっかり励ましを送り、共に祈っていきたい。

 永石 幼いお子さんが病気になった場合、自分では祈れないこともあります。また、大人であっても、入院中や闘病中は、勤行・唱題することが現実的に難しい時もあります。その上で、「家族や同志の師子吼の題目は、必ず届きます。『いかなる病さはりをなすべきや』(御書1124ページ)です。それを深く強く確信していくことです」(9月号)と先生は指導されています。

 大串 私も、一家で団結して病気に立ち向かうご家族の麗しい姿などに接し、信心のすごさ、学会家族の強さを実感してきました。

 原田 妙法は生老病死という人生の苦を根本的に解決する道を示しています。学会は、この法を弘め、希望と蘇生の光を人々に送ってきました。ともどもに朗々と題目を唱えながら「健康の賢者」として栄光の人生を歩んでいきましょう。

〈池田先生と共に 新時代を築く〉 太陽輝け 無事に包まれ 2019年10月21日

〈池田先生と共に 新時代を築く〉 太陽輝け 無事に包まれ 2019年10月21日

 
 

 我らは、妙法という究極の法則で結ばれている。
 日蓮大聖人は、「題目を唱え奉る音は十方世界にとずかずと云う所なし」(御書808ページ)と仰せである。
 打ち続く豪雨災害で筆舌に尽くせぬ苦労をされている方々に届けと、題目を送る日々である。
 19日には世界聖教会館を再び訪れ、先月の「言論会館」に続いて「言論城の間」で真剣に勤行・唱題を行った。この仏間には、聖教新聞社の常住御本尊が安置されている。
 「大悪をこれば大善きたる」「各各なにをかなげかせ給うべき」(同1300ページ)
 創立の師・牧口常三郎先生は、この御聖訓を拝し、「どんな時、どんな場合でも、それをバネとして、大きく転換していくのだ。必ず転換できる」と激励された。
 後継の創価家族は一段と励まし、支え合って、一切を変毒為薬していきたい。
 * * * 
 「言論城の間」には、私が記した「聖教桜」の書も掛けられてある。
 いかなる試練も越えて、「冬は必ず春となる」(同1253ページ)と、誰人も勝利の桜を爛漫と咲かせてほしい。聖教新聞には、この願いが込められている。
 毎日毎朝、聖教を配達してくださる尊き無冠の友の皆さまに、妻と感謝の祈りを捧げた。寒さが厳しくなる時節、健康と絶対無事故、福徳無量を、いやまして祈念せずにはいられない。
  
 祈るらむ
  君の頭上に
   幸福の
  太陽 輝け
    無事に包まれ
  
 これが私の変わらざる心である。
 * * * 
 聖教新聞に多くの寄稿をしてくださったフランスの美術史家ルネ・ユイグ氏は、ナチスの魔手から人類の美の至宝を守り抜いた「精神の闘士」「文化の闘士」である。現在、そのまなざしを偲ぶ「フランス絵画の精華」展が、東京富士美術館で開催されている。
 ユイグ氏が誇りとする原点は、20代の若さでルーブル美術館の重責を担い、二つの重要な展覧会を任されたことであった。
 若くして、たじろぐほどの責務に挑むことで、どんな困難も克服してみせるという積極果敢な人格になれたと言われるのだ。
 「常に自分自身を超越し、自身以上を目指せ」とは、青年への万感のエールである。
 * * * 
 思えば、阪神・淡路大震災東日本大震災など、未曽有の苦難を乗り越えゆく中で、わが創価の青年たちは不撓不屈の「人間革命」のスクラムを築き広げてくれた。今も被災地で、清掃ボランティア「かたし隊」をはじめ、若き友の奮闘が頼もしい限りである。
 この秋、新しいリーダーが澎湃と躍り出ている。
 聖教は、女性が輝き、多宝の父母が光り、そして青年が躍動する新聞である。
 聖教と共に、さあ、勇気の前進だ! 人材の拡大だ!

