〈文化〉 常に進化し続けるものまね芸 ものまねタレント・コロッケさんに聞く 2018年8月10日

〈文化〉 常に進化し続けるものまね芸 ものまねタレント・コロッケさんに聞く 2018年8月10日

会話を生むエンタメに
似せるのではなく笑わせる

 美川憲一岩崎宏美五木ひろし河村隆一平井堅……。ものまね芸人として不動の人気を誇るコロッケさんのレパートリーだ。今夏、大阪・新歌舞伎座で特別公演を開催する。公演を前に、舞台のこと、ものまね芸の秘訣などについてコロッケさんに聞いた。

 大阪の新歌舞伎座さんでは、これまで何回も舞台をやらせていただいていますが、見に来た方に「やっぱりコロッケはおもろいな」と思っていただける舞台にしたいですね。
 企画はたくさんあるんです。でも、コロッケの演出ですから、何が起きるのか分かりません。皆さんの想像を超えるような内容にしたいと思っています。舞台を見た帰りに、皆さんの会話が弾むことが一番です。
 想像を超える――それは、舞台にしても、ひとつのものまねにしても同じ事。
 美川憲一さんや、岩崎宏美さん、野口五郎さん、五木ひろしさんなど、定番のものまねがあります。皆さんも期待しているから、もちろんやるんですが、いつも同じでは面白くない。
 同じように出て行って、「ほらきたでーっ」と思わせて、すかしたときの「えーっ‼」が面白い。そうやって、ふざけている自分自身が一番楽しんでいるんじゃないでしょうか。
 特に僕のものまねの場合、「似せるものまね」ではなく「笑わせるものまね」。似ているだけでなく、そこに少しのいたずら心が入ると、面白くなるんです。
 この間、テレビのものまねグランプリで「おならの勢いで歌えなくなる武田鉄矢さん」というネタをやったんです。同じように、おならの勢いでいなくなる美川さんとか、おならの勢いで壁にぶつかる五木さんとか。
 今はシチュエーションを楽しむ時代。「こんな人いるよね」「あーっ、いるいる」って。
 昔だったら、武田さんが歌えなくなるとか、美川さんがいなくなる、というように、主語を最初に持ってきていた。それが今は、「おならの勢いで○○」と。このシチュエーション自体が面白いと思いませんか。
 こうすると、武田さんや、美川さんを知らない世代にも、楽しんでもらえる。だって、知り合いがおならをしながら消えたら面白いでしょ
 実は、このネタを見た子どもが、「ぷっぷっぷっ」と言いながらトイレに消えていったそうです。やったなと思いました。
 年を取ると変化が怖くなるもの。格好つけてしまうんです。なかなか分からないと言えないし、「何それ?」と聞くことも困難です。
 でも、時代を見なければ面白いものは生み出せません明石家さんまさんがそうですよね。どんな話題にも食いついてくるし、分からないことがあるとすぐ「何それ、はやってんの? 教えて教えて」と聞き出そうとする。僕も同じで、いろんなことが気になってしまうんです。

 最近、ロボットの動きが違ってきているのを知っていますか?
 以前は、ウイーン、ウイーンと、ギクシャクしながら動いていた。でも最近は、ウイーン、フン、フン、と止まるときに揺らぎが入るんです。この揺らぎは、CGの動きで、ロボットを人間っぽく見せるためのもの。今の中高生にとって、昔の動きだと、古くさく感じてしまうのです。
 「三代目J Soul Brothers(ジェイ・ソウル・ブラザーズ)」のまねでやるランニングマン。あの有名なダンスをしながら「虫を見つけた」「あっちだ、あっちだ」と。
 すると、踊りを知らない、おじいちゃん、おばあちゃんは、「えっ、虫なの」と思う。それで、三代目をテレビで見たとき、孫に「あれは虫を見つけているんでしょ」と。「違う違う、あれは踊りなの」「だってコロッケが言っていたもの」「でも、確かに虫取りのようにも見えるよね」……。
 僕のものまねから、こんな会話が生まれるとうれしい。エンターテインメントというのは、そんな楽しい会話を生み出す道具だと思うんです。

 コロッケ 1960年、熊本県生まれ。日本を代表するものまね芸人。「お笑いスター誕生」でメジャーデビュー。五木ひろしを元にしたロボコップや歌の早送りなど、そのレパートリーは進化し続けている。

インフォメーション

 「コロッケ特別公演」は8月25日(土)~9月9日(日)に大阪・新歌舞伎座で開催。第1部「爆笑人情時代劇!水戸黄門VS和牛十兵衛」、第2部「コロッケオンステージ 夏の紅白ものまね歌合戦」。
 〈問い合わせ・チケット〉新歌舞伎座テレホン予約センター 電話06(7730)2222(午前10時~午後6時)