ティエラ・デル・フエゴ大学名誉博士号  池田先生の謝辞(代読) 2018年4月19日

池田先生の謝辞(代読) 2018年4月19日

向学の炎を明々と燃やせ
平和建設への心と心が共鳴した授与式。日亜両国の友好を願うアルゼンチンSGIの友も列席した(創大本部棟で)

 一、わが創価教育の父・牧口先生は、20世紀の初めに発刊した独創的な大著『人生地理学』で、地球という星を多次元から捉える視点を示していました。
 そこには、人類が結合しゆく未来を展望しつつ、南極を中核として南半球を俯瞰する地図(水半球図)が掲げられています。
 その地図の中心に向かい、まさに南米大陸の頂のごとく輝き光る地が、世界最南端の都市と憧憬されるアルゼンチン共和国のウスアイア市であります。
 そして、このロマンの都にそびえ立ち、南極研究をはじめ、地球環境の保全に尽くされる最先端の知性の学府こそ、貴ティエラ・デル・フエゴ大学なのであります。
 一、本日ここに賜りました名誉博士号を、私は何よりもまず、はるかな貴大学の天地へと探究を広げていた創価の父に、謹んでささげさせていただきます。
 とともに、この栄誉を、わが敬愛してやまない、アルゼンチンの宝友をはじめ、地球の平和を願って行動する創価世界市民たちと分かち合わせていただきたいのであります。
 カステルシ総長、誠に誠にありがとうございます(大拍手)。
 ツツジの花が咲き薫る、わが創価大学、わが創価女子短期大学も、はつらつたる新入生を迎え、躍動しております。
 きょうは、貴大学の気高き精神に学びつつ、3点の指針を確認し合いたいと思います。

正義の灯台たれ

 一、第一に、「創造的な学びの炎を明々と!」という点であります。
 貴大学のキャンパスが広がる「フエゴ島」の「フエゴ」とは「火」を意味しており、いにしえの先住民が燃やしていた「たき火」に由来するといわれます。
 貴大学は、カステルシ総長の断固たる信念のもと、「学びたい人の全てに学び続けられる環境を!」と、まさしく「学びの炎」を青年の心に限りなく点火してこられました。
 高名な数学者であられる総長は、「勤勉な学生、やる気のある学生は、優秀な学生でさえ達成できない目標を達成できる」と、一人一人を大切に励まされております。そして、皆が自らの可能性を最大に発揮できるよう、あふれるばかりの愛情と大情熱をもって育まれているのであります。
 総長が先頭に立って燃え立たせておられる、この「向学の炎」「探究の炎」は、慈愛の大教育者であられた、お母さまから継承されたと伺っております。
 今年、97歳になられるお母さまは、ご自身が人生を懸けて灯し続けてこられた人間教育の炎が、総長に赫々と受け継がれ、かくも偉大な広がりとなっていることを、どれほどお喜びでありましょうか(大拍手)。
 仏典には「学び極めるということは自らの生命を最高に輝かせて、恩ある人々を皆、幸福へと照らしていくことである」と明かされています。
 わが創大生、わが短大生の皆さんも、大学に送り出してくださった父母たちの願いを忘れず、今は、日々、いやまして明々と、創造的な学びの炎を燃え上がらせていただきたいのであります。
 一、第二に、「朗らかな信頼と友情の灯台たれ」と申し上げたい。
 フエゴの地には、太平洋と大西洋を結ぶビーグル海峡を照らすエルクレール灯台があります。
 一基の灯台があれば、闇夜にあっても、幾多の船の往来を安全に導くことができます。その灯台さながら、総長は、深い闇の時代にも鮮烈な正義と人道の光を放ってこられました。
 軍事政権下にあった40年前、弾圧され、5年にも及ぶ獄中闘争を貫かれた、金剛不壊の人権の闘士であられます。
 私の親友であるペレス=エスキベル博士と同じ場所に投獄されたことも伺いました。
 だからこそ、総長は、貴大学の新たなビジョンを定めるに際し、“全面的に人権を尊重する大学”、そして“連帯する大学”との理念を掲げられたのであります。それは、わが創価大学の「生命尊厳」と「人権尊敬」の精神とも強く一致しております。
 私は、アルゼンチンの作家サエンス・デ・メンデスの言葉を思い起こしております。
 すなわち、「大好きなこのフエゴの島々は、それぞれの人間の良いものを残し、悪いものを捨てさせてくれる。人種の共存の模範の地であると思う」と。
 そのフエゴの誉れである貴大学が体現されているように、大学という灯台は優れた人間教育を通して、「生命の善性への信頼」、さらに「人間革命への挑戦」、そして「いかなる差異も超えた共存共栄」という理想の光を、民衆へ贈ることができます。
 貴国の大英雄サンマルチンは、愛娘の教育のため、「信頼と友情を鼓吹する」をモットーとしました。
 朗らかな信頼と友情の灯台を、世界の教育の交流によって、地球社会に林立させていきたいと、私は願ってやみません。
 一、第三に申し上げたいのは、「平和のパイオニアとして、希望と忍耐の翼を」ということであります。
 貴フエゴの出身で、アルゼンチンの国民的作家として名高い、カスティニェイラ・デ・ディオスは、語りました。
 「フエゴ人とは、パイオニアの誇りを持つ人間である」と。 
 貴大学は、誇り高き探究のパイオニアとして、核兵器の廃絶をはじめ、平和と人道の問題に取り組んでこられました。
 貴大学の紋章には、「世界最大級の海鳥(ワタリアホウドリ)」が描かれております。
 1日で1000キロも飛ぶことができる驚異的な飛翔能力から、「奮闘」「忍耐」「粘り強さ」などの象徴とされております。
 本日、貴大学の一員とさせていただいた私は、誇り高き平和のパイオニアとして、後継の青年たちと共々に、希望と忍耐の翼を限りなく広げ、さらに飛翔しゆくことを、ここにお誓い申し上げます。
 最後に、貴大学の永遠の発展と、貴国のさらなる栄光と勝利、そして尊敬する先生方のますますのご健勝を心よりお祈り申し上げ、私の謝辞とさせていただきます。ムーチャス・グラシアス!(スペイン語で「大変にありがとうございました!」)(大拍手)