〈池田大作先生 四季の励まし〉 女性の声が時代を変える 2019年10月20日  

池田大作先生 四季の励まし〉 女性の声が時代を変える 2019年10月20日

 
 

 人の気持ちに敏感な、
 聡明な女性の会話。
 その力は厚い鉄の
 心の扉をも開く
 力をもっている。
 女性の正義の「声」は、
 人々を動かし、
 時代を変えていく。

 私の心に
 「平和の文化」の原形を
 育んでくれたのは、
 まぎれもなく母であった。
 そして、
 わが師・戸田先生との
 出会いと仏法の信仰が、
 私の平和への熱願を、
 不動の哲学にしたのだ。
 日蓮仏法は教える。
 一個の人間における
 一念の変革から、
 人生も、地域も、社会も、
 世界も、善の方向へ
 変えていけるのだと。
 平和の第一歩は、
 平和が可能だという
 確信である。
 その信念に燃えた
 偉大なピースメーカー
 (平和を創造する人)の
 先駆者であり、
 「女性の世紀」の主役こそ、
 わが創価の母たちである。

 仏法は
 「変毒為薬」の大法である。
 何があろうとも、
 必ず乗り越えていける。
 ゆえに宿命転換の戦いに、
 断じて負けてはならない。
 どんなに
 大変なことがあろうと、
 妙法を唱え、
 仏意仏勅の学会とともに
 生きぬく人は、
 厳として守護され、
 必ずや
 良い方向へ向かっていく。
 所願満足の幸福の軌道を
 歩んでいけることは、
 御聖訓に照らして、
 間違いない。

 私たちには、
 世界を新しくする力が、
 世界を活気づける
 希望の力がある!
 ゆえに、前へ!
 また断固として、
 前へ進むのだ!
 今再び、眼前の現実に
 勇敢に挑みゆくのだ!
 その人が、最高の勝利の
 人間なのである。

 先月28日、池田大作先生ご夫妻が東京・信濃町に竣工した「創価学会 世界聖教会館」を初訪問。その折、池田先生が同会館から「創価世界女性会館」を撮影した。晴れ渡る空に、創価の三色旗が堂々と翻っていた。
 「女性の世紀」の殿堂と輝く創価世界女性会館。先生は2000年(平成12年)9月、同会館を初めて訪れ、「婦人部・女子部の皆さまが、一人も残らず、幸福になられるよう、勝利されるよう、毎日、真剣に祈っています」と真情を語った。
 明年は、この初訪問から20周年。女性の力が世界を変える。その先駆を切るのが創価の女性である。婦人部・女子部の友に最敬礼しつつ、希望と友情の拡大へ心一つに進もう。

10月度「御書講義」の参考 可延定業書 2019年10月19日

  •  10月度「御書講義」の参考 可延定業書 2019年10月19日
御書全集 986ページ 6行目~14行目
編年体御書 1175ページ 6行目~14行目
「戦う心」の源泉が信心
使命の人生を朗らかに

 10月度の「御書講義」では「可延定業書」を学びます。拝読範囲は「去年の十月これに来りて候いしが御所労の事をよくよくなげき申せしなり……一日もいきてをはせば功徳つもるべし、あらをしの命や・をしの命や」です。ここでは、学習の参考として、本抄の背景と大意、さらに理解を深めるための解説を掲載します。

背景と大意

 本抄は、下総国葛飾郡若宮(現在の千葉県市川市)に住む富木常忍の妻・富木尼御前に送られたお手紙です。
 早くから門下の中心的人物として活躍する夫を、懸命に支えていたのが尼御前でした。
 尼御前は、心労からか、症状の重い病を患い、弱気になっていたようです。
 大聖人は、妙法によって、寿命をも延ばすことができると励まされています。
 題号にある「定業」とは、報いの内容や現れる時期が定まっている業のことです。本抄では、特に寿命の意味で用いています。
 本抄の大意ですが、まず、業には定業と不定業があることを示され、定業である寿命でさえも、強盛な信心によって、延ばすことができると仰せです。
 さらに、文証と先例を通し、法華経こそ、あらゆる人の病を癒やす大良薬であり、末法における女性の幸福を約束した経典であることを強調し、病気を治し、長寿を全うするように励まされます。
 医術にすぐれた四条金吾の治療を受けるよう勧められ、その際の心構えに関しても、金吾の性格を踏まえて、こまやかにご指導されています。
 最後に命は、何ものにも代え難い第一の宝であり、一日も長く生きて功徳を積むよう激励され、本抄を結ばれています。
 大聖人の教えのままに実践を貫いた尼御前は、この後、二十数年も寿命を延ばしました。

