〈みんなで学ぶ教学~新会員教室~〉12 一念三千㊦ 2018年1月20日

〈みんなで学ぶ教学~新会員教室~〉12 一念三千㊦ 2018年1月20日

自身が変われば、世界が変わる
マンガ・イラスト 逸見チエコ

 一念三千の「三千」の構成について解説した前回(2017年12月5日付)に続き、「一念三千㊦」となる今回は、私たちの生きる現実に、一念三千がどういう意味をもっているかについて学びます。

生命が宇宙へ広がる

 ――「一念」と「三千」の関係を教えてください。
  
 日蓮大聖人は御書のなかで、一念三千について示した天台大師の『摩訶止観』を次のように引用されています。
 「この三千の諸法は、一念の心にある。もし心が無ければそれまでのことであるが、たとえわずかでも心が有るならば、そこに三千の諸法が具わるのである」(御書238ページ、趣旨)
 わずかでも私たちの「一念の心」があるところ、そこに「三千の諸法」が具わるということです。
 「三千の諸法」とは、全宇宙に起こりうる、あらゆる現象です。つまり、私たちの一瞬一瞬の生命に全宇宙を具しているということになります。別の御書では、「山も海も、太陽も、月も、星々も、皆、私たちの胸中(己心)にある」(同1473ページ、趣旨)とも仰せです。
  
 ――ちっぽけにも思える自分の生命が、宇宙大にも広がるとは……。
  
 「ちっぽけ」だなんて、とんでもない“勘違い”です。すべての生命が大宇宙と不可分のかけがえのない小宇宙であり、尊極で宇宙大の可能性をもつ存在であると捉えるのが仏法です。このことを覚り、この正しい生命観のもとで人間として正しく生きていく智慧と、すべての人をこの哲学で救っていきたいという慈悲を起こした人が仏です。

変革の哲理を示す

 ――スケールが大きすぎて、実感が湧きません。
  
 天台大師は、自身の心を深く見つめていく修行法を説きましたが、極めて困難な方法であり、覚りに到達する人はまれでした。
 これに対して、誰もが等しく境涯を変革し、一人一人の幸福を実現する社会を建設するための具体的な方途として南無妙法蓮華経の唱題行を説き明かし、自ら実践し続けてこられたのが、大聖人です。
  
 ――法華経と唱題行はどのような関係になるのでしょうか?
  
 法華経如来寿量品第16で、「久遠実成(釈尊は実は非常に遠い過去〈久遠〉に成仏して以来、この娑婆世界に常住する仏であるということ)」が明かされました。
 しかし、釈尊の成仏の根本原因となった法を、凡夫としてどのように修行すればよいのかについて、法華経の文面には明らかにされていませんでした。
 これに対して、大聖人は、久遠実成の釈尊を仏たらしめた根源の法そのものを南無妙法蓮華経として明かされました。そして、この法を信受することで、凡夫が直ちに仏の境涯を自身の胸中に開き現していく道――つまり「万人成仏」の法が確立されたのです。

仏界を涌現できる

 ――自身の「仏性」を信じ抜くことが大切なのですね。
  
 そうです。瞬間瞬間のわが生命に“無限の可能性”が秘められている、ということを知ることが大切です。「十界互具」の観点から見れば、“誰もが仏界を直ちに涌現できる”ということになります。
 「一念三千は十界互具よりことはじまれり」(同189ページ)と仰せのように、一念三千を人間の境涯変革の道として捉えるために、大聖人の仏法においては十界互具が強調されるのです。
 十界互具・一念三千という万人にあてはまる普遍の真理を、大聖人御自身が体現されました。事実の上で一念三千の妙法が顕わになった大聖人の御生命を顕されているのが、南無妙法蓮華経の御本尊です。
  
 ――御本尊を顕された意義が分かりました。
  
 大聖人は一人一人の生命変革の道を打ち立てるとともに、自身の生命の変革は決して自分一人だけにとどまるものではなく、友人や家庭、職場、ひいては全人類の変革にまで及んでいく可能性を秘めていることを明かしました。
 言い換えれば、“自分が変われば、世界が変わる”というメッセージを送っているのが、大聖人の一念三千の仏法なのです。
 万人の幸福、すなわち広宣流布の決意に立って御本尊を拝することで、私たちは、誰もが仏界を現すことができます。希望の哲理を胸に、現実を変革する挑戦を続けていきましょう。

書籍案内

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