抜苦与楽の励まし

 身延を訪れた四条金吾から、富木尼御前の病気が心配であることを聞いていた大聖人は、「これにも・なげき入って候」と、“私も心配していました”と、包み込むように同苦されています。師匠の慈愛に、尼御前はどれほど感激したことでしょう。
 さらに、金吾から、“夫の富木常忍が、尼御前を杖や柱のように支えとして頼みにしている”と聞いていると記されています。
 感謝の思いは、人づてであっても、うれしいものです。
 “必要とされている”“大切にされている”と感じた尼御前は、夫を支えるためにも、生き抜かねばならないと思い、病に立ち向かう決意をしたに違いありません。
 “回復を祈っています”等の同志の励ましは、病と闘う友にとって、思いを寄せてくれる存在を実感することになり、それは病の苦しみを和らげてくれるだけでなく、生きる力をも呼び覚ましてくれます。
 創価の励ましの世界は、苦しみを抜き、生きる希望を与えてくれる抜苦与楽(苦を抜き楽を与える)の麗しい絆の世界なのです。

病と向き合う

 四条金吾は、医術にもたけた頼れる門下であり、大聖人が信頼を寄せていました。
 金吾のことを、「極めて負けじ魂の人で、自分の味方(信心の同志)のことを大事に思う人」と記し、尼御前が安心して治療を受けられるように心を砕いています。
 その上で、「身の財(行動すること)を惜しんでいては、この病を治すのは難しいでしょう」と、行動を起こすよう訴えています
 仏法は道理です。ゆえに、大聖人も、当時の医療を、決して否定してはいません。むしろ、尼御前に、治療を受けるように促されています。信心で強じんな生命力を奮い立たせることはもちろん、その上で、具体的に病気を治療していくことが大切なのです。
 不安であればあるほど、診察などを受けるのをちゅうちょしてしまいがちです。悩むだけであれば、問題の先送りであり、病を悪化させることになりかねません。
 肝要なのは、病と真摯に向き合い、勇気をもって、速やかに行動していくことです。祈りが現実の行動に結びついてこそ、状況を好転させることができるのです。

巡り合えた喜び

 「法華経にあわせ給いぬ」と、“妙法に巡り合えた”ことの素晴らしさを教えられています。
 大聖人は尼御前に、今世の使命を思い出させようとされたと拝せます。
 法華経には「仏には値いたてまつることを得難きこと、優曇波羅華の如く、又一眼の亀の浮木の孔に値えるが如ければなり」(657ページ)と記されています。
 今世で大聖人の弟子となり、妙法を受持することができたのは、幸運としか言いようのないことです。変毒為薬、宿命転換の道が、大きく開かれているからです。
 ゆえに、一日でも命を延ばし、今世での使命を果たし抜いて、幸福境涯を確立することを教えられているのです。
 “何のための人生なのか”――根本の大事を忘れることは、病魔に負けた姿ともいえます。逆に、人生の崇高な目的に目覚めれば、病魔を打ち破り、生命の底力を発揮することができます。
 苦しい状況にあったとしても、妙法に巡り合えたこと自体が喜びです。報恩と使命の人生を、朗らかに歩んでいきましょう。

一人の人を大切に

 大聖人は、二人の門下(=四条金吾と富木尼御前)の立場を尊重され、同志と同志が互いに気持ちよく、真心で支え合っていく和合の在り方を教えられたと拝されます。
 それにしても、尼御前が実際に治療に踏み出せるよう、「これほどまでに」と思われるほど、こまやかな配慮を、大聖人はなされています。
 そのお振る舞いから、私たちはあらためて仏法指導者の模範の姿を学びたい。
 「一人の人」を、どこまでも大切に!――その具体的な行動なくして、万人の幸福も、世界の平和もありえないからです。
 「一人の人」のことを、どこまで祈り、励ましていけるか。
 「一人の青年」の成長のために、どこまで心を砕き、道を開いていけるか。
 だれが見ていようがいまいが、その戦いの中にしか、仏法はないのです。

〈池田先生の指針から〉 病魔を打ち破る唱題

 「一日生きる」ことは、それ自体、何ものにも代え難い「光」であり、「価値」であり、「生命の歓喜の讃歌」です。それを奪うことは、宇宙の根本の法則に背く重罪です。
 戸田先生は、「どんな理由があっても、絶対に人を殺してはならない」と厳しく戒めておられました。
 病気に対する姿勢として、大事なことは「おそれず」「あなどらず」です。
 病気になること自体は、決して敗北ではありません。
 仏も「少病少悩」という通り、病気との戦いがあります。
 大切なことは、病気と戦う以前に、「心の次元」で敗れてはならない、という点です。病気に立ち向かっていく「戦う心」の源泉が信心です。ですから、先に拝したように、大聖人は本抄で、まず「心ざしの財」を教えられているのです。
 そのうえで、具体的に治療に励むのは当然です。「信心しているのだから何とかなるだろう」とか、「たいしたことない」と考えるのは、誤った信心の捉え方であり、自身の体への軽視です。「いそぎいそぎ御対治」する行動が大事です。ゆえに、大聖人は「身の財」すなわち行動することを惜しんではいけないと厳しく戒められています。
 「病魔」「死魔」を打ち破る根本の力が、妙法です。「南無妙法蓮華経は師子吼の如し」(御書1124ページ)です。
 大事なのは、「戦う心」と「最高の治療」、そして「生命力」です。なかんずく、心を強めるのも、最高の治療を生かしていくのも、生命力をわきたたせるのも、唱題が根幹です。
 (『希望の経典「御書」に学ぶ』第1巻)

〈座談会 創立90周年を勝ち開く!〉77 世界の「民音」が創立56周年 音楽は心を結ぶ「喜びの讃歌」 2019年10月17日

〈座談会 創立90周年を勝ち開く!〉77 世界の「民音」が創立56周年 音楽は心を結ぶ「喜びの讃歌」 2019年10月17日

芸術には平和を構築する力が
〈出席者〉
原田会長
長谷川理事長
永石婦人部長
伊藤民音代表理事
志賀青年部長
大串女子部長
ベルギー王国トゥルネー市で開催された音楽祭(8月)で、講演とコンサートを行う、民音研究所のウルバン所長と民音派遣のアーティスト。背景は世界遺産の大聖堂 ©Véronique Pipers/1point2.be

 原田 あらためまして、台風19号による記録的な大雨の影響で、被災をされた全ての皆さまに心からのお見舞いを申し上げます。

 長谷川 学会本部の災害対策本部でも連日、被害状況の把握を続け、各地の対策本部と連携を取りながら支援に当たっております。

 原田 私も14日に神奈川の川崎へ伺いました。16日付の「心に御書を」の中で池田先生は、「わざはひも転じて幸となるべし、あひかまへて御信心を出し」(御書1124ページ)との御聖訓を拝して、「被災地の復旧・復興、尊き宝友の健康・安穏、変毒為薬をひたぶるに祈っています」と、真心の伝言を送ってくださっています。引き続き、被災をされた方々に励ましを送ってまいります。

人間文化の夜明け

 大串 明18日で、「民音」が創立から56周年となります。

 伊藤 推進委員、賛助会員をはじめ、民音を支えてくださる全ての皆さまのおかげで、この日を迎えることができます。心から感謝申し上げます。

 永石 最近はテレビの人気番組で、「民音音楽博物館」が相次いで紹介され、大きな話題です。民音を応援する私たちにとっても、誇らしいことです。

 原田 1997年(平成9年)9月、完成したばかりの民音文化センターを初訪問された創立者の池田先生は、芳名録に「祈 世界一の発展」「祈 芸術運動の先駆」「祈 人間文化の夜明け」と記されました。民音の果たす役割が、どれだけ大きいか。

 大串 小説『新・人間革命』第8巻「清流」の章でも、「私は、『世界の民音』に育てたいと思っている。『民音があって、音楽は蘇った』『民音があって、新しい、最高の音楽が生まれた』『民音があって、民衆の心と心が結ばれ、世界が結ばれた』と言われるようになるんだ」とつづられています。

 伊藤 長年にわたる池田先生の励ましのおかげで、音楽・芸術運動の一翼を担う、今の民音の大発展があります。感謝は尽きません。

無限の可能性証明

 大串 SOKAチャンネルVODに、「民音音楽博物館~音楽を愛するすべての人に~」が追加されています。

 志賀 この番組では、30万点に及ぶ音楽資料が所蔵され、“民間では国内最大級の規模”と評される、民音音楽博物館の「音楽ライブラリー」の模様などが紹介されています。

 長谷川 民音音楽博物館には、付属の研究所(民音研究所)が併設されていますね。先日は、民音研究所の所長が出席し、ベルギーの音楽祭で講演とコンサートが行われました。

 原田 これに先立ち、ベルギーの全国紙には「愛と人類への民音の讃歌」との見出しで、次のような記事が載りました。「民音創立者池田大作氏は、第2次世界大戦という世界の終末を生き抜いた。戦争は氏の青年期に大きな影響を与え、平和のために生涯をささげる決意をした。この精神のもと、池田氏民音をはじめ、多くの機関を創立した。氏の夢は、音楽を通し、人々の相互理解を推進することである」と。感慨深く紙面を見ました。

 伊藤 大変にうれしく思います。「民音研究所」は本年で開所5周年です。長年、多彩な音楽文化活動を推進してきた民音の“実績”を土台に、音楽が平和構築に果たす可能性を証明する機関として開設しました(1面に関連記事)。

 原田 音楽に「どんな力があり、平和構築に、どう生かせるのか」――研究所の使命は、「平和構築の音楽」の探求と言えますね。

 伊藤 音楽には、無限の力があると信じています。平和を生み出す力にもなれば、破壊する力にもなります。一つの例を紹介します。東アフリカのルワンダ共和国で、1994年4月7日から7月14日まで続いた虐殺の時の話です。

 志賀 約80万人もの尊い命が奪われ、世界中を震撼させた出来事ですね。

 伊藤 これほどの悲劇が起こった背景は、さまざまに研究されていますが、ある政治的な歌が、テレビやラジオで何度も放送され、差別をあおったことが指摘されています。

 志賀 音楽が利用され、恐怖、憎しみ、分断、そして殺りく衝動が駆り立てられていったのですね。

 伊藤 一方、2004年、ルワンダ初の女性ドラム集団インゴマ・ンシャが結成されます。「新しいドラムと新しい時代」との意味で、文化を発展させることで、癒やしと和解をもたらすことを目指しました。当初は、虐殺の被害者と加害者の双方の女性たちで構成され、今では他の多くの女性たちにも門戸を開いている集団です。

 大串 音楽を通して地域社会を再建していく物語は映画にもなり、大きな感動を呼んだと聞きました。

 永石 悲劇や破壊の後でも、音楽には、生活を立て直し、和解と共存を促進する力があることを見事に証明したのですね。本当にすごいことです。

 伊藤 先生は民音に対して、音楽は「民衆の喜びの讃歌」であり、「人類の心を結ぶ力」であり、「生命を励ます希望」であると教えてくださっています。こうした「平和構築の音楽」の力を探求し、紹介するのが、民音研究所です。これからも、賛助会員の皆さまのご支援にお応えすべく、社会貢献の活動に全力を尽くしてまいります。

 原田 音楽の持つ無限の可能性を証明する民音へ、さらに発展しゆくことを切に願っています。

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命に学ぶ」〉 第12巻 御書編 2019年10月16日

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命に学ぶ」〉 第12巻 御書編 2019年10月16日

 

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第12巻の「御書編」。小説で引用された御書、コラム「ここにフォーカス」と併せて、識者の声を紹介する。次回の「解説編」は23日付の予定。(「基礎資料編」は2日付、「名場面編」は9日付に掲載)

原則の順守が事故を防ぐ

【御文】
 さきざきよりも百千万億倍・御用心あるべし
 (御書1169ページ、四条金吾殿御返事)

【通解】
 以前よりも百千万億倍、用心していきなさい。

●小説の場面から

 〈ヨーロッパの中心者である川崎鋭治は、車の運転で事故を起こしてしまう〉
 事故には、必ず予兆があるものだ。
 川崎鋭治は、以前、雨のなかでハンドルを切り損ねて、大きな石に乗り上げ、車が転倒するという事故を起こしていた。この時は、怪我はなかったものの、車は廃車にせざるをえなかった。
 その直後、日本に来た川崎鋭治から話を聞いた山本伸一は、こう指導した。
 「これは、さらに大きな事故の前兆と受け止めるべきです。リーダーというのは、神経を研ぎ澄まし、一つの事故を戒めとして、敏感に対処していかなくてはならない。
 そうすれば、大事故を未然に防げる。
 これからは、もう交通事故など、二度と起こすものかと決めて、真剣に唱題し、徹して安全運転のための原則を守り抜くことです。
 また、疲労や睡眠不足も、交通事故を引き起こす大きな原因になる。だから、常にベストコンディションで運転できるように、工夫しなければならない。それが、ドライバーの義務です。(中略)
 運転しながら話をして、脇見をするようなことがあっては、絶対にならない。
 それから、幹部は、自分だけではなく、会合が終わったあとなどに、無事故と安全運転を呼びかけていくことも大事です。その一言が、注意を喚起し、事故を未然に防ぐ力になる」(「新緑」の章、52~53ページ)

愛郷の心が地域活性の源泉

【御文】
 今日蓮等の類い南無妙法蓮華経と唱え奉る者の住処は山谷曠野皆寂光土なり(御書781ページ、御義口伝)

【通解】
 いま南無妙法蓮華経と唱える日蓮とその門下の住所は、それが山であり、谷であり、広野であっても、すべて寂光土である。

●小説の場面から

 〈1967年(昭和42年)8月、山本伸一は岐阜・高山市を訪問。同志は郷土の発展を祈り、地域に尽くしていた〉
 村(町)おこしや地域の活性化は、どこでも切実な問題であるが、特に過疎の村や山間の地などにとっては、存亡をかけた大テーマであろう。
 だが、住民が、その地に失望し、あきらめをいだいている限り、地域の繁栄はありえない。
 地域を活性化する源泉は、住民一人ひとりの愛郷の心であり、自らが地域建設の主体者であるとの自覚にある。いわば、住民の心の活性化にこそ鍵がある。
 (中略)
 いかなるところであろうが、私たちが信心に励むその場所が、仏のいる寂光土となる。ゆえに創価の同志は、現実を離れて、彼方に理想や幸福を追い求めるのではなく、自分のいるその地こそ、本来、宝土であるとの信念に生き抜いてきた。
 そして、いかなる逆境のなかでも、わが地域を誇らかな理想郷に変え、「幸福の旗」「勝利の旗」を打ち立てることを人生哲学とし、自己の使命としてきた。
 地域の繁栄は、人びとの一念を転換し、心という土壌を耕すことから始まる。そこに、強き郷土愛の根が育まれ、向上の樹木が繁茂し、知恵の花が咲き、地域は美しき幸の沃野となるからだ。
 また、そのための創価の運動なのである。
 (「愛郷」の章、194~195ページ)

ここにフォーカス/第1号の対談集

 「天舞」の章に、クーデンホーフ・カレルギー伯爵と山本伸一との対談の様子がつづられています。
 伯爵は、28歳で欧州の統合を訴えた著書『パン・ヨーロッパ』を出版。第2次世界大戦の渦中、ナチス・ドイツの迫害を受け、亡命を余儀なくされますが、欧州統合の実現へ向け、行動を続けました。
 伸一との対談が実現した1967年(昭和42年)は、現在の欧州連合(EU)の前身である欧州共同体(EC)が誕生した年でもありました。
 創価学会を「世界最初の友愛運動である仏教のよみがえり」と評価していた伯爵は、伸一との対談の折にも、「創価学会による日本における仏教の復興は、世界的な物質主義に対する、日本からの回答であると思います。これは、宗教史上、新たな時代を開くものとなるでしょう」とたたえています。
 その後も2人の交流は続き、書簡のやりとりが重ねられます。70年(同45年)10月には、開校3年目の創価学園聖教新聞本社などで、国際情勢や青年論など、多岐にわたるテーマで、計10時間を超える語らいが行われました。
 2人の対談は、『文明・西と東』として出版されました。今、池田先生の世界の識者との対談集は80点に及びます。伯爵との対談集は、その第1号となったのです。

半世紀超す執筆に想う 識者が語る/ニューヨーク大学プラハチェコ)心理学部長 イデル・サンダース博士

●内面の変革が平和の第一歩

 私は、これまで池田博士のさまざまな著作や大学講演集を読んできました。
 中でも、印象に残っているのが、博士が1996年6月、私の母校でもあるアメリカ・コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジで、世界市民教育をテーマに行った大学講演です。
 席上、博士は、同カレッジのレヴィン学長(当時)の「教育は、社会の変革のための最も効果の遅い手段かもしれない。しかし、それは、変革のための唯一の手段である」との信条に、深い共感を寄せられました。
 どういった点で、両者が響き合ったのか。私は学長の言葉の中に、博士の「人間革命」の思想に通じる部分があったからだと思います。
 そもそも良い教育は、人間の心といった内面を変革する「人間革命」を伴うものです。
 博士が綴ってきた小説『人間革命』『新・人間革命』には、SGIメンバーが各国・地域で直面した偏見や差別の歴史が描かれています。
 人間は誰しも、自身とは異なる他者への恐怖心を持っています。しかし、メンバーは内なる自己に働き掛けながら、勇気を持って他者に語り、多様性を尊重していく。これは、まさに良い教育の過程そのものであり、非常に価値あるものなのです。
 私は、あるアメリカの宗教学者から、SGIメンバーに対して行ったインタビューの感想を聞いたことがあります。
 メンバーには、自身の生活を向上させながら、社会に貢献する生き方が根付いていたそうです。そして、一人一人から、差別の心を感じなかったというのです。多くの仏教を研究してきたその学者は「SGIほど、人種や民族など、異なった属性を持った人々が集まるのは見たことがない」と語っていました。
 仏教は、長い時間をかけて築かれた「心の科学」と言ってもよいでしょう。日蓮は「心の師とはなるとも心を師とせざれ」(御書1025ページ)との指針を残し、それがSGIでは、メンバーの生き方に反映されています。そこには自身の心の成長を促す原理があります。
 私は心理学者として、また世界市民として、人々が心を成長させ、家族や社会に貢献する、幸福な人間になってほしいと思っています。
 ゆえに、小説に描かれる“一人の心の変革こそ、世界平和につながる第一歩である”との池田博士の考え方に、大きな期待を寄せています。

 Edel Sanders アメリカ・コロンビア大学修士号、イギリスのケンブリッジ大学で博士号を取得。2014年から現職。専門は教育心理学認知心理学

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。

 【挿絵】内田健一郎 【題字のイラスト】間瀬健治